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    norarikurari031

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    norarikurari031

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    デザワ黄色本の初期設定チャラ南城×短髪屋敷にやられて書きました。あんまり本編との差が出なかった気がするんですが、楽しんでいただければ幸いです。
    内容的には「本命(短髪屋敷)の気を引きたくて女の話ばっかするけどいざ短髪屋敷がそういう気配を出すと臆病になっちゃう南城×そんな南城の本命が自分なの知ってるけど色々と癪だから踏み出さずに南城の理性崩壊をじりじり待ってる短髪屋敷」です。

    #ジョーチェリ
    giocelli

    始まりの夜(デザワ黄色本ジョーチェリ)「流石に平手打ちはねーよなぁ。そもそも付き合ってるわけでもねーのにさ」
    「色っぽくて脚綺麗で、よかったんだけどなぁ。一回きりでお別れになっちまった」
    「出勤前に顔に紅葉模様、マジでかっこつかねーよな。スタッフも呆れてたし、本当に災難だったわ」
     生返事をしながら、今夜はタイミングが悪かったなとため息が出る。複数の依頼の納期に文芸誌に連載中のコラムの締切が同じ週内に被った先週は忙しく、食事も出来合いの総菜や弁当で済ませていたせいで、いい加減舌が物足りなくて。
     ほぼ二十日ぶりに閉店後の店を訪れた俺を、幼馴染は嬉しそうに笑って迎え入れた。上等な白とアンティパスト数品を並べたカウンターに、エプロンを外し、コックコートのボタンを上から三つ外して勝手に並んで座ると、聞いてもいないのに最近バーで出会ってお持ち帰りした「尻は軽いくせに、独占欲がとプライドが強い」女への苦言を並べる。男女問わず交友関係だけはやたら広い男だ。他に聞かせる相手などいくらでもいるだろうに。
    「…その女はお前に真剣だったってことだろ」
    「だからそれが変なんだって。普通に考えればさ、真剣に付き合うつもりの男は初対面でホテルにお持ち帰りなんてしないってわかるだろ。それに俺いつも通りちゃんと言ったぞ?特定の相手作るつもりないんだって」
    「他の言動に勘違いさせるところがあったんだろ。…自業自得だ」
     複雑ながら、俺は内心この男に抱かれたその女に同情している。優しいクズというのも厄介なものだ。愛嬌のある甘いマスクに加えて自然体のレディーファーストにリップサービス、聞き上手に褒め上手。滅多なことでは怒らず、頭から否定もしない。愚痴や泣き言にも寛容。殴る、怒鳴るなど以ての外。
     けれども絶対に本気にはならない。肌を合わせるうちに情を移してくれるのではなどという期待は、すぐに粉々に砕け散る。今回当たったのは恐らく、自信のある大人の女ぶって遊んではいても根は純情のタイプだったんだろう。行為の間もずっと優しくされて恋に落ち、舞い上がった翌朝、「次」の約束を得られずに頭に血が上がったとういうところか。
    「まあ、そういうリスクは呑んで遊んでんだからいいけどさ。ヤリチンクズ、腐って落ちろなんて怒鳴られたら傷つくわ、流石に」
    「いい気分で飲んでる相手に品のない言葉を聞かせるな。酒が不味くなる」
    「そう思う?」
    「え?」
    「…俺はクズだって。お前もそう思うか」
     頬杖をついたまま、ほんのりと縁の赤くなった垂れ目がじっとこちらを見つめてくる。思わずばっちり目を合わせてしまい、一気に心拍数が上がったのを悟られないようにすぐに目を逸らした。
    「……本気の愛情が欲しいなら、他の男を探せばいい。だからちゃんと先に忠告してるのに」
     ぽつりとそんな言葉を吐いてワインを煽る横顔を盗み見る。どこか寂し気な表情も、くっきりと出た喉仏が上下するのも、大きく開かれた襟元から覗く厚い胸板も。見慣れているとはいえ、色気が強すぎて目に毒だ。アルコールのせいもあるのか、妙な気分になってくる。
    「…慰めてやろうか」
     気が付けば口から出た言葉に自分で驚いた。顔を左に向ける度胸が出ずグラスの中を見つめたまま、続く沈黙が気まずさに拍車をかける。
     クソ、早く何か言え。お前が優しいとか気持ち悪いんだけど、でも。今日の薫ちゃん優しい俺泣いちゃう、でも、なんでもいい。さっさとふざけた口調で茶化してヘラヘラと笑え。何故黙っている。
     妙な緊張感の中で続く沈黙に、苛立ちと羞恥と焦りと、今夜に限って自分を律しきれなかった自分への憤りが頭の中でごちゃまぜになって。そこそこ回っていた酔いがすっかり覚めてしまったのを感じたところで、漸くいつもは明瞭な声がぼそりと何か言った。
    「…ワイン」
    「あ?」
    「もうなくなったな」
     目を向けると、確かに二本目の白のボトルの中身はすっからかんだ。俺も久々に飲んだが、この男もぐだぐだと喋りながら結構飲んでいたらしい。
    「あー…久々に飲んだら結構眠いわ」
     首をぽきぽき鳴らしながら左右に振り、チェイサーのグラスを冷えた水で満たす。
    「…それ飲んだらタクシー呼んで帰れよ。明日も早いし、もう閉める」

