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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    五歌
    ×か→か、どちらにも収まりきってない感じ

    展翅 五条が教員室を覗くと、デスクに向かう庵の背中があった。よく見ればこくりこくりと体が揺れている。遠目に見ても船を漕いでいると知れた。
     気配を殺して抜き足差し足、彼女の背後を取る。
     五条は彼女の首元、黒髪の間に、人さし指をぷすりと挿し入れた。爪が当たらないように指の腹で、温かな皮膚に触れる。
     瞬間、庵の肩がはじかれたように跳ねた。
    「っひ」
     庵の首筋が、その反動で五条の指先に当たる。それがまたくすぐったかったのだろう。庵は五条の指から逃げるように肩をすくめた。
     構わずに指で、つ、と撫で下ろす。
     こしのある髪に隠されるうなじ。それを守るように覆う後襟を越えて、芯の通った背筋へ。己の指が少しずつ下へ下へと黒髪を分けていくのを、黙ったまま眺める。
     庵が背筋を弓なりに反らしても、五条はその指を庵から離しはしなかった。吸い付くように、彼の指先は彼女を捕らえ続ける。
     ついに庵は前傾姿勢で机に伏すに至る。首だけでぐいと振り向いた彼女は、「五条!」と威勢のいい声を上げた。
    「あ、バレてた」
    「アンタ以外にこんな趣味の悪いこと仕掛ける馬鹿、いないっつーの。見なくたって分かるわよ」
    「そう?」
     言いながら、薄っぺらい背中に添えたままの人さし指を垂直に立てる。そのまま押しこめた。少し爪を立てれば、布越しでも刺さる感触があったのか、白衣に包まれた背中が強ばる。
     ぎゅうと力のこもる肩甲骨。うつぶした庵の後ろ頭で、結ばれた白いリボンがふわりと踊った。
     この爪が頑なな白衣を突き破る。この指が柔らかな皮膚を侵す。夢想に五条の背筋は震えた。五条の指ひとつで無防備に縫い留められる、庵の姿。なかなかどうして刺激的な景色である。
    「悪くないよ」
     五条は指をそのままに身をかがめる。そうして、笑みをこらえた唇で白い蝶に触れた。

    (22.06.01 05:34)
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