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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    五歌
    玄関先から玄関へ一歩前進しました
    『ついついつられる』のあとの話

    じんじんしみる とりあえずタオル持ってくるからという庵の言葉によって、五条は玄関に押しとどめられた。ちゃっかり回収した焼酎の紙袋を片手に部屋の奥へと姿を消していく庵の背中を見送る。
     目元を覆う布を外し、濡れた頭を軽く振った。毛先から水滴がいくらか飛んで、足元の水玉模様を増やす。
    「アンタ、ごはんはー? 食べたの?」
    「いきなり団子食べた」
    「それはおやつでしょうが」
    「まあね。飯らしい飯は食べてない。腹も減ってる」
    「それ見ろ。んー、晩酌……豚バラあるし、おかず一、二品増やすか……。ごはん用意するから、アンタはその間にシャワー浴びなさい。そのままでいたら、いくらアンタが馬鹿でも風邪ひくでしょ」
     五条の来訪に嫌がるそぶりを見せていた庵は、そのくせ見え見えの罠に——五条が与えた焼酎いいわけに乗った。そうして一度受け入れてしまえば開き直るのか、あれこれと気配りを差し出してくれるのだ。
    「ひどいな。でも、なんだかんだ言って僕がここで風邪ひいたら歌姫が看病してくれるんだろ」
    「そんなことにならないように対処しろっつってんの」
     やりとりを繰り返すうちに、奥の方から聞こえてくるくぐもった声は再びクリアになった。庵が五条の目の前に戻ってくる。
     その彼女が、ほら、と五条に差し出したのはタオルだけではなかった。布、タオル地ではない。手に取って広げて見ればスウェットの上下だ。さらに、ぺそっと乾いた音を立てて足元に落ちたパッケージは未開封の下着だった。
    「落ちたわよ」
     言いながら屈んだ庵のつむじに、問いかける。
    「それ、歌姫が買ったの」
    「他に誰が買ったものが出てくると思うわけ?」
     立ち上がった庵は改めて下着のパッケージを五条の胸元に押し付けた。彼女に恥じらう様子はない。五条が身につける想定で下着を用意することは、今の庵にとって気負うことではないようだ。
     ここまで来たんだなあ。次なる目標は、アルコールいいわけがなくとも素直に戸を開けてもらえる——ってとこか。
     雨水で冷えていたはずの身体がじんと熱を持つ。
    「歌姫が言ってくれたら、ここに置く服くらい持ってきたのに。そのくらいのわがまま、かわいいもんだし」
     身を屈めて庵の顔を覗き込むと、彼女は唇を尖らせた。
    「言うか馬鹿」
    「また馬鹿って言った。ま、歌姫が用意してるってのも、進んで僕を受け入れてくれてる感じがあって乙だね?」
     隔てる布もレンズもないからには、二人の視線は直に交わる。庵は覗き込む五条の肩を押して「だから、元々はそんなつもりなかったっつの」と逃げるように距離をとろうとする。
    「ただ、お店で服眺めてて、アンタの服ってこれくらいだったな、とか思っちゃったのよ。そうしたら、つい。出来心で。魔が差して。で、服買うなら下着も、まあ、そろえないとでしょ」
    「そんな苦々しげに言うなよ」
    「服は私が着たときの余り方とか丈感とか肩のぶかぶかっぷりでなんとなく、五条のを着た感覚に近いなって感じたのを選んであるから。小さくて着られないってのはさすがにないと思う」
     ふうん、と相槌を打ったあとで、庵の発言が腹に落ちる。今この女は、私が着たときと言ったか。
    「えっ歌姫これ着たの?」
    「試着しただけ!」
    「着たんじゃん」
     五条に着せる服のサイズの目算を立てるのに、庵が自身の身体感覚を頼りにしたという告白。五条の服を身にまとった記憶が、しっかりと庵の肢体に刻み込まれているということだ。
     カーテンで仕切られた狭い空間に立つ庵の姿を想像する。鏡の前でオーバーサイズの服をまとい、袖をまくり裾をつまみ、余るウエストを押さえて、五条の体を思い返す庵。己の体に五条のスケール感を問いかける庵。
    「うわー……その試着室入りたい」
    「やめろ出てけ」
    「出るってことは一度は入っていいんだよね?」
    「店から出てけ。っていうか、店にいるならアンタが自分で試着しろ!」
     なかなかの勢いで頭をはたかれた。無下限の自動判定では除外状態だったし、屈んでいたのも仇となった。DV反対、とぼやきつつ、はたかれたあたりの髪をわしわしかき混ぜれば水滴が飛ぶ。それを見た庵が、アンタそうよシャワー!と慌てた様子で濡れた袖越しに五条の腕をつかみ、引いた。
     おとなしく彼女の誘導に従いながら、手を直につかまれなくてよかった、と思う。熱を彼女にもうつそうとうずいて火照る指先をひた隠しにしたまま、部屋へ踏み込んだ。

    (22.12.02 18:10)
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