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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ11S、アーウィンとエレノアの昔の話。ユグノア城で、アーウィンが姫様を魔物から守ったらしいという話と、姫様はおてんばだったという話をしてる人がいて、かわいいなと思って書いた。

    #DQ11
    ##11S

    追いかけっこ「護衛なんかいらないわ。お父様直伝の、私の回し蹴りはなかなかの威力でね、魔物くらいいちころよ。だから一人にしてちょうだい。あなたは適当に仕事をしているふりをしていればいいから」
     これは、確か私が18の時、護衛隊長に任命されたアーウィンに言った言葉。
     アーウィンは、私の何人目の護衛隊長だったかしら。幼い頃ならともかく、ある程度の歳になったら、護衛なんかうざったいもの。私は、歴代の護衛隊長たちの隙をついて何度も城を抜け出したり隠れたりして、そのたび、護衛隊長は責任をとって交代した。
     そんなことを繰り返すうち、とうとうお父様が、国の中で一番有能な兵士を私の護衛隊長に任命したという噂を耳にした。その翌日に私のもとへ来たのが、アーウィン。
     私にそう言われたアーウィンは、目を丸くしたものの、すぐ真面目な顔になって、
    「それはいけません。姫様を命にかえてもお守りするのが、私の大事な使命です」
    と言った。今までの護衛隊長の中には、私がそう言えばこっそりサボる方もいたのに。
    (真面目で面倒なタイプが来ちゃったわね)
    と私は内心で舌打ちをする。でも、これはこれで、逆に都合がいいかも。また隙をついて、この人の目を盗んでうまく逃げおおせば、とうとうこの国で一番有能な兵士でも無理だったかと、お父様は私に護衛をつけるのを諦めてくれるかもしれない。
     でもアーウィンは手強かった。私がどこへ隠れても、たちまち見つかってしまう。「ここでしたか」と言って現れて、すぐ城へ連れ戻される。その度「どうしてわかるのよ」と文句を言えば、「姫様のことなら何でもわかります」とアーウィンは笑った。
     業を煮やした私はとうとう最後の手段に出ることにした。お城の倉庫には、実は、一部の者しか知らない、隠し階段がある。そこからこっそり外の森に出てしまえば、きっと見つけられない。そう思って、皆が寝静まった後、こっそりと部屋を出て、私は地下の通路を進んだ。抜け出た先は、森。木々の間のまっくら闇におもわず足がすくむ。
     大丈夫、大丈夫。いざとなったら魔物くらい、やっつけられるんだから。お父様に色々技も教わっているし。そう自分を奮い立たせながら一歩暗闇の中へ進んだその時、森の中に、ふたつ、赤い何かが光った。それは、私が今まで見たこともない毛むくじゃらの魔物の両の目。魔物は私を見て、ニンゲンかあ、と、世にも恐ろしい声で叫んだ。
     私はその声の恐ろしさに思わず地面にへたり込む。逃げなければと思うのに体が動かず、魔物はどんどんこちらに近づいてくる。魔物の足が私のすぐそばの地面の枝を踏み、パキッ、という音がして、思わず目を閉じた、その瞬間、ドシュ、という鈍い音がして。
     すぐに、魔物の、耳をつんざくような断末魔が聞こえて、やがて静寂があたりを包む。恐る恐る目を開けると、そこには、抜き身の大剣を振り下ろしたアーウィンと、みごとに真っ二つになって地面に転がっている魔物の姿があった。アーウィンは剣を鞘に収めると、すぐに私に駆け寄って、「姫様、お怪我はありませんか」と言う。
    「どうして」と泣きそうになりながら私が言うと、
    「あなたのことだ、次はきっと、夜の帳に紛れて外に出るのではないかと……ああ、姫様、もうこんな真似は二度としないでください、心臓がいくつあっても足りません。本当に無事でよかった。……さ、帰りましょう。立てますか?」
    そう言ってアーウィンは苦笑して、私の手を取った。
     私の顔をひどく心配そうに覗き込むあなたの目は温かく、優しい光に溢れていて。私はいまにも涙がこぼれ落ちそうになるのを我慢しようと、ぎゅっと目を閉じた。
     ああ、ここまで私のことをわかって心配してくださった方なんて、お父様とお母様のほかに、誰かいたかしら。
    「ごめんなさい、立てないの。腰が抜けたみたい。抱っこしてくれない?」
     私がそう言うと、アーウィンは、今までとは打って変わって突然狼狽し始めた。
    「だ……抱っこ!? いや、そんな、私ごときがしかし、……ええい、ままよ!」
    何かを堪えるような様子でそう言うと、アーウィンはぶるぶる震える手で私を抱え、ぎこちない動きで城へと歩き出した。
    「姫様、すみません、どうぞこのことはロウ様と未来の国王陛下にはご内密に」
    と、恐縮しきりといった様子で私に言うアーウィンに、私は首を傾げる。
    「そんなの気にしなくったって…それに、どうして震えているの」
     私がそう問うと、アーウィンは、さっき魔物を見事に一刀両断した勇敢な兵士と同じ人とは到底思えないような情けない声で、
    「姫様を、お慕いしておりますので、こういうことは、魔物と戦うより緊張するのです」
    と言って、ハハ、と力なく笑った。それを聞いて、私は、なんだか、ぽうっと、胸のあたりに火が灯ったような心地になる。ああ、そうだったの。こんなに迷惑をかけられても、それでも私を慕っているだなんて、……おかしな人。でも、すごく、嬉しいわ。
    「ねえ、アーウィン。私あなたのことが気になるわ、もしかしたら好きになっちゃったかもしれない。よかったら、このまま私の部屋に帰って2人でお話しない?」
     私がそう言うと、アーウィンは、「ええっ!?」と悲鳴のような声を上げて、ついに固まってしまった。私が微笑んでその頬にキスをすると、
    「ひっ、姫様! いけません! そのようなことを、軽々しくなさっては!」
    と、アーウィンは顔を真っ赤に染め上げる。私がおもわず笑ってさらにもう一度キスをすると、アーウィンは今度こそ、「駄目ですってば!!」と悲鳴を上げたのだった。
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