Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    はまおぎ

    男女CP二次文
    📘https://www.pixiv.net/users/1154499
    📮https://wavebox.me/wave/7ia7akulf0gay9gt/
    💬@ysas_reed

    .

    ☆quiet follow Send AirSkeb request
    POIPOI 111

    はまおぎ

    ☆quiet follow

    呪専さしすう。季節感皆無。

    アイス 同期の男が、あちい以外の言葉を話せなくなっている。うだる夏、寮の談話スペース、ソファーの上。溶けた氷枕のように全身でだらけている五条の姿に、向かいに座る家入はメントールの煙草を一本吸いたくなった。
    「ただいま、二人とも」
    「おつかれー」
     ビニール袋片手に現れたのは夏油だった。家入が迎えると、夏油の陰から「こんにちは、硝子!」と、これまたビニール袋を提げて庵が姿を見せた。
    「歌姫先輩!」あいさつを返しながら、家入は取り出しかけていたタバコの箱をポケットへ押し戻した。
    「差し入れにアイス買ってきたの。みんなで好きなやつ食べて。早い者勝ちね」ビニール袋をローテーブルに置いて、庵が微笑む。
    「待って」
     五条が何かうなったのが聞こえたが、家入の横に座ってビニール袋を覗き込んでいる庵は気づいていない。夏油もビニール袋を置いた。こちらも中身はアイスだ。早い者勝ちとはいいつつ、庵は寮にいる学生全員に行き渡る分を用意したらしい。相変わらずお人好しだなあと、家入も庵の手元をのぞく。
    「何味があるんですか?」
    「いろいろあるわよ。シャーベットとカップアイスを何種類かずつテキトーに買ったから……、硝子はレモンシャーベットとかどう?」
    「あ、おいしそう。ごちそうさまです」
     ビニール袋から取り出したシャーベットに、木さじを添えて庵が手渡してくれた。両手で受け取る。
    「ちょっと待て」五条はいつの間か起き上がっていた。
    「夏油はお店で抹茶って言ってたよね」はい、と夏油にも庵がカップを手渡す。
    「あ、そっちに入ってたんですね。どうも、ごちそうになります」
    「おい、聞けっつの!」
     ローテーブル越しに行われるやりとりに割り込む勢いで五条が上げた声で、やっと庵が気づいた。彼女はビニール袋を広げて、五条に向ける。
    「アンタは何味がいいのよ?」
    「ストロベリー」即答した。「いや、聞いてほしいのは味のリクエストじゃねえし」
     庵が差し出すカップと木さじを受け取りながらも、五条の視線はじとりと夏油を突き刺している。
    「なんで傑と歌姫が一緒に買い物してんだ」
    「たまたまだよ」
     夏油が肩をすくめるのを見ながら、家入はカップの蓋を開けた。レモンのさわやかな香りが、冷気とともに広がる。
     夏油は任務帰りに、スーパーの近くで庵に呼び止められたのだという。みんなへの差し入れにアイスを買おうと思うから選ぶの手伝ってくれると助かる、という言葉とともに。
    「硝子たちの好みは分かるけど、下の子たちは見当つかない子もいるものだから。甘えちゃった」ありがとうね、と庵が夏油に笑いかけた。
    「差し入れもらっといて文句言うやつなんて、無視していいと思いますけどね」夏油も蓋を開けてアイスにありついている。
    「どうせなら喜んでほしいじゃない」
     そう言った庵は、残りのアイスをビニール袋へひとまとめにして、共用のキッチンへ向かっていった。冷凍庫にしまうのだろう。
     やっぱり先輩はお人好しだ、と家入は思った。
     庵が高専を卒業した今、ここを拠点に任務へ赴いているとはいえ、庵と在校生の関わりは格段に少なくなった。家入が庵と予定を突き合わせて休みの日に一緒に出かけることがあるのに対して、今の一年生などは庵と一対一で話したことすらない者もいるはずだ。それでもこうして庵は、後輩たちという集団にではなく、一人一人にできる限り心を尽くそうとする。
    「歌姫、次は俺の番な」
     空になったアイスのカップをテーブルに置いて、五条がキッチンに聞こえるように声を張る。もう食べ終わったのか。早くないか。家入の手元のレモンシャーベットはまだ三分の二は残っている。夏油の抹茶アイスだって、まだ半分はあるというのに。
    「アンタの番って何」
     キッチンから庵の声だけが返ってくる。なかなか戻ってこないのは、メモでも残しているからかもしれない。
    「こないだ硝子と出かけてたじゃん。で、今日は傑と買い物したんだろ?」
    「だから、それでなんでアンタの番よ」
    「……五十音順」
     いえいり、げとう、ごじょう。
     あまりに苦しいその言い草がおかしくて、家入は思わず肩を震わせる。木さじにのせていたシャーベットが、カップに滑り落ちた。見ると、夏油もカップをテーブルに置いて俯いている。家入には分かる、夏油も笑いをこらえているのだと。

    (2111070655)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖🍨🍨
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works