【爆尾←心】メリバなのか?メモ大きな事件に巻き込まれ、多くのヒーローが負傷。命を落とした者も多く、その中に爆豪も含まれていた。尾白は一命は取り留めたものの、特徴的な尻尾と右足が消失。
尾白の意識が戻らないうちに、爆豪の葬儀は執り行われ。尾白に一方的な想いを寄せていた心操は、毎日のように尾白の見舞いに来ていた。爆豪のことをどう話したものかと思いながらも、一日でも早く目覚めて欲しいと願う。
漸く目覚めた尾白だったが、余りに弱々しく、更には視力までも失ってしまっており。心操は尾白に爆豪が死んだとは伝えられなかった。
何も見えない真っ暗な世界で、心操の手を取り、爆豪の安否を確認する尾白。思わず嘘が溢れる。
「酷い怪我だったけど、無事だよ」
その言葉を聞いて、尾白がとても嬉そうに笑う。
「良かった、早く治して会いにいきたいな、あぁでももう顔は見れないのか」
少し残念そうに、でも愛おしそうに微笑む尾白をみて、心操の胸が痛む。だがこうなったら、尾白の目が見えないのであれば、自分が爆豪になればいいと、嘘を貫き通すことを決めた。
それから暫くして。心操はペルソナコードを着用し、右手に包帯を巻き付けて、尾白の病室を訪れる。包帯は、触れられた時にバレないように。一応肉付きも変えた。
「おい」
心操から発せられる音は心操の声ではなく。その声に尾白はパッと顔色を明るくする。その様子に、尾白の爆豪への想いを大きさを見せつけられる。苦しい、だが自分で決めたのだ。
「くたばってんじゃねーだろうな」
そう言いながら、心操は包帯を巻いた右手で尾白の左手に触れる。尾白は慈しむように『爆豪』の右手を取る。両手で触れ、そしてその手を自分の頬へと当てがう。
「爆豪に負けてられないし、そう簡単にくたばってらんないよね」
口では軽口を言いながらも、手のひらに頬を擦り寄せ、柔らかく微笑む尾白。そんな尾白を見ていられず、心操は視線を外した。
その日から、定期的に心操は爆豪を演じるようになる。『爆豪』が会いに来るようになってから、目に見えて尾白は回復し、見えないながらもリハビリをしっかりとこなした。
ある日、『爆豪』が見舞いに来ているときに尾白が心操の所在を尋ねた。『爆豪』が心操は事務所から呼び出しがあって、今は席を外してると答えると、尾白はそうかと答え、少し考える仕草をみせる。
そして、あのね、と前置きをして、尾白は少し照れたように言葉を続けた。
「君のお陰で色々頑張れてるんだ。ありがとう、愛してるよ、『勝己』」
記憶の範囲では、ずっと『爆豪』呼びだったものだから、心操は強い衝撃を受ける。一緒に住んでいたのだから、その方が自然であるのかも知れないが。世間体というか、対外的なことを気にして、今まではきっちり『爆豪』と呼んでいたのかと。今『爆豪』と二人きりてあることを確認した上で名前呼びなのかと。諸々想いと考えが巡るが、余り返事に時間をかけては不自然に思われる。心操はなるべく平静を装いながら答える。
「それは俺の方だって同じだ。猿夫、愛してる」
自分の声ではない音で、好きな人の名前を呼び、愛を語る。これが自分の声なら。でも今尾白が求めているのは『心操』ではなく『爆豪』なのだ。心操はお呼びじゃない。
心操の答えに尾白は少し驚いた様子を見せる。『爆豪』の右手を取り、自分の頰へ当て、にこりと笑った。
「そんなに優しいなんて、『勝己』じゃないみたい」
尾白はそう言いながら、幸せそうに口元を緩める。『爆豪』は尾白の頬を撫でながら「怪我人相手だし、たまには……な」と少し不貞腐れるような音を含めて呟いた。それが嬉しいのか、尾白は更に笑みを深くした。
そんな風に、尾白の退院が決まるまで、心操は爆豪を演じ続けた。いや、退院してからも、もし可能であれば、目の見えない尾白をどうにかサポートできないかと考えていた。
尾白を送り届ける車の中。ぽつりと尾白が言う。
「俺のこと、気に掛けてくれてありがとうな。でももう大丈夫だから。君は君のための生活に戻ってよ」
思わず『爆豪』の声が荒くなる。
「テメェ、どういうつもりだ」
「その言葉の意味、そのままだよ。これ以上、君の優しさに甘える訳にはいかないんだ。『心操』」
いつから気付かれてた?
