第30回松イチワンドロライ お題「目印」「目印」
「?なんだこれ……」
松本は自分の目線と同じ高さの位置にある小さな文字を見つけた。注意しなければ見落としてしまいそうな小さな小さな文字だ。
「SUKI……?」
松本の口からその言葉を聞いた一之倉は心臓が痛いほど高鳴るのを感じた。ここは一之倉の部屋で書いたのは一之倉自身だったからだ。誰にも分からないように、しかし松本の事は寝る時も起きる時もいつでも思い出せるように、彼の身長に合わせて書いた「目印」なのだ。
「なぁ、これって……一之倉が書いたのか?」
それを当の本人がアッサリと見つけてしまった。一之倉は自分の本心が分かってしまうのではないかという不安と、思わず松本が口にした「好き」という言葉が告白に聞こえた喜びとの両方で松本の問いかけにどう答えたら良いのかを考えていた……。
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