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    えんどう

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    えんどう

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    ▽王様が猫っぽくなった話

    ##猫
    ##奇病系
    ##5001-9999文字

    猫っぽくなった王様の話▽霊基バグで王様がやや猫っぽくなった話です
    ▽ぐだキャスギル










     prologue.

     目が覚めたら、一緒に寝ていた人の頭に猫耳が生えていた。大きな三角形の、髪の色と同じ金色の猫耳。見間違いかと思った立香は目をこすり、ついでに自分の頬をぺちぺちと叩いたが猫耳は消えないし、ささやかな痛みがあった。夢ではなさそうだ。
    「ん? なんだ、起き抜けに間抜けた顔をして……我の美しさに改めて驚いたか?」
    「えっ、いや、王様はいつも綺麗ですけど…………気づいてます?」
     身体を起こしもせず、向かいあって寝そべっている立香は、それ、と同じく寝そべっているギルガメッシュの頭を指差す。
    「気づく? 一体何に……」
     ギルガメッシュは立香の指の先を追って頭を上へ向ける。しかし立香が指差した大きな三角形の猫耳は、ギルガメッシュの頭から生えているので見上げたところで見えはしない。
    「それじゃ見えませんって……あ、そうだ」
    「?」
    「失礼します」
     状況が解っていないギルガメッシュに一応断りを入れて、立香は片手を伸ばす。
    「? 立香、なに――――ひゃわっ」
     手を伸ばした立香が頭の上の耳に触れた瞬間、聞いたことのない声を上げてギルガメッシュが飛び起きる。勢いが良すぎてベッドの端まで飛び退って、庇うように自分の両腕を掴んだ。鳥肌でも立ったのだろうか。
    「神経通ってるんですね、それ……」
    「? ??? ??」
     飛び上がったギルガメッシュが一番不思議そうな顔をしている。その顔の横にゆらりと細長い金色の、ハタキのように毛が立ったものが並ぶ。それに沿って視線を下げると、ギルガメッシュの尻のあたりで隠れて途切れている。それは恐らく尻尾で、驚いた拍子に毛が逆立ったのだろう。ギルガメッシュは今し方感じた未知の感覚に驚いたような困惑したような顔で瞬きしている。
    「王様、鏡とか持ってます?」


