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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽サブ垢日記

    ##サブ垢の話
    ##3001-5000文字

    ☆4交換でサブ垢は王様を交換したので日記を書きました▽プレイ日記的なもの
    ▽交換について捏造が激しい
    ▽ぐだキャスギル







    「…………」
    「…………」
    「…………本当に良かったのか、貴様は」
    「え? ええ。それは問題ないですよ。王様が強くないと落ち着かないですし」
    「たわけ。我はレベル一でも強いわ。……故にこの選択は、我どうかと思う」
    「なんでです?」
     本当に心底解らないという顔で立香はギルガメッシュを見、本当に解っていない立香にギルガメッシュは深く長い溜め息を吐く。二人が見下ろす先には、膝を抱えるようにして長い脚を折り畳んだギルガメッシュが、静かに目を閉じている。見下ろしているのは大きな箱――所謂プレゼントボックスに、そのギルガメッシュが座っている……入っているからだ。見覚えのある軽装のその霊基には、未だ中身がない。
     どういう仕組みかは知らないが、この箱の中にいるうちは中身、つまりギルガメッシュという英霊を宿していなくても霊基が安定する仕組みになっている。どういう仕組みかは知らないが、そうなっているらしい。流石の天才ダ・ヴィンチも、智慧ばかりは無駄にある医者もどきも、遂にこの箱の謎は解けないままだった。
     その箱の中にどうしてギルガメッシュが眠っているかと言うと、立香がそれを選んだからだ。
     この世界には、触媒を用いずともある程度の指向性を持ってサーヴァントを召喚できる、特殊な召喚を行える時期があった。縁だとかいう酷く曖昧で希薄なものでも触媒にしてしまえるカルデアの召喚システムでも、確かな触媒もなしに確実に狙ったサーヴァントを召喚することはできない。特に今この地球上では、どこぞのグランドを名乗る雑種によってソラに光帯が浮かび、あらゆる有機物無機物はカルデアと立香を残して焼き尽くされている。当然、触媒になるような遺物も纏めて。そんな状況下で奇跡を起こし続けているカルデアに於いても不可能な確定召喚を、この星の廻りだとか霊脈の流れ方だとか確定事象の揺らぎだとかそういう要素が天文学的な数字で重なり合うほんの僅かな期間であれば行える、というのがこの特殊召喚だった。
     年に一度あるかないかの奇跡的な時期が、今年このカルデアに訪れた。この召喚であれば、まだ縁を結んでいないサーヴァントであれど召喚できる。だというのに、立香は既に召喚されているギルガメッシュを、その対象に選んだ。
     戦力の補充という面では、不足しているクラスのサーヴァントを喚ぶのが理にかなっている。もしくは、より攻撃に秀でた者を。特殊クラスと呼ばれるクラスのサーヴァントですら、この特殊条件下においてはノーリスクで召喚できるのだ。以前であれば道楽に走るのも酔狂に走るのも、好みを優先するのも自由だった。それだけの戦力はあった。が、今はそうではない。立香の旅はまだ始まったばかりで、当のギルガメッシュも再臨が終わっていないような状況で、なぜ同じサーヴァントを選んでしまったのか。全くの無駄ではないが、人手という意味では増えなければ意味がない。
    「だから王様の宝具を強くしたいんですってば。……できたら、前と同じくらい」
     言葉の後ろ半分を声を落として言う立香は、ギルガメッシュの考えなど知る由もない。呑気に何も考えていないような顔で箱の側に屈み込んで中身のないギルガメッシュを眺めてニヤニヤしている。
    「そのだらしのない顔をやめぬか」
    「えー? だって嬉しいんですもん」
     ニヤニヤなのかニコニコなのか、どちらでもギルガメッシュからしたら同じことだ。同じ顔がいること自体はもう今更どうとも思わないが(どういう因縁かこちらにも全盛期と幼少期の己がいる)、全くの同一存在というものは些か慣れない。今は器だけの状態だが、この箱から出せば己と全く同じ生前の記憶を持つ、能力も思考も何もかも同じ存在がもう一人爆誕する。前のカルデアでは同一別個体こそいたものの遭遇することなく取り込んでいたから、こんな風に眺めることはなかった。何だかひどく居た堪れない。
