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    nerikiri20

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    2023/04/01開催、黒と白のレゾネヰト展示作品の学スト小説です。
    また、boothには既刊芥敦本があります。
    よろしくお願い致します。

    booth
    『モノクロームと夜明け』
    https://12368721.booth.pm/items/3216529

    #芥敦

    独占スペシャルランチ 旧校舎の教室、くっつけられた2つの机の上。そこには、大量のパンが並べられていた。
    カツサンド、焼きそばパン、ピザパンといった食事系。アンパンやメロンパン、クリームパンといった甘いパン。それに一応体を考えてか野菜ジュースが2つ。
    敦はカツサンドにかぶりついていた。
    この学校の購買のパンは、近くのパン屋から仕入れている。とても美味しいのだが、人気商品となるとなかなか買えない。カツサンドもその一つである。
    値段にしては厚めのカツとソースの味、それからカレー粉で炒めたキャベツの食感がとてもいい。
    敦はカツサンドを食べ終わると、目の前の芥川を見た。
    芥川は2切れ入ったハムサンドの1切れ目を、まだ小さな口でもそもそと食べている。おそらく、全て食べ終わったらもう満腹だと言うだろう。
    「いつも思うけど、それで足りてるのか?」
    「心配する必要は無い。お前のように無駄に動き回ることも無いからな」
    「この前貧血で倒れて僕に運ばれたのは誰だっけ?」
    「……」
    「とりあえず、これも一緒に食べとけよ。今月のジャムパン、無花果ジャムと林檎ジャムだって」
    ジャムパンは季節によって中身を変えている。
    今月は芥川の好物の無花果だ。
    「頂こう」
    芥川はジャムのパンの一つを手に取った。
    敦は次にピザパンを選んだ。
    表面のチーズは固くなっているが、美味しさに変わりはない。
    これが普段の教室だったら、家庭科室のレンジを使用して温め直していた。
    しかし今日は旧校舎に連れ出されてしまっている。
    出入り自体は自由だが、電気やガスが通っていないこの校舎に近づく生徒はあまりいない。
    今日だって、二人きりだ。
    「……なあ、芥川」
    「どうした」
    「なんで急に連れ出したんだ?」
    今日、敦は他の生徒と昼食を食べる予定だった。それが大きなビニール袋を持った芥川に連れ出されてしまった。
    余談だが、芥川が購買で大量のパンを買った時ちょっとした騒動となった。
    少食病弱で有名な芥川である。そんな生徒が昼休みのチャイムがなった瞬間に購買に走り、混み合う生徒の隙間を縫ってパンを購入した。
    普段の芥川を知る生徒は驚き、年頃の子どもにたくさん食べて欲しい購買部の店員は喜んだ。ジャムパンは実はその店員のサービスである。
    芥川ははぁ、とため息をつくと野菜ジュースを一口飲んだ。
    「最近忙しかったそうだな」
    「あっ、うん。色々助っ人してて」
    敦は部活に参加していない。その代わり武装生徒会を通していくつかの部活の助っ人をしていた。サッカーやバスケのような運動はもちろん、最近では演劇部のスタントマンを頼まれていた。
    そしてそういう時、ちょっとしたお礼がある。
    もちろん金銭のやり取りではない。お菓子のお礼だったり、学食を一回奢られたりだ。
    貧乏学生の敦にはそれがありがたかった。
    「それと、僕と恋人になったことは忘れてないだろうな」
    芥川の言葉に、敦の白い顔がみるみる赤くなる。
    「なっ……忘れるわけないだろう! それと何が……あっ」
    芥川とは入学当初から色々と縁があったのだが、先月遂に恋人関係になったのである。
    ただ、恋人らしいことはあまりできてないことに気づいた。
    目の前の芥川をもう一度よく見る。
    いつもと変わらない、周りからクールだと言われる表情。
    しかし敦には、それが拗ねたような少し子供っぽい表情に見えた。
    「もしかして、寂しかった? あたっ!」
    額に軽く手刀が当てられる。
    「寂しがってなどない。ただ、恋人としての自覚は持てと思っただけだ」
    「ううっ、ごめん」
    「ふんっ」
    芥川はジャムパンに噛み付いた。はみ出て、唇の端に着いたジャムを拭って舐める。それだけの仕草が、芥川がすると敦を妙にドキッとさせる。
    「自分は恋人だってきちんと自覚してたつもりだったんだけどなぁ」
    「貴様は他所へ気を向け過ぎている。だから」
    芥川の顔が近づいた。
    あっ、これはキスだ。
    そう敦が確信した時、唇には既に温かく、甘いものが触れていた。ジャムの甘さでは無い、芥川自身の持つ、不思議な甘さだ。
    体温がじわじわと上がる。
    「しばらく、僕に独占されていろ」
    離された顔は窓の外に向けられてしまったが、髪の隙間から見えた耳は、敦と同じくらい赤くなっていた。
    「言われなくても、独占されてるよ……」
    残ったジャムパンを口に入れる。
    未だ甘い口の中。それが、ジャムの味であるのか敦には判断できなかった。







    Fin
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