バンのホワイトデー計画先月の話――。
「エレイン、バレンタインのチョコくれ♪」
気まぐれ就学態度改め、見かけによらず真面目高校生活満喫中のバンは職員室を訪れて、憧れのエレインにバレンタインのチョコをねだった。エレインはきょとんと生徒を見つめ、それから「特定の生徒に、バレンタインのプレゼントをあげるわけないでしょう」と呆れ半分で半分で苦笑した。が、それを聞いたバンの反応は予想外だった。なんと、本気で驚いている。ショックを受けている、と言ってもいい。
まさか本気でもらえると思っていたの?!
エレインは呆れを通り越して気の毒にすら感じてしまう。しかも「まじかよ……そうか、ねぇのかよ……そうだよな、だって俺はまだ生徒だしな……」等と、妙に物わかりがよく自分を納得させようとぶつくさいいながら、びっくりするほどうなだれてしまった。
そういえば、とエレインはふと気づく。
「そういえばバンのお誕生日でもあるのよね」
「覚えててくれたのか?!」
どん底近くまで落ち込んでいたバンはころっと満面の笑み。あまりの急上昇っぷりに、エレインは思わず笑みが漏れる。
「補講のご褒美用だけど」と、机の奥から飴玉を出す。「私ここの飴が好きなの。どうぞ、みんなにはナイショよ? お誕生日おめでとう」
「まじか!」
バンは宝物のように、貰った飴を掲げた。
「最高のプレゼントだぜ! ありがとな、エレイン♪」
「先生って呼びなさいってば」