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    yumemiduki1015

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    yumemiduki1015

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    たとえ自分を見てなくても構わない
    けして戻らない夢の中に願うのは…

    注意:こちらはナワマサというよりヘンマサ←ナワとなっています
    ナワーブが片想いのような状態です。
    また、マーサの手紙はもちろん、背景推理は彼女自身の物だという前提で書かれております
    違和感や違い点などはあるかもですが、あくまで当荘園では此方の解釈で描いておりますのでご了承ください

    #ナワマサ
    lemonSquash
    #傭空
    maidenhead
    #二次創作
    secondaryCreation

    泡沫の夢に願うのは「マーサが風邪?」
    午前中のゲームから戻り。医務室でエミリーから傷の手当てを受けながら聞いたその話に、ナワーブは少し驚いたように聞き返していた。
    「ええ。今朝起き掛けに熱が上がったみたいで。昨日から少し体調悪そうだったから気にしてはいたんだけど」
    テキパキと慣れた手つきで治療を進めながら話す彼女の話に耳を傾けながら、頭に浮かんだのはいつも凛として真っ直ぐな視線を向け自分の隣に立つマーサの姿だった。
    そういえば、確かに昨夜顔を合わせたとき少し疲れているように見えた気がする。
    「彼女。ここ最近ずっと試合に出ずっぱりだったでしょ。疲れが溜まってたのかもしれないわね」
    はい、おわり。と薬箱を片付け始めるエミリーに軽く礼を告げて手当を受けた腕を軽く回してみたりする。
    流石荘園一の医師。受けた傷が何とも無いというように違和感がない。
    「それでナワーブ君。悪いんだけど、この薬をマーサの所に持っていって貰えないかしら」
    「―――は?」
    突然の思いもよらぬ申し出に思わず間抜けな声が出てしまった。
    「私はこれから試合だし。代わりにお願いしたいんだけど」
    「……それなら俺より他の連中のほうが良いだろ?デミさんとかエマとかさ」
    「あら。何か不都合でも?」
    「いっ、いや‥そういうわけじゃねぇけど」
    弱って寝ているであろう仮にも女性の部屋に男の自分が伺うのはいかがなものかと思うのだが。
    「少なくとも、貴方なら弱っている相手を前にして襲うような真似はしないでしょ」
    そんなナワーブの想いを察してなのかどうなのか、エミリーはにっこりと微笑んだ。信頼しているのか釘を刺しているのかは分からないが、ともかくその笑顔から、断るという選択肢はないのだとナワーブは判断するのだった。

