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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽退去の日の話王様編

    ##1000-3000文字

    退去の日②▽退去の日①の王様視点です
    ▽ぐだおは出てきません
    ▽ぐだキャスギル





    『全サーヴァントは二千十七年十二月二十五日■■■時迄に人理継続保障機関フィニス・カルデアより退去せよ』
     そう通達があるのは視えていた。そしてその先がどうなるか、人類最後ではなくなったマスターがどういった道を辿り始めるのかを。とはいえ、また何らかの力が介在するらしく先の先までははっきりとは視えなかった。全てを見知る己に視えぬものがあるのは業腹だが、視えぬものは視えぬものだ。またぞろ面倒な事になるらしい事は確かだった。とかくヒトというものは良かれ悪しかれ可能性に満ちている。その最たるものであるあのマスターの織り成すいくつもの可能性全てが視えてしまうのは、むしろ惜しく思えた。そう思える事自体、己にあるまじき事ではあるが。
     物語の冒頭ではあるが、立香があのような道を辿り始める事になった以上、サーヴァントの力を必要とするのは未来視など使わなくとも明白だ。一時的に召喚不可能な環境に陥るではあろうが、再び可能にする事も、明白だった。であれば己を喚び出さぬ筈がない。そう自負するだけの力は備えている。そう在れかしと望んだのもあのマスターだ。彼奴がサーヴァントを再召喚する段になって我を喚び出さぬ筈がない、という自信、確信がギルガメッシュにはあった。力を持つサーヴァントである己を再召喚するだけのリソースを立香達が確保できてからの話ではあるが。
     雑種共の指示など受けたくもなければ聞き入れたくもないが、現状、退去には従うほかない。無理に残ったところでリソースである電力を遮断されて終わりだろう。詐欺サーヴァント達のような小細工を弄しても良かったが、ギルガメッシュの力が必要になる場面は今ではない。
     退去の刻限まではまだ数時間ある。別れを告げるだけの猶予が与えられたのは人間なりの温情か感傷か。あのお人好しのマスターにそれは酷な事だろう。朝から姿の見えぬ立香が、今頃律儀にひとりひとりに説明して別れを告げているのは想像に難くない。律儀に、知らず己を擦り減らしながら。
     その負担を軽くしてやろうというつもりも、つまらぬ感傷に付き合うつもりも、再会の視えている別れに対して何も思うところはなかった。彼の地での別れの折──再び相見える確証がなく、また己の死という最大にして最高の別れの場では別れを告げた。あれは必要な言の葉だった。言葉にしなければ理解せぬ、凡庸な人間に対する最大限の行為だった。今となっては最後、がもう一度増えたわけではあるが、それは今ではない。
    「それにしても我、些か改装しすぎではないか」
     寝台を仕舞い、調度品を仕舞い、蔵に放り込んでいた味気もクソもない元あった寝台や、家具とも呼べぬ物を元の通りに並べ置きながら独りごちる。狭苦しい部屋ではあったが王が在るに相応しい室内に仕立て上げた手腕は流石我よ、と自画自賛しながら作業を行う。それにしてはものが多すぎる。
    「…………留まりすぎた、か」
     英霊でありサーヴァント、過去の産物であるギルガメッシュと、現在を生きている人間の立香とでは、別れが訪れるのは元々避けようもない未来だった。このグランドオーダー案件では受肉など望むべくもないだろうし、たとえそれが叶うとしても望むかどうかは、今は解らない。ヒトとサーヴァントである以上、安穏な死による別れなど、夢物語もいいところだ。そう頭では理解していても、それでも尚あの男と、あの眩しいほどの可能性の塊と心を通わせてしまった。共に在ろうと思ってしまった。これから先も、終わりの日までそう在ろうと決めてしまった。人生に於いては誤算もいいところだが王の決定は絶対である。たとえ立香が望まぬとしても、今更手放すつもりはない。あの時掴む事ができなかった手は再び伸ばされ、ようやく掴めたのだ。勝手に手放そうなどと傲岸不遜にも程がある。それを赦せる程己は優しくはない。
    「──頃合いか」
     間もなく立香はこの部屋へ戻るだろう。ギルガメッシュに別れを告げに。無駄な感傷になど付き合うつもりはない。いずれまた立香のサーヴァントとして力を貸してやる事は解りきっている。再会を約束されたひとときの別れに対する感傷など無意味だ。立香がどうであろうと関係ない。ギルガメッシュはギルガメッシュのやりたいように、常にそのように振る舞う。此度もそれは変わらない。
    「今度こそ、未来で待っているぞ、立香」
     ふ、と笑いながら最後の私物を仕舞い、契約を解除し、パスを解く。幾度目かの光に包まれながら、ひととき行く座のつまらなさを思い、溜め息を吐いた。座には時間の概念がないが、それでもひとときだと感じられる別れであれば良い、などと思考する己はすっかり絆されてしまっている。それを悪くないと思えてしまうのだから、本当に、藤丸立香という人間は面白い。知らず浮かんだ笑みにも気づかぬまま、ギルガメッシュの霊基は光の粒になって消えた。
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