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    if魔 ジャズリドが働いてるカジノの話(ばびる傘下になる前)グロではないけど相応に物騒なのでご注意くださいまし〜〜

     その男は長いこと負けが込んでおり、カジノへのツケが膨れ上がっていた。返済期限はとうに過ぎている。ツケがきくのはお得意様だけと言われて調子に乗ってしまった自覚はあった。
     家財道具をはじめ売れるものはなんでも売ったがツケの完済には至らなかった。こうなったらやはりギャンブルに勝って増やすしかないと腹を括って店を訪れ、いまはポーカーテーブルについている。
     だがこの男、ギャンブルに対するセンスというものをどうやら持ち合わせていないらしい。
     わずか数枚になってしまったチップを見つめて男がぎりぎりと奥歯を噛み締めていると、金髪の小柄なディーラーが話し掛けた。
    「ちょっと一服してきたらいかがですか」
     カードをあざやかにさばきながら、ディーラーは人当たりのいい笑みを浮かべた。
     そう、そうだな、と男は曖昧に笑顔を取り繕い、席を立つ。わずかなチップを預けて、喫煙所へ向かった。

     喫煙所へ辿り着くと、黒髪で長身のディーラーが清掃に入るところだった。ディーラーにどうぞと促され、男は喫煙所のドアを開ける。
     重厚なドアを閉めると、ホールの喧騒が止む。ささやかに流れるクラシックに、換気扇の音がミスマッチだった。
     男に続いて喫煙所へ入ったディーラーは灰皿やテーブルの清掃を始めた。男は複数置かれている灰皿からひとつ選び、胸ポケットの煙草を取り出した。一本口にくわえるが、一緒に胸ポケットへ入れていたはずのライターが見当たらない。
     おかしいな、とジャケットやズボンのポケットにも手を突っ込むが見つからない。苛々ともう一度胸ポケットを叩いていると、ディーラーが声をかけた。
    「ライター、お忘れですか。お貸ししますよ」
     ディーラーは掃除用の手袋を外し、男に歩み寄りながらスラックスの後ろポケットを探った。男は苦笑いを浮かべる。
    「ああ、頼むよ。持ってきたと思ったんだけど」
    「落とされましたかね。どんなライターですか、見つけたらお預かりしておきますよ」
    「いやいや、つまんねえ100ビルライターだよ」
     ディーラーは男の目の前にやってきて、両手に包んだ銀色の塊を差し出した。男はくわえた煙草に手を添えて、ディーラーの手に向かって屈む。
     ディーラーの手が、わずかに上に逸れる。
     両手に包まれていたのはデリンジャーだった。

    「あ、お世話になっております、カジノ✕✕✕✕ですが……。はい、本日お話した件。いま完了しましたんで……あ、準備できてます? さすがッスねぇ。じゃあ裏口にお願いします。ええ、新鮮なうちに。」
     黒髪のディーラーが、電話をしながら黒い大きなゴミ袋を引きずって喫煙所を出る。雑巾やバケツも片手で手際よく運び出し、電話先の相手に「金額だけ早めに教えてくれます?そう、ほら月末処理があるもんで」と笑い飛ばした。

     店は間もなく閉店時間、客が帰り始めたホールに黒髪のディーラーは戻ってきた。
    「ジャジーおつかれ〜。終わった?」
     金髪のディーラーが、カードを整理しながら黒髪の彼――ジャズに声をかけた。ジャズは、ニヤリと笑ってその金髪を乱暴に撫でた。
    「滞りなく」
    「わ、ちょっと髪!やめてよ!」
     髪を乱されて少し膨れた小柄な彼――リードは、さらさらの金髪を慌ててなでつけた。それからジャズに親しげに寄り掛かる。
    「いくらになるかなぁ。黒字になればいいけどね」
    「どうだろうな、中年で痩せ型、喫煙習慣あり。目は裸眼だし良さそうだけど、トントンってとこかな」
     ジャズはポケットから小さなライターを取り出した。男からかすめ取っておいた安物の、通称100ビルライター。中身ももうほとんど残っていない。
     リードはそのライターを見て、ため息をついた。
    「あいつの遊び方、本当にセンスなかったよ。一緒のテーブルになった他のお客さんに悪いくらい。引き際もわからないつまんない奴の支払いなんか、これ以上待ってらんないよね」
     リードは冷たく笑って、整えたカードを片付ける。それからジャズに振り向いて、甘えるような声を作った。
    「今夜空いてる?」
     ざわつく胸をごまかしたくて。
     ジャズも、銃の感触が残る指先を持て余していて。
    「もちろん」
     ライターをゴミ箱に放り、ジャズの手のひらがリードの腰を撫で上げた。
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