     scene.01
      
     『ま、いつもの霊基の異常だよね。二、三日で戻ると思うよ』とはギルガメッシュを検査したダ・ヴィンチの言葉だ。自室を出て知ったのだが、ギルガメッシュのように耳が生えたのは一人ではなかったらしい。猫、犬、ウサギ、その他色々、サーヴァント達に動物の耳や尻尾が生えていた。皆生活に支障はないからと気にしていないあたり、霊基バグにも慣れたものだ。この食堂にもケモ耳の生えたサーヴァント達がちらほら、素知らぬ顔で食事を摂っていた。元々ケモ耳の生えたサーヴァントもいるから、真新しいような、そうでもないような、複雑な気分になる。
    「つっ」
     カチャン、と金属音の混じった落下音がして、立香は周囲を見回していた目を正面へ向ける。向かいに座っているギルガメッシュが、驚いたようなしかめっ面で、トレーの上に落ちたスプーンを見つめていた。
    「大丈夫ですか?」
    「なんだこれは……熱すぎて飲めぬではないか」
     眉をひそめて口を押さえるギルガメッシュのトレーには、湯気の立つ淡いクリーム色のコーンスープとサラダ、カリッと焼いたベーコンに半熟が絶妙な目玉焼きと、焼きたての丸いパンが二個乗っている。いつもの朝食セットだ。立香も同じものを食べている。そんなに、スプーンを取り落とすほど熱いものはなかったはずだが、ギルガメッシュの猫耳はピンと立ち、尻尾は毛が逆立ってブラシのようになっている。
    「あ、王様、猫舌ですよそれ」
    「ネコジタだと……?」
    「猫は熱いものが食べられないんです。王様も今猫っぽい感じになってるので、猫舌なんじゃないでしょうか」
    「ぬう……またつまらぬ改悪を……火傷したではないか」
     文句を言いながら、ギルガメッシュは、ちろ、と舌先を唇からはみ出させる。痛かったのだろうが、朝からそういう目のやり場に困ることはしないでほしい。その赤い舌から目が離せなくなってしまう。朝でなければいいのかと言われたらそうでもないけれど。
    「……水、水飲んでおきましょう。火傷なら冷やすのが一番……」
     ギルガメッシュから視線を引き剥がしてテーブルに置かれた水差しを持ち上げる。コップのないギルガメッシュへ渡すために自分のコップへ水を注いで差し出すと、しかめっ面のギルガメッシュが受け取った。水を飲むギルガメッシュの頭には、いつもの冠ではなく大きな猫の耳がある。その耳はいまふたつともこちらを向いていた。立香の声を聞くためだろうか。かわいい。
    「…………その緩んだ顔をこちらへ向けるな」
    「えっ? ニヤけてました?」
    「そんなに我に獣の耳が生えたことが愉快か?」
     ぶすくれたような顔で言うギルガメッシュは、スープを諦めてサラダへフォークを刺し、レタスを口へ運ぶ。レタスを口に入れてもまだ微妙な顔をしているのは、火傷した舌が痛むからだろうか。
    「愉快ってわけじゃなくて……かわいいなあって……」
     立香はパンをちぎって口へ放り込み、後半を抑えた声でこそこそと言う。
    「全く、ヒトが不便を強いられているというに、呑気なことよな」
     呆れたような、ではなく呆れているギルガメッシュに溜め息をつかれて、立香はえへへ、とごまかし笑いを浮かべる。当然ごまかせはしないが、立香のこの呑気さは今に始まったことではないとギルガメッシュもよく解っている。不満はあるようだが、これ以上の追及はやめるらしい。テーブルの表面を金色の尻尾がビタビタと叩いているが、それ以上は何も言わなかった。スープを諦めきれないらしく、スプーンですくって息を吹きかけ、冷ましてなお熱そうに顔をしかめて舐めるようにちびちびと飲む。その間も、尻尾はテーブルを叩いていた。
    「王様、その尻尾って王様が動かしてるんですか?」
    「我の玉体から生えているのだ、当然であろう」
     半分に切られているプチトマトを咀嚼するギルガメッシュが尻尾をゆらゆらと左右に揺らすと、髪と同じ色の毛並みが照明を受けてキラキラと輝く。明るい茶色の毛をした猫ならば見たことがあるけれど、こんな毛色の猫は見たことがない。元が猫ではないので当然かもしれないが。
    「綺麗ですよね、王様の髪と同じ……」
     テーブルの端を、ゆるやかにたしたしと叩いていた尻尾へ手を伸ばして触れる。ふわふわとした毛に覆われた尻尾は、中心に弾力のある尾があるらしく、真っ直ぐなそれは先端まで続いていた。
    「うわ、ちゃんと尻尾がある……すごいですね、これ、王さ」
     ま、と、好奇心が満たされた満面の笑顔で正面のギルガメッシュを見た立香がそのまま固まる。尾を好きに触らせていたギルガメッシュは、口を押さえて顔を少しだけ立香から背け、目尻から耳までを真っ赤に染め上げて声を殺していた。
    「えっ? あ、あっ?」
     尾は自分の意志で動かせるとギルガメッシュは言った。であれば、尾に与えられた感覚はギルガメッシュが受け取るのだろう。そしてその反応は。
    「す、すすすすすすみません」
     慌てて尾から手を離して、両手を挙げる。テーブルの上にあった尾がするすると端へ引き戻され、テーブルの上から消える。
    「…………ヒトの身体に触れる時ははじめに断らぬか、ばかもの」
     口を押さえる手の隙間からぼそっと言われ、縁が朱に染まった真紅の眼に恨みがましげに見られて立香はもう一度謝る。今のは、どういう感覚だったんだろうか。
    「お、おう――」
    『――立香君? 立香くーん? 聞こえるかい?』
     ギルガメッシュを呼びかけた立香の声を遮り、腕の通信機がダ・ヴィンチの声を伝える。呼びかけを中断して、立香は応答した。
    『ミーティングの時間だけど、今どこだい? 何かあった?』
    「えっ、もうそんな時間」
     立香は食堂の時計を確認し、「ヤベッ!」と声を上げる。思いの外時間が経つのは早かったらしい。
    「ごめん! すぐ行く!」
    『オッケー。廊下で誰かとぶつからないように、気をつけてくるんだよ』
    「うん!」
     慌てて立ち上がる立香を、ギルガメッシュは溜め息をついて見上げる。
    「慌ただしいことだな」
    「すみません、あ、オレの目玉焼きどうぞ!」
     ギルガメッシュが是非を言うより早く、立香は皿から皿へ目玉焼きを移し、トレーを持って返却口へ向かう。残されたギルガメッシュは皿から溢れそうな二枚の目玉焼きを見て何度目かの溜め息をつき、テーブルの端を尻尾で叩いた。


