昔の話 子供の頃から、僕、病弱だったんですよ。熱を出して寝込むのはしょっちゅうで、大きな病気をして死にかけたこと、何度もあるし。だから体力がなくて、重い鎧は着られないし、剣の腕前なんか、巷で評判のローレシアの王子とは比ぶべくもなく、だからせめて魔法でも覚えようかと、こっそり練習したりして。
あと、運も悪いんです。覚えてますか? サマルトリアのお城にね、宝箱置いてあったでしょう? 金の鍵じゃないと開かない所にあって、池に囲まれてて、そうそう、ロトの鎧が入ってた。あそこに鍵がかかってたの、僕があの池にはまって溺れそうになっちゃったからなんですよ。二度とそんなことないようにって。そうそう、旅に出て、ローレと合流しようと思ったのに散々行き違いになったこともありましたね。しまいにはハーゴンの呪いにかかるなんて、もう…。笑っちゃいますよね。
まあ、僕は昔からそんなだから、なるようにしかならないなって思ってて、死にそうになるのも初めてじゃないし、…なんていうのかな、この、世界を救うための冒険に出られただけで御の字っていうか、これは呪いにかかって死んでも仕方ないなって、…せめて、ふたりに呪いがふりかからなくてよかったなって、思ってたんです。
ねえ、もう泣かないで、ふたりとも。大丈夫だよ、これからは、呪いを受けたくらいで簡単に諦めたりしないから。これからも迷惑かけるかもしれないけど、よろしくね。