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    hisame_ishi

    基本鍵ばかり。墓場。身内というか、知り合いというか、事情わかってるひと用あげ。鍵は頑張ってあてて。

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    hisame_ishi

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    誕生日何もしなかったので、監禁()のふたりなら?
    らくがき。ぽいぴくに直書きしてます。捕獲()完結後のネタバレ(予定だからこの方向にいきつくかはまだわからないけど……)を含みます。
    監禁()読まないと状況よくわかんないかも? 不親切設計。とりあえず同棲中です。

    「ねぇ千空ちゃん、仕事始めは?」
    「4日だ。」
    「だよねー。」

     予想された結果である。自分の誕生日を、仮にも入籍した相手が祝うとか思って……ないことこもないかもしれないが、その日を空けておく必要があるとまでは思っていないのだ。
     予想されていたことだ。だから、ゲンとしても予定通り動いていいということだ。

     ときは12月25日、復興後の世間においてもクリスマスというやつであるが、多少領有を争う島はあれど、島国故比較的穏便且つ早期に復活した日本という国においては、石化災害前と変わらずただの平日であった。今年は金曜だから、週末といえなくもないのだが。
     ただまぁ、そんなだから、今日も同居人はいつも通りの時間にお戻りだ。現在の時刻は夜9時前。遅くも早くもないだろう。特に年末に忙しくなる職種ではないから、どちらかといえば遅いくらいか。

    「俺は今日仕事納め~。」
    「ほーん。で、本職の方は?」
    「年末年始は引っ張りだこよ?」

     だろうな、と言ってリビングからコートをハンガーに掛け、手を洗っている男のため、温めていた夕食を皿に盛り付けた。
     なお献立はチキンシチューだ。白ではなく、黒というか、茶色の。このメニューからゲンの迷走っぷりを察して欲しいところである。冷蔵庫の憐れなビーフは明日科学の先生にでもローストされてしまえばいいのだ。

    「おっと。」
    「何か文句でも?」
    「面白いことになってんじゃねぇか。」
    「うるさーい。」

     テーブルに広がるのは、二人分の食事だった。
     いやでもクリスマスなのだ、クリスマス。逆になんでこの男は普通の平日のつもりなのだ。あのときはイヤに手の込んだ試験点灯なんかした上に、すっとぼけまでかました癖に。

    「ケーキはないんだな。」
    「今日ケーキ食べるような日だっけ?」
    「そうきたか。」

     なんでもないただの平日の癖に、どうしてか楽しげな千空を見ながら夕食をとり、ゲンはさっさと風呂に入ってソファでテレビを見ていた。まだテレビは高級品で、一家に一台に今少し届かないくらい。放送局もまだ4局。

     現在のゲンは、基本的には路上やステージでのマジシャン活動をしている。が、石化災害前からのそこそこの有名人で、世界復興計画の初期メンバーともなればネームバリューってもんがまぁそこそこに。もいうことで、テレビにもまぁまぁ出る。呼ばれれば行くくらいで、営業はしていない。はず。その辺りの詳細は事務所やらマネージャーに任せている。

     一方テレビの方はといえば、人々には年末年始の風物詩的特番の復活が待たれている。が、番組によってはメインのタレントさんが起きないと興醒めだという意見もあり、テレビ局が頭を悩ませている。もちろん、これを機に新たな風物詩になってやるという新進気鋭の番組もあるから、これも時代の流れというか、一種の世代交代だ。番組は生き物だから、新陳代謝よくしていかなければ生き残れない。ノスタルジーにすがってばかりではいられないのだ。
     とりあえずこの年末年始、ゲンが呼ばれたのはそういう新しい番組がメインだ。

     風呂の方から音がしているうちに、とパソコンから何人かに一斉メールを送り、とりあえずの準備完了。下書きにメール自体は作ってあったから、送信するだけだから時間はかからない。一応電源も落として何食わぬ顔をしておこう。
     別に、バレたところで「秘密〜。」と誤魔化すだけなのだけど。


