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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽沖田(オルタ)ちゃんが結構喋る

    ##第三者がいる話
    ##5001-9999文字

    マスタースキルの話▽沖田(オルタ)、紫式部、孔明先生がいたりいなかったりします
    ▽沖田ちゃんが結構喋る
    ▽ぐだキャスギル





     見慣れた景色、踏み慣れた地面、戦い慣れたエネミー。その数ももう残り数体である。戦闘終了も、勝利も目前だ。油断大敵とは言うが、もはや半分作業と化している周回に於いてのそれは油断とも違う確信。
    「王様と孔明先生は攻バフ、そのあと先生はクリ力アップを王様にお願いします。沖田ちゃんは一番手前のヤツを力いっぱい殴って。その後は王様の宝具に合わせて退がって」
    「ふん」
    「仰せの通りに」
    「わかった」
     多分もう指示しなくても勝手にやってくれそうな一連の流れが指示通りに行われていることを手元の端末と目視で確認する。あとは宝具チャージの完了したギルガメッシュに宝具を開放してもらえば終わりだろう。普段ならここで魔術礼装を使って強化するのだが。
    (ここ、オレの援護いらないんだよな)
     キャスター組の中ではトップクラスの攻撃力を持ち、宝具レベルも最高に達しているギルガメッシュの宝具に強化を重ねてもオーバーキルになるだけで、敵の残数的にこれで終わりという時にオーバーキルは必要なく、魔力と手間と時間の無駄だということは薄々解ってはいた。
    (でも強化したいんだよなあ)
     立香自身が皆の役に立ちたいというのもあり、ダメージ量が増えるのが気分いいというのもあり。だが連戦で皆も疲労しているだろうし、なるべく早く終わらせて帰還したい。
    「――王様、宝具を!」
     立香の声を聞いたギルガメッシュは、即座に魔力を解放し、…………解放、
    「?」
     何も起こらない状況に疑問符を浮かべたのは立香だけではなかった。もう戦闘は終わるものと思っていたのだろう孔明、前衛で敵を牽制しつつ宝具が発動するタイミングを窺っていた沖田オルタ、果ては後方で控えている紫式部とマルタ、サポートのマーリン、その場にいる全員が疑問符を浮かべて動かないギルガメッシュを見た。視線の中心にいるギルガメッシュの表情は背後にいる立香には窺い知れないが、粘土板と斧を構えたま動かない。全員の視線が集中していることに気づいているのかすら解らない。
    「……王様?」
     まさかスタンとか宝具封印とか何か状態異常でもくらっていたのだろうか。それはまずい。立香は慌てて端末を確認するがステータスに異常はない。再び視線を前方へ戻すと真紅と目があった。
    「あの……王様、宝具撃てます?」
    「撃てるが、何だ?」
     当然、とでも言わんばかりの返答に立香は自分の方が何かおかしなことを言っているのかと疑ってしまう。その間もギルガメッシュが動く気配はない。
    「あの、撃ってほしいんですけど……」
    「今か?」
    「い、今ですね。今すぐに」
    「…………そうか」
    「? 王様、」
     今、謎の間があったような。
    「我が声を聞け! 全砲門、開錠!!」
     その意味を問う前に、一帯に轟音が鳴り響いた。