     エミリーから頼まれた薬と、一応起きた時に何か食べたほうが良いだろうと用意した食事を片手にナワーブはマーサの部屋の前に訪れていた。
    「マーサ。いるか?」
    コンコン、と軽くノックをして一応声をかけるも、それに返す返事はない。
    少し様子を見るも、特に変化もなかった。
    やはりまだ寝ているのだろうか。
    いきなりドアを開けて起きてた彼女の着替えに鉢合せ。なんていう何処かに有りそうな展開は避けておきたい。
    それこそ、眉間に銃口を向けられかねない。
    ナワーブは念のため「入るぞ」と、もう一度声をかけた後、静かにドアノブを回して部屋の中に入った。
     カーテンを閉めてる為か部屋の中はやや薄暗かった。
    シンプルながらもきちんと整理整頓され。それでも小さな小物などが置かれて何処か品が感じられる。
    その中で、壁際の机の上には彼女の愛用の信号銃と弾丸が幾つか置かれているのが視界に入った。
    手入れを終えてからベットに入ったのだろう。
    アンバラスのように見えて、どこか彼女らしいと思い、自然と頬が緩んだ。
     窓際のベットが少し盛り上がっている。やはりまだ眠っていたようだ。
    起こさないように足音を消して近づき、ベットの方をちらりと覗き見れば。マーサは静かに寝息を立てていた。
    熱のせいだろうか。頬は少し赤い。息遣いも少し荒く何処か苦しそうだ。
    ベットの傍にあるローテーブルに薬と食事を音を立てないようソッと置いて。もう一度、視線をマーサに落とした。
    いつもまとめている長い髪は当然ながら降ろしていて、少しウェーブの掛かったマーサの綺麗な亜麻色の髪がベットに広がっていた。
    どこかのロマンチストな奴等なら、まるで童話に出てくる眠り姫のようだ、などと表現したかもしれない。生憎自分にはそういう感性も、そんな事を云うような柄でもない。
    まぁ、実際そんなことを言われても彼女自身はあまり良い顔はしないのだろうが。
    だけど、いつもと違う彼女の姿に不思議とソワソワしてしまう。
    ナワーブの手が無意識にそっとマーサの前髪に触れる。
    柔らかい彼女の髪の感触が心地良い。
    早く良くなれ
    あんたが大人しく眠っていると、どうも調子がおかしいんだ
    「ん…」
    小さく漏れた彼女の声に、咄嗟に、起こしたか!?とナワーブは慌てて手を引っ込めた。
    だがしばらくしてもマーサが起きる気配はなく。そのことにほっと息が漏れた。
    「(何やってんだ、俺はっ‥)」
    らしくもない。本当に意味が分からない。
    折角休んでいる彼女の眠りをこれ以上妨げてはいけないと、今度こそ踵を返して部屋を後にしようと足を進めた。
    そのときだった。
    「‥てっ…いでっ…」
    「マーサ?」
    背中越しに聞こえた微かな声に、思わず足が止まって振り返った。
    マーサはまだ眠っていた。寝言だろうか‥。
    その閉じた瞳から、一筋の雫が頬を伝って流れ落ちた。
    「いかないでっ‥ヘンリー…っ」
    「――――ッ」
    ドクン。と、心臓が大きく波打った。
    まるで、真上から冷水を浴びらされたかのような感覚がナワーブの全身を支配する。
    そして同時に唐突に理解した。
    ―― 俺は、知っている――
    この、感覚を。感情を。
    苦しくて。悲しくて。だけど、どうすることも出来ない
    絶望と後悔の中で延々と繰り返す、消えることのない痛みを。
    夢の中で何度も願った。何度も、それが覆されることを願って、必死に手を伸ばした。
    だけど
    それはけして届くことはなくて―――‥

    だから、分かってしまったんだ
    彼女にとってその存在は…何よりも大切で

    ー生涯消えることのない愛しくも残酷な欠片なのだと―

    「(…あぁ…そんなの、敵うわけがない)」
    敵わないとは、何なのだろうか。
    頭の片隅によぎっていった言葉に自問するも、それに対する答えなど出ては来なかった。
    「おね‥がい‥」
    マーサの瞳から、また涙が一筋零れ落ちる。
    「行か、ないでっ‥」
    まるで縋るように伸ばされた手が、愛しい人を求めて宙を彷徨う。
    きっと、何度もこんな夜を過ごしたのだろう。
    虚しく空を切る手はそのままベットにまた落ちていく‥。
    だけど。落ちる前にその手は温もりに包まれた。
    「大丈夫だ」
    握った彼女の手が、小さく反応を返した気がした。
    分かっている。失ったものは、もう戻らない。
    こんなもの、何の気休めにもならないだろう。
    それでも。この一時だけでも。
    せめて、今。夢の中だけででも‥彼女の悲しみが癒されるなら。
    苦しみから、解放されるなら‥‥
    「…必ず戻るよ。だから、安心してくれ」
    泣いて苦しむマーサを、これ以上見たくなくてナワーブは彼女に語り掛ける。
    自分ではない誰かを演じて、言葉を紡いだ。
    「絶対に戻るから」
    声が届いたのかどうかわからないが‥。
    ナワーブは、そっと彼女の額に口付けた。
    昔。怖い夢を見たと泣く自分に母親がそうしてくれたように‥

    マーサの呼吸が少しずつ落ち着いていく。
    暫くすると表情も何処か安心した様子を見せた。
    それを確認して。
    ナワーブはそっと手を離すと、そのまま静かに部屋を出ていった。





    最初に目に入ったのは最近では見慣れた自室の天井だった。
    どれくらい眠っていたんだろう。
    体調を崩して寝込むなんて我ながら情けない。
    みんなにも迷惑をかけてしまった……。
    それでも、ゆっくり休めたおかげか随分と身体は楽になった気がする。
    まだ頭は覚醒しきれないままだったが、マーサはゆっくりと体を起こすと何気なく窓へと視線を向けた。
    カーテンの閉まったままの窓からは分かりづらいが、ベッドに入った時より日は大分高くなっているようだ。
    本当に……とても良く眠れた気がする。
    どれくらいぶりだろう。
    こんな穏やかな目覚めは…。

