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    s_toukouyou

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    水銀黄金/現パロ②。小ネタ

     カール・クラフト=メルクリウスの朝は、だいたい友人の探偵事務所の仮眠室から始まる。
     仕事終わりに立ち寄って、そのまま居着いているためだ。仮眠室とは名ばかりで、カールの部屋のようなものである。前回自宅に帰ったのが、いつのことか思い出せないくらいであった。
     香ばしい珈琲の匂いが起床の合図だ。依頼の報酬としてコーヒーミルを手に入れてから、カールの友人はみずから豆を挽いて、珈琲を入れるのを朝の日課にしている。
     仮眠室から出れば、窓辺に設置した席で事務所の主がコーヒーカップを片手に新聞を読んでいた。
     朝日に照らされて、豪奢な黄金の髪がしっとりとした輝きを放つ。近くの机には朝食が用意されている。ベーコンとスクランブルエッグ、かりかりに焼かれたトーストに乗せられたバターのかけらが、熱でとろりと崩れた。
     シンプルではあるが、カールが起きてくる時間を把握して用意されている
    「おはよう、カール」
    「……おはよう」
     ラインハルトが新聞から視線をあげて、カールにむかって微笑む。
     その膝で一匹の猫が丸まっている。膝の上だけではない。ラインハルトの足元や、背もたれにも猫がいる。また窓から入り込んできたのだろう。
     食事の時間になると、どこからともなく猫たちが集まってきて、ラインハルトの近くを陣取っている。たまにおやつを貰っているところを見たこともあった。
     さすがに図々しいだろう。
     もそもそとバターが染み込んだトーストをかじりながら、カールはラインハルトの膝の上で撫でられている猫を睥睨した。
     朝は大人しいが、昼あたりは円陣を組んで、にゃあにゃあと鳴く猫たちに、ラインハルトが穏やかに相槌を打っていたりする。勝手にハイドリヒの事務所を集会場所にするんじゃないとカールは常々思っている。
     さすがに猫の言葉を解してはいないと思うが、言葉が通じなくとも、なんらかの意思疎通は行えているようだ。ラインハルトは出かけたときに、たまに猫が教えてくれたといって、猫が通って良そうな小道に入っていくことがある。実際それで目的地にたどり着けるのだから、よほど好かれているらしい。同類と思われている可能性もあるなと考えつつ、カールはベーコンをつついた。
     
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