恋心よ、熱に浮かれよ 他者が見ても、きっと『そうだ』と分かる程に。
訪れた恋に、自分たちはきっと浮かれていた。
老いらくの恋という言葉がある、髪に霜が降りたような齢に訪れる春を指す言葉だが。髪に少し白髪の混じる自分たちも、少しばかりそれにひっかかるに違いない……。
平凡を好み何事にも積極性に欠いたように見える男が、その性質とは全くの正反対な人間に恋をした。無気力に見せながら、よくよく観察すれば我欲が強く、扱いづらい人間であるはずのその男を、その在り方のまま許容してみせたのが『カブ』というその人物で。
初めて出会った自分自身を許容してくれる存在に、男が特別な感情を抱いてしまったのは当然の流れだったのかもしれない。
『たいあたり』『でんこうせっか』『すてみタックル』『とっておき』……。ジムリーダーとして操るタイプその通りに、カブに対して猛烈にアタックした男は、周囲から言わせれば圧倒的なふてぶてしさで、カブの隣を射止めてしまった。
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