ロイドさんが帝国からの出頭命令に応じず、指名手配されてからしばらくが過ぎた。
特務支援課として活動する間に多くの人と絆を紡いだあの人には、たくさんの協力者がいる事は知って
いる。それでもやはりちゃんと食べているのか、たまにはベッドでゆっくり休めているのかと気になっていたところへ協力して欲しいことがある、なんていう連絡が来て飛んでいってみれば、開口一番、元気だったか、ちゃんと食べてるか、なんて聞かれて、それを聞きたいのはこちらの方だ、とがっくりと力が抜けた。
「……それはこちらの台詞です、ロイドさんっ。協力してくださる方がたくさんいるのは、知っていますけど…!」
「あ、はは。いや、ついな。大丈夫、俺たちは元気だよ。……会いたかった、リーシャ。協力して欲しい事があるのも確かだけど、それ以上にこうして会えた事が嬉しいよ。…君を危険に晒す事になるし、ちょっと、不謹慎かもしれないけどな」
「っ!…私も、会いたかったです。貴方が指名手配されてから、どれだけ心配したかっ」
「心配をかけてすまない。けど、キーアを彼らに渡すわけにはいかなかったからな」
「そういえば、キーアちゃんは…」
「ああ、アリオスさんと、安全な場所で待機してもらってる。自分も出来る事をやるって端末の扱いを学び始めたんだけど、あっという間に追い越されてしまったよ」
そう苦笑するロイドさんの顔はどこか誇らしげで、まるで娘を自慢するお母さんみたいだな、とふと思ったのでそう告げてみれば、何とも微妙な顔をされてしまう。
「お母さん、て。…そこはせめて、お父さんじゃないのか?」
「だってロイドさん、料理もお上手ですし。それに以前、あのビルで暮らしていた時には、ティオさんやキーアちゃんに色々と細かく世話を焼いてたイメージがあるので」
「うう。言い返せない。けど、お母さんはなあ」
少し拗ねたような顔でぶつくさと言うロイドさんの顔は年相応で、少しだけほっとする。
皆の希望だとか期待だとか、色々と大きな物を背負う事になってしまったけれど、彼はまだ二十歳になるかならないかの青年なのだ。
私自身、まだまだ未熟な小娘ではあるけれど、彼が背負った物の重さに潰されてしまわないよう、時には互いに息抜きもしつつ支え合えたらいい。そう思いつつ、力を借りたい事とは何かとロイドさんに切り出すのだった。