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    bell39399

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    bell39399

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    義兄弟(予定)の語らい

    バンのホワイトデー計画3が、そうはいかなかった。キングのパーカーをバンがしっかり掴んでいたからである。危うく転びかけたキングは文句を言ったが、バンは少しも聞いていない。文句の代わりに「お前はエレインの兄貴だろう」と遠い目をしつつも真顔で言った。
    「そうだけど。まさか疑っているの?」
    「エレインがお前の妹って言ってたから信じている」
    「あ、そう……」エレインが言っていなかったら信じていなかった、ということか、と薄く笑うキング。バンの話は終わりではなかった。
    「つまり、妹としてのエレインを知っているっつー事だ」
    「まぁ……そう思っているけど」
    「そこを見込んで相談がある!」
     遠くを見ていたバンの目がぎろりと見開かれ、キングを睨みつけるように光る。だがそれは凄んでいる訳でもなく、まして脅しつけている訳でも無いということはキングには分かっていた。同時に面倒くさそうな事を言われるんだろうな、とも。だがどうせ断る選択肢は存在しないのだ。キングは「なんだい」とあまり心のこもらない返事をした。
    「何だっけかあれ、バレンタインタインのお返しする日」
    「……ホワイトデーのこと?」
    「それだ、エレインにぜひお返しをしたい。告白も」
     告白なら毎日しているけどね、と心の中だけでキングは答える。
    「エレインは甘いもん食うか? クッキーとかケーキとか」
    「普通に好きだと思うけど。でもバレンタイン断られたくらいなんだから、そもそも受け取ってもらえないんじゃない?」
    「そこなんだよ、なんか兄的な妙案をよこせ♪」
    「無茶言わないでよ。兄とか関係ないよ!」
    「……チッ」
     バンは心底心のこもった舌打ちをした。キングは文句を言われるとは思ったけど、文句を言われるより堪えるなとまたまた心の中だけで空を仰ぐ。だが兄としてとっておきの情報が彼にはあった。それをバンに伝えるべきか否か悩んだが、伝えない方が後々面倒になるだろう、と結論づける。
    「あのさバン」
    「おっ、妙案か?!」
    「ホワイトデーの日、エレインの誕生日でもあるよ」
     バンは先ほどの比ではないくらいに目を剥いて、それから突然うずくまったかと思うと、今度は飛び上がってキングを抱きしめる……というより締め付けた。
    「あんじゃねぇかよ、兄的な情報! クソ感謝するぜキング」
     それからキングを転がすと、上機嫌に鼻歌を歌いつつ教室をとびだした。
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    bell39399

    MAIKINGバンエレ水浴び一人アンソロその1(2以降があるかは謎)

    途中まで書いたやつポイ。
    一人称に直すかも。なんとなく
    それを見た時、バンは幻を見たのかと思った。もしくはまだ寝ぼけているのか。
     

     夜中、水音を聞いた気がしてふと目が覚めた。もとより熟睡することのないたちだったが、この森に来てからは妙によく眠れる。にもかかわらず、だ。それに何故か少し冷える。
     その原因に気づき、思わず自嘲した。なんの事はない、隣で寝ていたこの森の聖女がいなかっただけの事だ。
     この森も、この森である秘宝を守っているという少女も奇妙な事だらけだった。安らぎやぬくもりとは無縁の生活を送ってきたバンだったが、ここに来てからは気持ちが凪いでいる。不思議なことだが本能で警戒する必要がないと感じていた。
     エレインと名乗る妖精少女(本人曰く千年は生きているらしいが)とのやり取りも実に愉快だった。彼女はバンの他愛のない話を夢中で聞いて、四季のようにくるくると表情を変えながらバンの言葉の一つ一つにいちいち反応する。時には金色の睫毛を伏せ、時には頬を膨らませ、そして何よりよく笑った。バンは彼女の笑顔で初めて「花が綻ぶような」という形容の意味を知った。
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