噛み付くようにキスをして【噛み付くようにキスをして】
戦闘の終わり。くすぶっているのは鈍色に光る天羽々斬だけではない。込み上げる高揚感はこれでは到底おさまらない、物足りない。けれど迎え撃つべき相手はもう此処にはいない。奇襲をかけて来た悪魔たちは今しがた倒し切ってしまった。手持ち無沙汰に剣で空(くう)を裂けば赤い魔力が稲妻のように走り、尾を引いて消えた。息を吸い、鋭く吐く。
最近はといえば、どうにも張り合いのない者ばかり。断罪者ネモの一件以来、やはり魔界全土の悪魔たちの質が落ちてしまったのではないか、そんな不安とも不満とも表現される気持ちが込み上げたが、それは魔力を失い弱体化した自身にも当てはまることで、あえて口にすることはしなかった。
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