    (クソが)
     一瞬怒鳴ってやりたくなったが、寸でのところで堪えた。いつもならこの量を飲んだ場合、虎次郎は二階に泊めてくれる。開店した直後、じゃんけんで勝った俺をベッドに寝かせて自分はソファーに寝たら身体が痛かったからと、散々文句を並べながら購入していた、そこそこの値段の来客用の布団は実質俺専用だ。
     布団だけではない。歯ブラシもタオルもコップも、自分では着られないサイズのスウェットの上下さえ。頼んでないの勝手に揃えていた。女とは、今回のように一度で切れなくてもホテルにしか行かないくせに。
     接待の席であからさまに下心を滲ませる上客が俺の手や腰を撫でる様子を、女達には死んでも向けないるような恐ろしい目で見て。強引に連れ出された真夏の海で言い出しっぺがやれと日焼け止めを握らせたら、面白いほどに目を泳がせながら適当な手つきで雑に塗って、逃げるように女をナンパに行った。爺どもの女流書家達ににするような扱いが嫌になって髪を切った時は、女達に浴びせかける白々しい褒め言葉の一つも出せないまま顔を強張らせ、微かに震える声で若返ったんじゃねえの、とだけ言って顔を背けた。
     そのくせ、本当にいつも何もしない。帰国して店を構えてからの五年間。このカウンタ-で酒を飲みながら虎次郎は聞きたくもない女との話をして、俺は興味のないフリをする。同じ夜の繰り返し。うんざりするほど平行線のままだ。
    「カーラ。…タクシーの手配を」
    『OK、マスター』
     バングルに指示を出して冷えた水を一気飲みすれば、喉と共に熱くなっていた頭も冷える。札入れを取り出して立ち上がり、カウンターに気持ち多めの紙幣を置いた。
    「…多い」
    「カーラの計算にケチをつけるな、正確だ」
    「俺も飲んだし食っただろ」
    「知らん、いいだろ別に。閉店後に作らせた分の割増しだ」
     そのまま立ち去れば良かったのに。背中を向けた俺は、何故かまた余計な言葉を吐いた。
    「素直に取っておけ。…また別の女といいホテルでも行けよ」
     背中を向けていて顔は見えないが。背後に漂う虎次郎の纏う空気が変わった。背中に穴が開くかと思うような、突き刺すような強い視線を感じた次の瞬間には、座ったままの虎次郎に腕を掴まれていた。
    「薫、」
    「なんだよ」
    「お前、明日のSには来んなよ」
    「…は?」
     飲み始めた時には久々にビーフする予定だから俺の雄姿を見に来いと上機嫌に言っていた口で何を言うのか。そもそもビーフ云々は別として、忙しいのが落ち着いたから久々に滑りに行くつもりだったのに。何様なんだと言い返して振り返るより、掴まれた腕に痛みを感じるほどでかい手に力が籠る方が先だった。
    「ッ…離せ、痛い」
     声を低めて凄めば、拍子抜けするほどあっさり解放される。座ったまま頬杖をついてそっぽを向く虎次郎の顔はよく見えない。今夜は一体なんなんだと、内心いよいよ途方に暮れた。明らかに何かがおかしい。俺も、虎次郎も。
     とにかく帰ろうと、足早に向かって大きく開いた木製のドアを、閉まる寸前で追いかけて来た大きな足のつま先が押さえて固定した。そのまま肩に手が置かれる。反射的に振り返ってようやく見えた幼馴染の顔は、四半世紀を超える付き合いの中でも一度も目にしたことがないもので。思わず息を呑んだ。
    「忠告はした。来るなら自己責任だぞ。…何するかわかんねーからな」
     初めて見た表情と同じ、聞いたことがないほど固いのに、どろりとした感情の滲んだ低い声。不意に笑いがこみ上げて来た。
    「…クズのくせに律儀な男だな」
    「え?」
    「俺相手にそれは必要ないぞ」
     どういう意味だと聞かれる前にドアを閉め、日付が変わってすっかり人気のない夜道をゆっくりと歩き出す。面食らった顔をした男はやはり追ってはこない。