       ✦✦✦

    「お疲れー」
     戦闘終了し、皆の無事と戦闘結果を確認しながら周りに声をかける。サポートのマーリンを見送り、ほとんど原型を留めていない敵の遺骸から素材を剥ぎ取っている残りのメンバーへと足を向けかけ、途中にぽつんと立っているギルガメッシュの傍で足を止める。
    「……王様、大丈夫ですか?」
     前を見ている紅い目を覗き込みながら話しかけると、透明度の高い宝石のような目がするりと動いて立香を見下ろした。
    「何がだ」
    「や、さっきなんか様子がおかしかったんで……具合が悪いなら言ってくださいね?」
     怪我や状態異常の類は負っていないようだったが、疲労や些細な不調までは端末でも感覚でも解らない。先程のギルガメッシュの様子は明らかに変だったし、戦い慣れてる相手だったから良かったものの、あれが難敵だったらと思うとぞっとする。
    「おかしいとはなんだ。不敬であろう。……貴様に心配されるようなことは何もない。先刻のことは……忘れろ」
     つい、と目を逸らされてしまう。低い声にどことなくいつもの覇気がないように思えるのだが。やはり様子がおかしい。
    「そんなこと言って……やっぱなんかヘンですよ。帰ったら医務室に――」
    「要らん。何も問題ないと言っている」
     声に苛立ちを滲ませるギルガメッシュに、立香の疑念は更に深まる。戦闘前までご機嫌、とまではいかなくてもいつも通りだったのに、一転して不機嫌だ。あとは帰還するだけなのだから機嫌よくなりこそすれ、悪くなる原因が立香には解らない。
    「王様、怒ってます? やっぱりどこか怪我とか、」
    「くどい。貴様は黙って死骸でも漁って来るが良い。疾く終わらせて帰還せよ」
    「……」
    (あ⌇⌇⌇⌇⌇⌇これ完全に怒ってますわ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇)
     澄ました顔をしているがオーラが雄弁に語っている。ついでにオーラで理由も教えてれたらいいのだが。立香には原因となるような心当たりは一欠片も思いつかないが、不機嫌の原因が立香なのは解る。これは、どうやって機嫌を直してもらおうか。理由が解らないと立香にはどうしようもないように思われる。下手につつくと悪化するし。
    「王様……」
    「なんだ、マスター。喧嘩か?」
     なんと言うべきか迷いながらも話しかけようとした立香は、こちらに近づいてくるのんびりした声に顔を動かした。
    「沖田ちゃん……いや、喧嘩じゃない……と、思う……」
    「そうなのか。それならいい。喧嘩はよくないぞ」
     差し出された素材を受け取りながら横目にギルガメッシュを窺うが、つーんと取り澄ましているギルガメッシュは立香を見ようともしない。これは、喧嘩ですらない。
    「あ、そうだ」
     ちょっとちょっと、と沖田オルタを手招いてギルガメッシュから少し離れる。声を潜めれば会話が聞こえないような距離まで離れて、更に手招いて沖田オルタに頭を寄せるよう促す。
    「どうした? マスター。内緒話か?」
    「そう。……あのさ、さっきの戦闘で王様に何かあった?」
    「おうさま? キャスターのえーゆーおーか?」
     立香に合わせて声を潜める沖田オルタに頷く。実際に共闘している彼女であれば、立香に解らない異変が解るかもしれない。
    「ほら、さっき王様宝具撃たなかったじゃん? オレの見てないとこでなんかあったのかな~と思って。機嫌も悪いし…」
    「う⌇⌇ん」
     沖田オルタはちいさな頭を傾げて、記憶をたぐってくれているようだった。陽に煌めく長く伸びた白髪と、赤い房飾りが褐色の肌の上を流れる。
    「病気……はないと思うけど、オレに隠してる怪我とか、具合が悪いとか……」
    「う⌇⌇⌇⌇ん??」
     首を傾げきってしまった。やはり思い当たる節はないのだろうか。これはやはり、帰ってひたすら謝り続けるしかないのだろうか。教えてくれそうにないし。
    「えーゆーおーの具合はわからないが、まじんさんにもわかることがあるぞ」
    「そうだよね解んないよね……えっ?」
     完全に諦めモードに入りかけていた立香は、沖田オルタの言葉を理解するのに多少の時間を要し、そして理解して驚く。見上げた沖田オルタの顔は、褒めろと言わんばかりの誇らしげな顔だ。所謂ドヤ顔というやつ。そのドヤ顔の沖田オルタはにこーと立香に笑いかけてから口を開いた。
    「マスター。えーゆーおーはマスターに構ってほしいんだと思うぞ」
    「ひへっ?」
    「いや、違うな。違わないが違う。うーん。あれだ、マスターの魔術」
    「ま、魔術?」
    「うん。魔術を使ってほしいんだ。たぶん。きっと。まじんさんはそう思う」
    「でもオレに魔術なんか、」
     立香は魔術師ではないのだから魔術は使えない。それはむしろ立香本人よりギルガメッシュの方がよく解っていると思うので、立香の魔術を使ってほしい、と言われてもピンとこない。
    「? マスターはいつも使ってるじゃないか。戦闘中に使うアレだ」
    「ああ、アレは魔術礼装を使ってるだけだから……、魔術とはちょっと違うよ」
    「そうなのか? じゃあ魔術じゃなくて、それを使ってほしかったんだ。マスターがいつも使ってるからな」