    荘園という命のやり取りを繰り広げられる此処ではどうしたって神経をすり減らす。
    名を変え身分を変えこの場所に演じている自分もまた同様だった。
    そのせいなのだろうか‥。
    いや、きっと違う。あの日から、自分はずっとそうなのだろう。
    眠ると、否応でも彼の夢を見る。
    体調を崩したときなら、尚更だ。
    『お願い…っ、いかないで…っ。ヘンリー!!』
    遠く、自分の元から消えていく。けして振り返らない、届かない彼のその背中を追いかけて……。
    伸ばした手はいつも触れることすら出来ずに地面に落ちていくのだ。
    何度も…
    でも、今日は違っていた。
    『大丈夫だ』
    項垂れる自分の手に温もりを覚えて、視線を上げるとそこに、彼がいた。
    光が反射して彼の顔は良く見えなかったけど、だけど今まで届かなかったあの人があの頃と変わらない優しい声音で私に告げる。
    必ず戻る、だから安心してくれ、と。
    夢なんだと分かっていても、嬉しくて、胸が一杯になった。
    現実は変わらない。この痛みが消えることはない。
    忘れるつもりもない。
    それでも、あの日以来初めて届いたその光景は、マーサにとって例え夢でも救われるものがあった。
    それが泡沫の夢だとしても…。

    「あら…?」
    ふと何気なしにベッドの横に置かれたローテーブルを見ると、テーブルの上に薬と食事が置かれていた。
    エミリーが持ってきてくれたのだろうか?
    どうやらライスプティングのようだけど…。
    仄かに薫るミルクとシナモンの香りに白の柔らかい色調がどことなく暖かさを感じさせた。
    これは、温めた方がいいのだろうか…。
    一瞬思考を巡らせるマーサだったが、シーツから抜け出しベットの端に座り直すと、テーブルを取りやすい位置まで引き寄せ、そのまま置かれたプディングを手に取った。
    ベッドの上でそのまま食事などはしたないと言われそうだが、今はそんなことを言うひともそれに従う必要もない場所にいる。
    マーサは一口掬い上げて口に含む。
    柔らかいミルクの甘さはどこか懐かしくて、ほっと息が漏れた。
    「優しい味…」
    子供の頃に食べたそれとは違い、初めて感じる香辛料の風味は、マーサ自身好きだと思った。
    初めての味なのに、どうしてか寄り添うように傍に感じて、安心する。
    暖かく、優しい味だ。
    「(そういえば……)」
    また一口掬い上げて口に含みながら、ふと、マーサは思い出す。
    夢の中で、彼の声の遥か後ろで、ほんの小さく重なるように声が聞こえた……ような気がする。
    いや、正直わからない。
    きっと気のせいだ。それぐらい曖昧で、小さな声だったのだが……
    「(どうしてかしら…)」
    悲しいのか‥苦しいのか‥愛しさがこもったような、あったのかも定かではないそんな曖昧な小さな声を、何故だかマーサはぼんやりと思い返すのだった。

    その声は、何処かとても身近で聞いたことがあるような気がした。
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    yumemiduki1015

    DONEたとえ自分を見てなくても構わない
    けして戻らない夢の中に願うのは…

    注意:こちらはナワマサというよりヘンマサ←ナワとなっています
    ナワーブが片想いのような状態です。
    また、マーサの手紙はもちろん、背景推理は彼女自身の物だという前提で書かれております
    違和感や違い点などはあるかもですが、あくまで当荘園では此方の解釈で描いておりますのでご了承ください
    泡沫の夢に願うのは「マーサが風邪?」
    午前中のゲームから戻り。医務室でエミリーから傷の手当てを受けながら聞いたその話に、ナワーブは少し驚いたように聞き返していた。
    「ええ。今朝起き掛けに熱が上がったみたいで。昨日から少し体調悪そうだったから気にしてはいたんだけど」
    テキパキと慣れた手つきで治療を進めながら話す彼女の話に耳を傾けながら、頭に浮かんだのはいつも凛として真っ直ぐな視線を向け自分の隣に立つマーサの姿だった。
    そういえば、確かに昨夜顔を合わせたとき少し疲れているように見えた気がする。
    「彼女。ここ最近ずっと試合に出ずっぱりだったでしょ。疲れが溜まってたのかもしれないわね」
    はい、おわり。と薬箱を片付け始めるエミリーに軽く礼を告げて手当を受けた腕を軽く回してみたりする。
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