心操は言葉を詰まらせる。心操は車を路肩に止めると、ペルソナコードを外し一旦呼吸を整える。
「……っは……、いつ、から……」
「結構最初から」
そう言いながら、尾白は心操の方に顔を向ける。
「こう言うのも何だけど、俺、爆豪の手が好きだから……包帯を巻いてたって、違うのはすぐに分かったよ。でも声は爆豪だろ? そんなこと出来るの、心操くらいしか心当たりないし。心操、頻繁に様子を見に来てくれてたみたいだし。そうかなって」
何と言えばいいのか、言葉が出てこない心操に、尾白は更にネタばらしをしていく。
「それに結構一緒に住んでたけど、爆豪のことは一度も名前で呼んだことなかったんだ。もちろん、爆豪も」
「は?!」
尾白はしてやったりと言わんばかりに、歯を見せて笑う。
「だから照れもせずに、名前で呼び返してくれるなんて、爆豪じゃないなって」
なんだその理由は。あの時の雰囲気からして、名前を呼ぶ展開だろうが。てか照れもせずって、爆豪のキャラ解釈違ったっぽいな、いや今はそういう問題じゃない。心操は頭を抱えたくなった。
尾白は爆豪がもう居ないということに気付いて、知っていて、それで鎌を掛けたのだ。それなのに、心操はそれと気付かず爆豪を演じていた。どれだけ滑稽でみっともなかったことか。
「でも、凄く嬉しかった」
尾白はそう言って、今にも泣き出しそうなのを堪えて笑顔を作る。その表情が、心操の胸を締め付ける。
「俺ね、やっぱり爆豪が好きなんだ」
「そんなの、知ってる。解ってる」
心操は絞り出すように声を出す。
「散々甘えておいて今更だけど、でも、これ以上は、君の厚意に漬け込むようなことはしたくない」
尾白は一度深呼吸をして、話を続ける。
「心操のお陰で、爆豪が居ないことにも、ちゃんと向き合う時間が持てた。本当にありがとう」
心操は震える声で返す。
「俺は、尾白が好きだ。爆豪を好きな気持ちも全て含めた尾白の全部が好きだ。だから、爆豪になろうとした。そうしてでも側に居たかった」
尾白は首を横に振る。
「さっきも言ったろ。君の厚意に甘え続ける訳にはいかない」
「厚意じゃない。下心しかない。俺個人の私欲のために、俺は尾白の側に居たい」
尾白は困ったように眉を八の字に下げ、唇を引き絞る。漸く開いた尾白の口からポロリポロリと溢れたのは、僅かな光を含んだ音と心。
そんなこんなで、心操に言いくるめられた尾白は、心操の同居を承諾する。ただ心操の想いはどう受け止めていいか分からないと、最初に断わった。心操もそれは了解した。
一緒に住むようになり、心操は尾白の機嫌を直すときや、自分に甘えて欲しいときに『爆豪』になる。
「おい尻尾。こっち来いや」
「そうやって甘やかそうとする……」
そう言いながら、尾白は声の主に身を寄せる。
愛おしい人の声。でももうそれが、ちゃんと本人の音なのか、分からない。心操の作る『爆豪』の声。それは本当に『爆豪』?
心操が、あまりにその音で甘やかすものだから、尾白は少し悪戯をしたくなる。
心操に向き直ると、その頬をマスクごと両手で掴む。そして、音の出所に唇を寄せる。
「!?」
心操が声にならない驚きで、息を飲むのが分かった。尾白はくすくすと笑う。心操は慌ててマスクを外す。
「いま、の!」
「爆豪に!」
てな、感じで。最終的には絆されて心尾に落ち着くんだけど。
もうちょい爆尾感欲しいなwww(病室の件の辺りとかかな)
きっちり練るときは、もっと爆尾ちゃん増し増しにしたいね!!
ってメモ書き長ぇな!