    「前、は王様を選ぶことってなかったですから。狙って来てもらってはいましたけど」
     箱の中へ手を伸ばした立香が、瞼を閉じて眠っているように見えるギルガメッシュの頬を人差し指でつついた。やめぬか、と窘めても聞きやしない。何が悲しくて己の頬がつんつんつつかれているのを見なければならないのか。
    「なんか、王様を選んで……ちゃんと、手を掴めた気がします」
     戯れるようにつついていた指先が、つ、と頬をなぞる。行動とは裏腹に真面目くさった声だが、それは。
    「………………貴様が掴んだのはソレの手ではなく我の手であろうが」
     ぼそ、と、声に出してみれば己でも驚くほど不満気な声音が口をついた。その声に立香が弾かれたようにギルガメッシュを、こちらを見上げる。そして、数秒穴を開けられそうなほど真っ直ぐ見詰めたあと、くしゃっと相好を崩した。今し方までぬけがらの肌に触れていた手が伸びてきて、ギルガメッシュの左手を掴む。握り込まれる。
    「もちろん。オレが掴んだのはこの手です」
     もう片手も伸びてきて、ギルガメッシュの左手は立香の両手に覆われる。立香の体温が左手を包んだ。こんなことで、と思うが、こんなことで、絆されてしまう。
    「もう離しませんよ。〝前〟も散々言いましたけど」
     普段ならばふたりきりであろうと声を抑えて秘することを、珍しくはっきりと口にする。それだけで、ぎゅう、と手ではなく心臓が締め上げられるような錯覚がして、息を詰める。前より弱くなっているのは、レベルによる枷のせいだろうか。無論、
    (否。であろうよ)
    「オレがしつこいの、王様も知ってるでしょ?」
     深い深い水の色をした真っ直ぐな眼をギルガメッシュへ向けたまま、少しだけ細めて、へへ、と笑う。ギルガメッシュには今己がどんな顔をしているのか解らない。
    「…………いやというほど知っているとも」
    「よかった。……あ、嫌いにはならないでくださいね?」
    「な、」
     るわけがない、と、思わず口をついて出そうになった言葉を既で呑み込む。あまりそういうことを言うと立香が調子に乗るのも、いやというほど知っている。
    「な?」
    「…………そうならぬよう、貴様が重々心掛ければよかろう」
    「もちろんですとも!」
     見上げていた蒼い目が今度こそ笑みで閉じる。上機嫌で立ち上がった立香はギルガメッシュの手を解放して伸びをし、腰に手を当てて再び箱へ目を向ける。立香の手が離れ、外気でひやりとした手を肘の内側へ隠すようにして腕を組み、ギルガメッシュは立香を見る。
    「それで、どうするのだ、コレを」
    「うーん、起こします? 二、三日カルデアで過ごしてもらってから宝具重ねるとか……」
     起こす。己と同じ顔同じ身体同じ思考同じ記憶を持つソレを、起こす。
     それがどういうことか、ギルガメッシュにだけははっきりと解る。
    「……………………やめよ。すぐに奪うものを与えるのは、酷というものよ」
     箱の中で眠る己を見下ろす。知らないで済むなら、知らない方がいい。魂が千切れるほど欲したものを得てすぐに奪われるなど、下手をしたら未来永劫この魂に刻まれてしまう。
    「…………王様がそう言うなら。
     じゃあ、ダ・ヴィンチちゃんのとこに行きましょうか」
     立香は箱を閉じ、赤い令呪の刻まれた右手を差し出す。腕を組んだままのギルガメッシュはその手を見、続いて立香の顔を見る。慈しむように微笑う、少年とも青年ともつかない顔を。
    「手、冷えちゃったんで。あっためてください」
    「…………仕方のない奴だな。まったく」
     組んでいた腕を解き、先程包まれていた左手で立香の手を掴む。己の体温でぬるまっていた左手は、立香の体温で暖められる。立香の手はあたたかい。何が冷えちゃったんで、だ。ばかもの。
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