     風呂から出た千空が冷蔵庫を開けたら、そこに眠っていたケーキを見て涙が出るほど爆笑したので、ゲンはまた今日も「この男が俺の一番じゃなかったらとっくに絶縁してるのに。」と悔しくなってしまった。
     いったいゲンは死ぬまでに何度そう思うのか考えると、今から憂鬱でしかない。


     * * *


     そうして来るは1月4日。この日は一日フリーにしていたゲンは、いつもどおりに出勤する千空を見送ったあと、準備にとりかかった。
     二人とも特に部屋を散らかす質ではないが、それでも年末年始という非日常にかまけて多少おろそかになった部分があるので、それらを片付けていく。といっても、玄関からリビングダイニングさえ片付ければ十分で、そこまで終われば買い出しだ。

     そうして一通りの準備を終えて、夜の6時には客を迎えて、みんなでわいわい鍋パーティー。準備を手伝って貰ったり、飾りとかをしてもらったりして、パーティーの開催自体はほぼ7時を回った頃だったけれど、案の定仕事始めの男はまだ帰らない。ゲンの予想では8時頃には帰ってくると思うが、はてさて。

    「千空のヤツ、いったいいつ帰ってくるのだ。」
    「いや〜、完全にただの平日のつもりだから、もうちょっとかかるかなぁ。」
    「貴様らは相変わらずだな。」

     今日集まったのは、コハク、ルリ、大樹、杠、龍水とフランソワ。遠方にいる羽京とクロムが欠席だ。彼らには先月のうちに「鍋の食材持って夕方5時以降集合」と送ってあった。フランソワちゃんには「龍水ちゃんが何言っても、一般家庭で調理できる、その日に消費しきれる範囲で!」という注文付きで。

     このメンバーなら、別に千空がおらずとも会話は弾む。だから構わずパーティーを続けていると、7時半には玄関から物音。まったく主賓扱いされていない主賓がご帰宅のようだ。
     みんなにクラッカーを素早く配り、ダイニングキッチンの扉が開いた瞬間──

    「「「ハッピーバースデー!!」」」
    「?」

     玄関からの時間がいつもよりかかっていたから、何かあるとは察していただろうが、これだけの人数がいるとは予想していなかったのだろう。さすがに目を剥いている千空に、ゲンはちょっとだけ満足した。
     まともに祝わせてくれないのなら、ゲンの好きなように祝わせてもらうのだ。

    「今日はただの平日とは言わせないよ千空ちゃん。」
    「大人しく我々に祝われるのだな!」
    「いや勝手に始めてんじゃねーか。」
    「千空くん待ってたら、いつまで経っても始められないからね。」

     長い付き合いの者達からの言葉に、更に顔をひきつらせた千空は、しかしどんな抗議も無駄と悟ったかひとつ盛大なため息を吐いて、鞄やコートを片付けに部屋に行った。このあとは、手洗いやらなにやらして、面倒臭そうにこの輪に混ざってくれるはずだ。

     宴会の口実だと思ってくれていい。

     ただ祝いたいだけだなんて、それを言うにはゲンは歳を取りすぎてしまった。


     * * *


     パーティー参加者は全員帰り、ゲンと千空は風呂にも入って、あとは寝るだけとなっていた。片付けはフランソワがてきぱきとやっており、家主がやるようなこともなく、なんとなく手持ち無沙汰だ。
     ゲンもやたら高かったテンションも落ち着いたらしく、静かにテレビを見ていた。

     それなのに、突然。

    「ねー千空ちゃん、俺は千空ちゃんのこと好きだけど、千空ちゃんは俺のこと好き?」
    「あん?」

     あ、やば、このポテチやばい。旧世界のやつと遜色ないんじゃない? 高かったけど買ってみてよかったー、と、さくさく食べながらテレビを見ているゲンが言った。本当に、なんの前触れもなく、突然に。
     どうした、と思いながらゲンを見るが、ゲンはソファに腰掛けている千空の右下方、ソファを背もたれにして机の上のポテチを頬張っているだけで、その後頭部からはなんの感情も読み取れない。
     惚れた腫れただの、好きだ嫌いだの話は今まで全くしてこなかったのだが、一体どんな心境の変化か。
     しかし、ほんとうに何も考えずにポロッと出てきたような口調で、この態度で。というかこいつは最近、家の中だとマジで何も考えてないんじゃないかとも思う。

