THBD「おにーちゃん、来週のたいじゅくんの誕生日お祝いするの?」
「するの?」
「・・・はぁ?? っつうか包丁持ってるとき話しかけんなっていっつも言ってんだろ」
ごめんなさい、と素直に頭を下げた二人は顔をあげると、それで?と答え待ちの顔をしていた。
「あのさ、誰の誕生日っつった?」
「たいじゅくん」
「俺の知ってる大寿って一人なんだけど……学校の友達とか?」
学校の友達のお祝いを何で俺に聞くんだっつー話だよな、と明らかにおかしい気はしつつも一応聞いてみる。だって、なんで?
「おにーちゃん友達のたいじゅくんだよ」
「・・・なんでおまえら誕生日知ってんの?」
柴大寿が家を出たという話は初詣のあとに八戒達から聞いていたが、その直後に思いがけない状況下で再会して以来、たまに一緒に出かけたり、飯を誘ったりする仲になっていた。
話を聞いたところ、先日家に誘った際いつものように俺が飯の支度をしている間に、星占いの本を借りていたマナの相手をしていて(ルナは俺の手伝い)その時に聞いたらしい。知らねーよ。
「あー・・・じゃぁまた飯呼ぶか?って」
「ケーキ! 作る!」
「懐かしい写真でてきたわ」
「てめぇそんな油売ってやがんのか」
「分かってるって~~でもホラ!」
ついでにちょっと休憩しようぜ、と写真が納まっていた箱をテーブルに置き、そこにまだ出しっぱなしになっていた電気ケトルに水を入れた。
明日に控えた俺の自宅兼アトリエの引っ越し手伝いに来てくれている大寿くんは、キッチン周りの片付けをしてくれていたのだ。
「十年とか全然経ってるのウケる。あ、紅茶ねぇわ悪ィ。コーヒーでいい?」
自分のマグカップに入れたインスタントコーヒーの瓶を手に持ったまま、顔を見ると微妙そうに額にでっかい皺をよせていた。ま、入れちまお。
ルナマナによる柴大寿誕生会in三ツ谷家はなぜか翌年も開催され、その頃には友達以上な関係にはなっていたのでそれからずいぶん経ったものだ。
「二十四日、俺たぶんその辺休みいれれそうだし前日からどっか行く?」
先日の俺の誕生日はお互いというか俺が超絶佳境の案件を抱えていたので、なんにもしてくれるな!がプレゼントに欲しいとか言い出して一段落するまで音信不通にしていたのでちょっと申し訳なく思ってもいたのだった。(その後、時計をもらったありがとう)
俺が箱から出してた写真をつまみ上げながら、コーヒーに口をつけてまた皺寄せている。
「ちょっと調整中の商談で出てるかもしんねぇな……今年は夏休みちゃんと取って出かけようぜ。っつうかこの時のケーキ、なんか変わった味したよな」
「あー、」
笑顔でピースしているルナマナに挟まれて、微妙そうな顔が写真の中にもいた。
「これ、甘納豆入れたんじゃなかったかなぁ…」