天使と弱虫「もうここも危ない!!!じきに崩落するぞ!!!」
男の叫び声とガラガラと建物が崩れ落ちる音が木霊する。
もう体を動かす術も見つからない。
視界が赤い。己の血のせいか。
「瑶!!!!早く!!!!!!」
男の叫ぶ声は先程よりも切羽詰まったものだった。己の最期も近いということだろう。
胸に広がるは一種の安堵。
そしてほんの一匙の恐れ。
こんな俺が死を恐れるなんてことあってはならないのに。
これは俺が望んだ最期だ。
「………………行け。瑶。」
なんだ声出るじゃないか。
ちゃんと聞こえただろうか。
目の前の愛おしい家族に。
俺の天使に。
大丈夫。ゴポという音とともに広がる血の味匂いには目をつぶっておこう。
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