     それはともかく、千空の答えは欲しいのだろうか。一応相応の答えは用意してあるのだが、求められてもいないのに、言うことでもない気がしている。

    「答えは欲しいか?」
    「え? 何の?」

     今さっき言ったことも覚えてないのか。これが本気なのかどうなのか千空では判別がつかないが。……まぁ別にいいか。

    「いつからそうだったか当てられたら教えてやるよ。」

     ギシギシと音が鳴りそうなくらいぎごちなく振り返る白黒に溜飲を下げた千空は、その赤い頬に手を添えた。
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    hisame_ishi

    MOURNING誕生日何もしなかったので、監禁()のふたりなら?
    らくがき。ぽいぴくに直書きしてます。捕獲()完結後のネタバレ(予定だからこの方向にいきつくかはまだわからないけど……)を含みます。
    監禁()読まないと状況よくわかんないかも? 不親切設計。とりあえず同棲中です。
    「ねぇ千空ちゃん、仕事始めは?」
    「4日だ。」
    「だよねー。」

     予想された結果である。自分の誕生日を、仮にも入籍した相手が祝うとか思って……ないことこもないかもしれないが、その日を空けておく必要があるとまでは思っていないのだ。
     予想されていたことだ。だから、ゲンとしても予定通り動いていいということだ。

     ときは12月25日、復興後の世間においてもクリスマスというやつであるが、多少領有を争う島はあれど、島国故比較的穏便且つ早期に復活した日本という国においては、石化災害前と変わらずただの平日であった。今年は金曜だから、週末といえなくもないのだが。
     ただまぁ、そんなだから、今日も同居人はいつも通りの時間にお戻りだ。現在の時刻は夜9時前。遅くも早くもないだろう。特に年末に忙しくなる職種ではないから、どちらかといえば遅いくらいか。

    「俺は今日仕事納め~。」
    「ほーん。で、本職の方は?」
    「年末年始は引っ張りだこよ?」

     だろうな、と言ってリビングからコートをハンガーに掛け、手を洗っている男のため、温めていた夕食を皿に盛り付けた。
     なお献立はチキンシチューだ。白ではなく、黒というか 3389

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    chirohipu

    DONE『えっちの下手くそな左馬刻様書きてえ』から始まりました

    スパダリではない、自分勝手でクソ自己中野郎だけど自分なりにじろちゃんのことを愛している不器用左馬刻様と、初めての経験でなにも分からず憧ればかりが先行するじろちゃんがステップアップするおはなし


    こちらはツイッターの企画『さまじろ逆真ん中バースデー』用に書いたもので支部にもアップしてます
    ジャンキーキャンディーナイト乱れたシーツ、互いが吐き出したものと汗の匂い、高くなった体温と冷めていく興奮。汗がひいて肌寒くなった二郎はブルッと身体を震わせて、毛布を手繰り寄せた。
    さっきまで暖かかった体温がなくなり、身体に巻きつけた毛布の中で二郎はそっと足の間のおさまらない熱をひと撫でする。
    「いたっ……」
    むずむずと駆け上がる熱を治めたいのに、そこを触るとひりひり痛む。得体の知れない感覚が腹の中で一頻り蠢いた後、小さくなっていった。


    山田二郎には恋人がいる。
    人生で初めて出来た、家族以外に大事だと思える人が。
    知る人ぞ知る、ヨコハマディビジョンの碧棺左馬刻。
    人よりも遅い初恋を迎えたのが高校生になってから。それも相手が男だったり兄の因縁の相手だったりと、二人が付き合うまでに一悶着もふた悶着もあってなんとか乗り越えて来たが、それはまた別の話。
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