最後の希望.
「……怖くないのか?」
少年はきょとんとした顔でこちらを見ていた。こんなに大きかっただろうか、と思わずにいられない目は、きれいな、本当にきれいな空色だ。そんなきれいな目に黒い影が映ってしまっているのが、申し訳なくなる。
「怖い……って、悟飯さんが?」
「……」
無言で頷けば、少年は首を傾げた。さらりと流れた薄紫色の髪は柔らかそうで、手を握りしめていなければ、つい引き寄せられていたかもしれない。
「どうしてボクが悟飯さんのことを怖がるの? ……あ、道着が黒いから? 確かにちょっとびっくりしたけど、それも似合ってるしすごくカッコいいよ思うよ!」
「そうじゃなくて……この『気』がわかるだろう?」
呑気な少年に焦れて顔の前に手をかざした。その手は赤黒いオーラに覆われている。力を手に入れた代償は、この体に染みついて消えることはないだろう。本当なら、こんな酷い姿をこの子には、この子だけには見せたくなかった。だからきっとこれは罰なんだろう。この世界に迷い込んでしまったのは。この子に出会ってしまったのは。
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