     果たして俺は明日、幼馴染のいる廃鉱山へ向かうのだろうか。結局怖気づいて行かないのだろうか。今夜の俺は何もかもがおかしいので、考えたところで正常な判断は出来ない。明日になったら考えよう。
     ビーフの後の興奮のままに、廃鉱山の人気のない岩陰でだろうが、あの店の中だろうが。二階の広さに見合わないベッドで埋まった六畳の寝室だろうが、安いラブホテルだろうが、どこでもいい。
     今更忠告なんてされる必要もない。俺はもうとっくの昔から、クズのくせに臆病で律儀なお前に全てを奪われたいと思っているだなんて。そんな本音は、吐き出した白い息と共に夜空の中へ消えた。
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    norarikurari031

    DONEデザワ黄色本の初期設定チャラ南城×短髪屋敷にやられて書きました。あんまり本編との差が出なかった気がするんですが、楽しんでいただければ幸いです。
    内容的には「本命(短髪屋敷)の気を引きたくて女の話ばっかするけどいざ短髪屋敷がそういう気配を出すと臆病になっちゃう南城×そんな南城の本命が自分なの知ってるけど色々と癪だから踏み出さずに南城の理性崩壊をじりじり待ってる短髪屋敷」です。
    始まりの夜(デザワ黄色本ジョーチェリ)「流石に平手打ちはねーよなぁ。そもそも付き合ってるわけでもねーのにさ」
    「色っぽくて脚綺麗で、よかったんだけどなぁ。一回きりでお別れになっちまった」
    「出勤前に顔に紅葉模様、マジでかっこつかねーよな。スタッフも呆れてたし、本当に災難だったわ」
     生返事をしながら、今夜はタイミングが悪かったなとため息が出る。複数の依頼の納期に文芸誌に連載中のコラムの締切が同じ週内に被った先週は忙しく、食事も出来合いの総菜や弁当で済ませていたせいで、いい加減舌が物足りなくて。
     ほぼ二十日ぶりに閉店後の店を訪れた俺を、幼馴染は嬉しそうに笑って迎え入れた。上等な白とアンティパスト数品を並べたカウンターに、エプロンを外し、コックコートのボタンを上から三つ外して勝手に並んで座ると、聞いてもいないのに最近バーで出会ってお持ち帰りした「尻は軽いくせに、独占欲がとプライドが強い」女への苦言を並べる。男女問わず交友関係だけはやたら広い男だ。他に聞かせる相手などいくらでもいるだろうに。
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