バンのホワイトデー計画2 飴玉はふた粒貰えた。バレンタインと誕生日の分である。バンは押し頂くようにして得たそのうち一粒を口に入れ、もう一粒は、わざわざそのために小さなチャック付きのポリ袋を買ってきて大事にしまった。花の香りのする飴玉で、何ともエレインらしいチョイスだとしみじみとしながら舐めた。一粒の飴でこんなに幸福感で一杯になったのは初めてだろうし、今この瞬間彼は間違いなく世界一幸せだと断言できた。
バンは取っておいた方の飴玉をお守りのように持ち歩き、折に触れてはポケットから出してうっとりと眺めた。
それを見てしまったキングは、あまりに気味が悪いのでつい口を出してしまった。「どうしたの」と。
「エレインに貰った♪」
そこでキングは言わなければいいのに言ってしまったのだ、「ああ、うちでエレインが話してた」と。
バンはくわっと目を見開き、キングを鋭い眼光で睨みつけた。が、すぐに飴を眺める作業に戻った。
「うちで話してた、か。ケッ、エレインと家でも会話できる立場ってか♪」
「そう言われても……。兄妹だし」
「俺もそのうちそうなるから悔しくねぇよ。だがそうすっとお前は義理の兄貴か」
「心底ゾッとするよ」
どうでもいい、とバンは呟いてぼんやりとしている。これはとんでもなく重病だ、とキングはその場をそっと離れようとした。