    「うーん……?」
     のほほんとした眠そうな沖田オルタの言葉は相変わらず掴みどころがない。内容を疑うのも失礼だとは思うが、当たっているのかどうなのか立香には見当もつかない。沖田オルタの言うところの構ってほしい、など、ギルガメッシュが思うことがあるのかどうかも見当がつかない。そういうのはどちらかというと立香から発することが多いし。
    「おい貴様ら、人が黙っていればコソコソと、言いたいことがあるなら堂々と言わぬか」
    「げぇっ、王様」
     沖田オルタの背後から現れたジト目のギルガメッシュに、立香は頬を引きつらせて声を上げる。怒りと苛立ちと呆れをごっちゃ混ぜにした不機嫌な顔。聞こえないように離れたつもりだったのに無駄だったらしい。目だけじゃなくて耳までいいのか。
    「い、まの話、聞いてました?」
    「聞くまでもないわ、どうせ下らぬ妄言であろう。馬鹿も休み休み言え」
    「や、オレは何も、」
    「往生際の悪い……話を持ち出したのは貴様からであろう、雑種」
     それはそうですけどお……と口を尖らせる立香を、ギルガメッシュは冷えた目で見遣る。聞こえてなかったのは良かったがそれ以外で情気げている立香と、ご立腹のギルガメッシュの間で二人を交互に見た沖田オルタはまた首を傾げた。
    「マスターも私も馬鹿じゃないぞ、えーゆーおー。それに妄言でもない。私は見ていたからな。あれは構ってほしい時の顔だ。私にはわかる。私もマスターにはもっと構ってほしいからな。えーゆーおーもさびしかったんだろう? マスターが援護してくれなかったから」
    「も⌇⌇、この子はまだそういうこと言う……」
     うんうん、と納得したように頷く沖田オルタに、これ以上話をややこしくしてほしくない立香は苦笑いでこの場をなんとか有耶無耶にしようとし、その顔をギルガメッシュへ向ける。
    「そんなわけないですよねえ、王さ」
     ま、の一音は口内に篭った。今し方までぶすくれていたギルガメッシュが、双眸を(まるで驚いたかのように)大きく開いていて、立香と目が合うと慌てて逸らしたのだ。口元を覆い隠した金の篭手で顔の半分が隠れてしまっていたが、しろい肌に赤みがかかっている。ような。
    「な、あ、 え、?」
     予想外の反応に思わずギルガメッシュを指差しながら立香は沖田オルタを見上げ、またギルガメッシュを見、沖田オルタを見る。沖田オルタはにこー!と満面の笑顔を立香へ向けた。
    「言っただろう、マスター。うん。まじんさんの言うとおりだ。マスターの魔力は気持ちがいい。信頼されているという感じもすごくいいんだ。あれはいい。どんどんしてほしい」
     うんうんうんうん、と満足気に頷く沖田オルタへ反論する声はない。肯定はないが否定もなく、ただただ目を合わせようとしないギルガメッシュは今や耳まで赤い。それはもはや肯定だ。ここはごまかすところじゃないんですか。否定しないとさっきの出来事は立香がいつもやっている無駄な援護をギルガメッシュが待っていたことになってしまう。無駄な援護だったけど、喜んでくれてたのか?喜んで?誰が?ギルガメッシュ王が?喜ぶ?嬉しい?何が?オレの援護が?
    「ん? ……ああ、ふふ、マスターまで真っ赤になってしまったな」
     ふふふ、と目を細めて微笑う沖田オルタに頭を撫でられてなんだか更に気恥ずかしくなり、立香は「あー」とか「うー」とか言葉にならない声を出す。ギルガメッシュは相変わらず立香から顔を背けて隠れているし、沖田オルタは満足気に笑っている。なんだろうこのいたたまれない空間は。早く帰りたくなってきた。
    「――っか、勘違いするでないわ雑種、小間遣いが王に貢ぐのは当然のこと……よもやそれを怠るとはこの我も予想だにしなかっただけで……」
     やっとギルガメッシュがうにゃうにゃそれらしいことを言うが、もう遅いです、と心の中で叫んで立香は両手で顔を覆った。嬉しさと愛しさと恥ずかしさと。
    「みなさま、ご歓談中すみませんが、素材を拾い終わ」
     離れたところから近づいてくる紫式部の声に重なるように、聞き覚えのある「ピンポーン」という音が聞こえて立香は顔を上げる。嫌な予感しかしないこの音は。
    『などと今更取り繕ってみるものの、熱く火照った頬で己の抱いた感情は沖田オルタの言った通りなのだと自覚せざるを得ないギルガメッシュなのであった。』
     紫式部のスキル、泰山解説祭。
    「やっぱり、まじんさんの言うとおりー、だな」
    「⌇⌇⌇⌇」
    「? は、はわわ~! すみません! 私、また何かやってしまいましたか……」
    「………貴女は悪くないわ……」
    「帰っていいか?」
    「? どうした、雑種共」
     嬉しげな沖田オルタに許容量を超えて言葉を失う立香。その二人の様子と、うっかり発動させてしまった泰山解説祭でまた何かやらかしてしまったのかと事情が解らないまま謝る紫式部を、呆れ顔のマルタが宥める。彼女は悪くない。後からやってきた孔明は疲れきった顔をしていた。加えて本人だけが気づけないせいで怪訝なギルガメッシュ。この状況を上手くまとめる方法が思い浮かばなくなった混乱する立香は、真っ赤な顔で「解散!!!」と叫んだのだった。
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