刀剣展にいった数日後のことである。
朝起きると横に女が寝ていた。長い金髪に白い肌の女だ。知っているか知らないかで言えば、知っている女だ。夢のなかで何度か会っていた。
はて、養父はいつのまに女性になったのだろう。事実を処理しきれなかった脳は妙な結論をはじき出した。一拍おいて、いやいやと頭を横に振る。さすがに無い。
眠っている様子の女を起こすかどうか悩んで、蓮はベッドからそっと抜け出した。妙な予感があった。
静まり返った家のなかを音を立てずに歩く。カーテンが閉まっているせいか、どこもかしこも薄暗い。心臓が徐々に早く脈打ちはじめる。
父はどこにもいなかった。家のどこにも。
最初は食事の用意をしているかと思ってキッチンを見に行った。誰もいなかったので、では朝のニュースを見ているのだろうかとリビングをのぞいたが、やはりいなかった。風呂場や庭、すべて見て回ったが、どこにもいなかった。
父の不在を意識した途端、途端に家のなかの薄暗さが際立つ。
「おはよう、レン」
リビングで立ち尽くしたまま、考え込んでいた蓮は、背後から声をかけられてぎょっとした。
廊下に眠そうな女が立っていた。ドアのふちが絵画の枠のように女を飾っていた。