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    hisame_ishi

    基本鍵ばかり。墓場。身内というか、知り合いというか、事情わかってるひと用あげ。鍵は頑張ってあてて。

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    hisame_ishi

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    千ゲン。闇鍋に提出しなかった、闇鍋用に秒で書いたし 闇鍋原稿の指標。人称の距離感とか、テンションとか、こんなかんじを統一しよー、ってかんじで指標にしました。

    がんばってるひと

     ふぁ、と欠伸をする。
     まだ朝晩は冷え込む春の日。風を遮りながらも日差しだけは天窓から採り入れる設計となっているこのラボは、少し肌寒い気がするものの、実に快適な環境が整えられていた。もう一月もすれば汗ばむ陽気の日が続き、その後じめじめとした梅雨もやってくるだろう。
     そう自然と考えたところで、そういえば三千七百年経ってもそれは変わらないのだろうか、と気付く。まだ、ゲンは目覚めてから四季を廻っていないのだ。
     ずいぶんと濃い日々を過ごしたせいか、まだあの断崖絶壁での目覚めから一年経っていないだなんて信じられない。今ゲンの斜向かいで作業をしている男と出会ってから、一年も経っていないのか。

    「千空ちゃーん。」
    「二百できたか。」
    「出来たと思うー?」
    「百三十ってとこか?」
    「ざんねーん。」

     ひたすら図面を引くその男に話しかけると、返ってきたのは任された作業の進捗確認であった。なんともつまらない男である。
     今ゲンの手元にあるのは、丁寧な仕事が必要なだけの単純作業。おそらく杠ならばもっと手早く出来る作業だが、今の彼女は布作業の統括をしながら、最もそれらを生産する職人でもある。他の作業に回すなど逆に非効率となるため、なんとなくゲンにお鉢が回ってきている。
     そう、たぶん、おそらく、きっと、理由なんてなく。あるいは説明できる理由がなく。
     
     朝一に頼まれてから昼食休憩を経て、今は午後の二時過ぎ頃だろうか。確かに二百のノルマを夜までにと考えると百三十は妥当なところだが、これでももう半年以上こんな地味作業を積み上げてきたのだ。スピードだって上がっている。

    「残り五十切りましたー。」

     はい、とたった今完成したばかりの品をてのひらに載せると、それを奪われて検分される。いや、そうするとは思ったけど一言くらいかけても良いのでは。

    「ほぉん……? 早いな。」
    「ご褒美くれてもいーんだよ?」

     いつでも待ってるよん、と言いながら完成品をその手から籠へ移して次のセットに手を伸ばしかけたところで、千空の様子が常と違うことに気付いた。どうしたの、と首を傾げたゲンの手元から、千空は作り始めようとした部品を取り上げて、それぞれの材料が入った箱に戻し、自分が広げていた筆記用具も整頓した。
     これはこれは。顔はいつも通りただ作業をしている無表情に近いもの。けれど目が、瞳の奥が揺れていて。

    「さっき欠伸してたろ。」
    「あー……したねぇ。」
    「眠いな?」
    「え?」

     眠いか眠くないかでいったらまぁぽかぽか陽気の昼下がりに誘われて、眠いかもしれないけれども。こんなの普通に我慢できるというか、春の午後には普通ではないだろうか。
     珍しい感情だな、と思ったけれども、これはひょっとして。こんな明るい時間にこんな千空に遭遇することなどなかったけれど、視界が明瞭だと、いつもこんな瞳を見れていたのかもしれないな。
     ゲンの予想が正しければ、これは。作業机を挟んだ向こうから、わざわざゲンの隣にまで寄ってきた彼は。
     
    「眠いな?」
    「あー……。」

     はいはい。そうだったそうだった。ゲンはとっても今眠いんでした。そういう事にするわけね、はいはい。
     先ほどと同じ表情で、同じ姿勢で、同じ言葉を繰り返した千空に、ふわ、と欠伸をひとつ返してゲンは笑った。

    「かなり眠い。」
    「よし、三十分だけ仮眠とっていいぞ。ついでに俺も寝る。」
    「わーい、おささまったらやっさしー!」

     顔に棒読みヤメロって書いてあるけど、そんなの無理である。
     ああ、かわいいなぁ。ゲンは緊急の用事以外は後にするように、いつも開けっ放しの研究室の入口の暖簾を下げてから、仮眠用のスペースまで憮然とする少年の手を引いた。二人寝っ転がるには少し狭いが、クロムと千空が二人で寝ているのを、ゲンは何度も起こしに来ている。千空には慣れたものだろう。
     千空とお昼寝なんか、始めてだ。それが、単純に司帝国との戦争中はそんな時間的な余裕がなかったということなのか、他の理由か。答えはまだ、出さなくていいはずだ。
     ゲンは麗らかな春の午後の空気を肺いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと瞼を下ろした。
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    hisame_ishi

    MOURNING誕生日何もしなかったので、監禁()のふたりなら?
    らくがき。ぽいぴくに直書きしてます。捕獲()完結後のネタバレ(予定だからこの方向にいきつくかはまだわからないけど……)を含みます。
    監禁()読まないと状況よくわかんないかも? 不親切設計。とりあえず同棲中です。
    「ねぇ千空ちゃん、仕事始めは?」
    「4日だ。」
    「だよねー。」

     予想された結果である。自分の誕生日を、仮にも入籍した相手が祝うとか思って……ないことこもないかもしれないが、その日を空けておく必要があるとまでは思っていないのだ。
     予想されていたことだ。だから、ゲンとしても予定通り動いていいということだ。

     ときは12月25日、復興後の世間においてもクリスマスというやつであるが、多少領有を争う島はあれど、島国故比較的穏便且つ早期に復活した日本という国においては、石化災害前と変わらずただの平日であった。今年は金曜だから、週末といえなくもないのだが。
     ただまぁ、そんなだから、今日も同居人はいつも通りの時間にお戻りだ。現在の時刻は夜9時前。遅くも早くもないだろう。特に年末に忙しくなる職種ではないから、どちらかといえば遅いくらいか。

    「俺は今日仕事納め~。」
    「ほーん。で、本職の方は?」
    「年末年始は引っ張りだこよ?」

     だろうな、と言ってリビングからコートをハンガーに掛け、手を洗っている男のため、温めていた夕食を皿に盛り付けた。
     なお献立はチキンシチューだ。白ではなく、黒というか 3389

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