     scene.02
      
    (あ、王様だ)
     ミーティングも終わり、シミュレーション室へ向かう道すがら、廊下で職員と会話しているギルガメッシュを見つけた。もちろん、その頭の上には朝と同じく大きな猫耳が生えている。今は周りの音も拾いながら会話しているのか、ぴこぴこと忙しなく動いていた。
     特に用がなければ会話の邪魔をする必要もないだろう。本人も気づかない変化もあるようだし、あの状態のうちはシミュレーションへ駆り出すのはやめておいた方がいいだろう。それでも横を通り抜ける時にはちらりと顔を窺い、目があわないことにほんの少しだけ落胆する。雑談ではないようだったから仕方な――
    (ん?)
     ギルガメッシュの横を通り抜けようとした立香は、手首にふわりと触れたものに引き止められるように足を止める。それは引っ張るほどの強い力でもなくただしゅるりと巻きついただけの、金色の、尾。もちろん、持ち主は立香の斜め後ろにいるギルガメッシュその人だ。立香の手首に巻きついた尾は、今は羽根を外した彼の赤いズボンの上部から伸びてきている。立ち止まった立香は二度三度出処を確認して、目を瞬いて、手首を見下ろした。と、尾はまたするりと手首の表面を撫でて解けてしまう。ギルガメッシュの後ろ姿を見ても最後までこちらは見なかったけれど、立香の落胆は消え去った。我ながら、単純だと思う。


