もちダンス　家に帰るともちどぽがダンスを踊っていた。小さい手足をパタパタさせたかと思うと、まあるいおしりを右へ左へ揺らしながら円を描くように動いている。何らかの儀式のようにも見えたが、可愛いのでしばらく眺めていた。すると、じっと見ているこちらに気がついたのか、おしりを揺らしながらもちどぽが近づいてくる。その様子もたいへん愛らしい。玄関先で靴も脱がずにいたこちらに向かって手をグイッとあげた。こっちへ来いと誘っているのだろうか。動かないでいるとさらに2度手をグイグイとあげた。悩みながら、もちどぽに近づくと、もちどぽはこちらにおしりを向けて、またさっきの踊りを始めた。なんとなく楽しくなってきて、少し腰を振って踊ったりしながら部屋の中に進んでいく。すると部屋の中央に何か綿の塊のようなものがあるのに気がついた。さっきもちどぽがぐるぐる回っていたのはこの綿の周りだったのだろうか。しばし、1人と1もちで綿の周りをぐるぐると腰を振りつつ回る。自分でも何をしているのかわからない。でももちどぽが一生懸命しているので付き合ってあげたいと思う。もちどぽはいつからそうしていたのか、体全体が汗ばんでいて、しっとりもちになっている。それもまた可愛い。ふと目の端に動くものを捉えた。部屋の中央の綿だ。ただの綿だったものがモゾモゾと動いている。びっくりして動きを止める。もちどぽも止まり、綿の方へ近寄っていく。もちどぽが綿をかき分けると中には小さなもちどぽがいた。人に比べて小さなもちどぽより一層小さなそのもちどぽは寝息を立てて眠っているようだった。もちどぽはその小さなもちどぽ、言うなればまめどぽの体をぺろぺろと舐めた。さながら出産にたち合ったような気分だ。もちどぽってこうやって増えるんだ。もちどぽとの暮らしの中での新たな発見だった。

　家に帰ると、どでかいもちどぽがいた。
「ちょーでけー」
　思わず口から言葉が漏れた。リビングの真ん中に170センチくらいはあるかな？俵形が横たわっている。もちどぽとは中王区のラップバトルに参加し、アイドル的人気を得たおれっちたちを模した俵形のぬいぐるみで、その中でも同居人である観音坂独歩のものがそう言われていたりするらしい。とりあえず、出勤前までは無かったなと記憶を辿りながらもちどぽに近づいてみる。もちどぽといえば目の下の隈とペロリとでた舌が特徴的だ。確かにこのもちどぽは通常通り、舌が出ているが目が閉じられている。そもそもサイズが見たことのない大きさの時点で小さな違いなど気にする必要はないのかもしれないが。いやなんか動いてる気がする。かすかな空気の音と共に俵の体が息をするように動いている。正体不明なものに対して恐怖よりも好奇心が勝ってさらに近づいてすーすーと寝息だろう音を立てている体にそっと寄り添う。ドクドクという鼓動とじんわりとした暖かさに心も暖かくなるようだった。うーん仕組みはよくわからないけれど、そばにいて安心するこの大きなもちどぽは違法マイクによって変化させられた独歩なのではと当たりをつける。仮説を立てたのだから証明しないとなー。