魔女集会パロのいおりくその少年は、全てを諦めていた。
親に捨てられ、誰も助けてはくれず、周りからは怪奇的な目で見られた。
このまま死なせてくれとさえ思った。周りがそれを望んでいるのがわかっていたから。
けれど、何日たっても何ヶ月たっても少年は死ななかった。
それがますます周囲の人を怖がらせ、気持ちの悪い怪物を見たかのように自分たちから少年を遠ざけた。
『君、どうしたの?身体ボロボロじゃない!大丈夫…?じゃないよね。』
『・・・』
『あ!そうだ俺のうちくる?ちょっと散らかっちゃってるけど暖かいスープがあるよ!今年の冬は冷え込むみたいだからここにいちゃ風邪引いちゃうよ?』
その青年は突然少年の目の前に現れた。
初めは無視をしていたが、青年は少年の元をさろうとはしなかった。それどころかずっと自分に話しかけてくるのだ。
幾分かその時間が続いて、少年はとうとう根負けした。
『どう‥して‥わたしに構うんですか。』
ほっといてくれたらいいのに。そうしたら、きっとみんなの望み通り消えてなくなることが・・・
突然喋った少年に青年は少しびっくりして、でも嬉しそうにうわぁ、喋った!と声を弾ませる。そうして、先程の少年の質問に少しも迷うことなく応える。
きみといたいからだよって。
『あれ?あんまり納得してないな!?うーん、そうだなぁ。あと強いて言うなら、オレも君と同じ魔法使いだからかな!』
魔法使い?少年は青年の言っている意味がよくわからなかった。でも、ぼけっとしている間にも話は進んでいたようで、意外にも強引な青年に、話は終わったと言わんばかりの勢いでほら行こうと手をぐいぐいと引っ張られる。
『もうここまでくれば大丈夫、これからはオレがずっと君のそばにいてあげるからね。もう誰も君のことを虐めたりしないよ。』
あの街を出てだいぶ歩いた頃、青年は急に少年の方を振りかえりそう言った。赤い瞳が優しげに細められる。
トクンッ
その瞳を見た時に産まれて初めて鼓動が高鳴るのを感じた。胸の奥からじわぁっと温かい何かが流れてきて少年は初めて、死にたい以外の感情を持った。この感情は、何という名前のものなのだろうか。少年はまだ何も知らない。
※※※
そこは薄暗い、あまりにもドロドロとした空気が蔓延った空間だった。
ここはどこだろうか。自分はどうしてここにいるのだろうか。
「おーい!誰かいますかー!」
思いっきり大きな声を出してみても、何の音も聞こえない。むしろ、己の音が空間の中に吸い込まれて消えていくのがわかった。
「どうしよう。」
このままでは誰も助けにはきてくれないしここから出ることもできなさそうだ。
じっと考えこんでいると、そのうちどこかから「キミ」はいらない、いても価値がないという否定の言葉聞こえてきて頭の中を巡り胸を締め付ける。こんなことは初めてだった。どうしてそんなことを言われないといけない?
突然聞こえてきた訳の分からないその言葉たちにグッと耐え忍ぶように唇を噛み締め、前を見据え大きく息を吸う。
「オレは! 」
「・・・クさん!リクさん!」
「んー。ムニャムニャ」
「いい加減起きてください!今日は集会のある日でしょう!?」
「・・・イオリうるさい」
「はぁ!?うるさいじゃありませんよ!あなたが起こせと昨日私に言ったんでしょう!?」
イオリはもう、勝手にしてくださいと部屋を出て行ってしまう。リクはそれをベットの上から薄目で見ながら、クスクスと笑った。
朝からイオリは元気だなぁ。
なんとも場違いな感想を抱くこの男はナナセ・リクここら一帯を取りまとめる魔法使いだ。
この世界は大きく分けて6つに分けられている。そこの一番西側そこがリクに割り当てられた領地だった。
気候は一年中春のような暖かさで包まれており、食べ物に困ることもほとんどない。そのためか穏やかな人が多く、他の地域では虐げられていることが多い魔法使いの人数が多いのもここの地域の特徴だ。
リクは起き上がるとん〜っと伸びをして、朝ごはんを作ってくれているであろうイオリのもとへ向かう。
イオリもリクと同じ魔法使いだ。昔道端に捨てられていたイオリをリクが拾ったことから二人のこの関係性はスタートしている。
犬や猫と同じように魔法使いの子供も捨てらることが多い。この世界の嫌な常識だ。
それにしても先程の夢はなんだったのだろうか。何か凄く嫌な夢をみた様な気がするが全く内容が思い出せない。
考えこんでいると片眉を上げ怪訝そうな顔をしたイオリが目の前に現れる。
「あなた、また変なこと考えてるんじゃないでしょうね。やめてくださいよ。面倒ごとはごめんです。」
「変なことってオレが何したっていうんだよ。」
心外だと唇をむっと尖らせる。
そんなリクに目も向けず、イオリははぁとため息をつくと魔法で取り出した本をペラリとめくりこう続ける
「*月◯日 花火をしてみたいと炎の魔法を使用するも何故か家が全焼。その後復旧魔法で状態回復を図るも家の形状がおかしくなる」
「そ、それは威力がおかしくなっちゃっただけで・・・」
突然何を言い出したのだと、リクが慌てて言い訳をしようとするも、さらにその上から被せて言葉を続ける。
「×月△日 手紙を送るために風の魔法を使用。1km先の場所に飛ばす予定が東の国までとどいてしまう。機密事項であったため遠隔魔法で手紙を焼く」
「あの日なぁ!外すごい風だったから思ったより飛んじゃったんだよね」
苦し紛れにえへへとリクが笑う。
「×月◯日 でかい恐竜に会ってみたいといい時空空間魔法を使用する。
「イオリ!俺はお前の師匠なんだからな!そんな態度とるなよ!」
ビシッとイオリを指差し、ふふんっ決まったと言わんばかりのドヤ顔をしているリク。
「はぁ、分かってます、分かってますよ。さぁ、早く顔を洗ってきて。そのだらしない寝癖もどうにかしてきてください。し・しょ・う」
「なっ!ムキー!腹立つ〜!イオリのほっぺつねりたくなった!」
「はいはい。あとでいくらでもどうぞ。」
以降、このセリフ書きたい!のコーナー
・🐰「私を置いていかないで・・」
・🐰「あなたは魔力だけはでかいんですから、コントロールが他人より少し、いやかなり劣っているだけです。」
🍓「・・・っおい!」
🐰「な、なのでこれから私が生涯をかけてあなたをコントロールしてみせます。」
🍓「はぁ?イオリ何いってるの?」
🐰「もう、わからない人ですね!私が、一生あなたのそばにいるんですからもう他の訳のわからない人間の言葉に耳を貸す必要はないといっているんです!」