     scene.03
     
    「ただいま――」
     あれ?と、自室の扉を開けた立香は言葉を区切って呟く。夜とはいえまだ時間は充分にあるというのに、室内はほとんどの照明が消され、ひとつふたつ間接照明が静かに灯っているだけだった。
    「王様……?」
     薄暗い室内へ踏み入った立香は、小声でいるはずの人を呼ぶ。全消灯ならば留守、もといまだ部屋に帰っていないだけだろうが、間接照明が点いているのである。ということは部屋の中にはギルガメッシュがいるはずである。しかしこの様相は就寝前に似ている。つまり、部屋の中にいるはずのギルガメッシュは寝ているのではないだろうか、と予想しての小声だった。
     そして、その予想は当たっていた。
     豪奢なベッドの中央には、長い手足を折り曲げて丸くなったギルガメッシュが、布団もかぶらずに眠っていた。
     王様、ともう一度、聞き取れるか否かくらいの小声で呼んでみるが返事はない。熟睡しているようだ。それにしてもギルガメッシュにしては珍しい寝姿だ。いつもは手足は伸ばしているし、布団にだって入っている。こんな風に丸くなって眠っているところなど見たことがない。頭の上の耳と、円に沿った尻尾はまるで猫が眠っているよう――
    (あ、そうか)
     今ギルガメッシュは猫なのだった。舌まで猫の性質に変化しているのなら、寝姿が猫っぽくても不思議ではない。身体を丸めているのは寝苦しそうだが、そうでもないのだろうか。
    「ぅん…………」
     猫だ……と立香が感動する前で、ギルガメッシュは小さく唸ってごろんと寝返りを打った。丸まっているため全身ではなく上半身だけで打った寝返りは、やはり寝苦しくないのだろうかと聞きたくなる体勢になった。
    「……ん…………? りつか……?」
     やはり寝苦しかったのか、すぐにもう一度寝返りを打ったギルガメッシュは、薄目を開けてゆっくりと瞬きをし、立香を見上げた。立香がその場にしゃがめば真紅の視線は立香にあわせて下へと動く。
    「起こしちゃいました?」
    「ん……いや……」
     明らかにまだ眠そうなギルガメッシュは、一度ぎゅっと目を閉じてからのそりと起き上がった。目は半分以上閉じていて、まだ随分眠そうだった。
    「霊基異常の影響だろうが…………眠くてかなわん……」
    「猫ってよく寝ますもんね」
     そんなとこまで影響が出ているのは深刻な気もするが、猫だと思うとどうにも愛らしさの方が勝つ。まだむにゃむにゃと眠そうなギルガメッシュの側へ上がり込んで、頭を撫でてみる。と、明らかにいつもより気持ちよさそうに頭をこちらへ差し出してきた。大きな猫耳がぺたんと伏せられていてかわいい。ベッドに横たわる尾はゆらゆらとゆっくり動いている。
    「眠いなら寝ましょう? 起きたら治ってるかも」
    「ああ……そうであればいいが……これは……、困る……」
     勢いのない、消えそうな声でギルガメッシュは呟いている。自分が何を言っているのかもあまり気にかけていられないようだ。よほど眠いのだろう。今日は編成に入れなくて正解だった。
    「王様、寝てもいいですけど布団に入ってください」
    「んー……」
     返事が曖昧だ。こんなに眠気を全面に出しているのは今まで見たことがなかったが、子供のようでかわいい、と思う。ベッドの上で体育座りをして動かないギルガメッシュの尻の下に敷かれている布団をなんとか引き出して、その拍子に転がったギルガメッシュの上へかぶせる。
    「頭出さないと苦しくなりますよ?」
     布団の中で丸まっているギルガメッシュに声をかけるが、反応は薄い。放っておけばそのまま寝てしまうだろうギルガメッシュを、両脇の下に腕を差し込んでズルズルと引き上げ、枕の位置へ下ろす。ぽすんと枕に埋まったギルガメッシュは、枕の感触を確かめるように頬を擦りつけ、うっとりと目を閉じた。その様は明らかにいつもと違って、小さな子供のようだった。頭を撫でれば耳が倒れるし、気持ちよさそうに立香の手へ頭を寄せてくる。気持ちいいのだろうか。くぅ、とギルガメッシュの喉が鳴って、耳を澄ませば小さな音がくるくると鳴っていた。猫のアレだ。ということは、気持ちいいのだろう。
    「くっ……」
     立香は片手で顔を覆う。こんなに、こんなにかわいいのに眠ってしまった。眠ってしまったらさすがに手は出せない。寝込みを襲う趣味はないし、あの状態じゃ何かをする前にまた眠ってしまいそうだ。無理に起こすのもしのびない。
    「我慢がまん……」
     呟いて、頬を撫でる。ギルガメッシュはもうすっかり眠りの底で、少しつついたくらいでは目を開けもしない。すやすやと気持ちよさそうに眠っている。これを邪魔するだなんてとんでもない。とんでもない、けど、
    (……キスくらいはいいよね?)
     起こさなければいいのだ、と自分に言い聞かせて、起こさないようにそっと、安らかに眠っているギルガメッシュの唇へ唇を重ねる。眠っていようがその柔らかさは変わらない。一回だけ、と思っていたはずが離れがたく、もう一回、もう一回、と繰り返すうちに欲が出た。薄く開く唇の、その奥へ入り込みたい。厚みのある肉の、あの感触が欲しい。
    (……ちょっとだけ……)
     顎をそっと上向かせたギルガメッシュの、唇の隙間へ舌を滑らせる。綺麗に並んだ歯列の隙間も通りすぎて、更にその奥へ。舌先がギルガメッシュの舌の表面へ触れ――
    「んんん」
     思わず声が出た。咄嗟に離れて口を押さえる。ギルガメッシュを見、起こしていないことに安堵してから今の感触を思い出す。今の、ヤスリのようなザラついた舌の感触を。あれは舌か?いやでも口の中になにか仕込んでるとは考えにくいし、舌だろう。昨日まで普通の、立香と同じような弾力の、柔らかい舌だったのに。ということは、これは猫の舌だろうか。
    (こんなとこも変わってたのか……)
     朝、熱いスープに火傷したと言っていたから、恐らく感覚だけでなく舌そのものが変質していたのだろう。どこまで猫になっているのか、見ただけではもはや解らない。口も閉じてしまったし、明日起きてから聞いてみようか。いや、こっそりキスしてたことがバレるからやめておこうか。
    (どこまで猫なんだろう……)
     ささやかな疑問は、解答を得ないままになるのだろう。早ければ朝には治っているかもしれないのだから。驚きも収まった立香は、そこはかとない罪悪感をごまかすように、眠るギルガメッシュの頭を撫でる。「ぅん……」とか唸ったギルガメッシュはもぞもぞと動いて、立香の手の方へ頭を寄せてきて立香は心臓に矢を受けたような気分になる。今回はこれが見られただけでいいか、などと考えながら着替えも放棄してベッドに横になる。そうして、ギルガメッシュの頭を撫で、眠くなるまでその安らかな寝顔を眺めた。
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