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    human_soil2_oto

    @human_soil2_oto

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    DONEワードパレット:女教皇 直感 海 傷つく
    恋を証明せよ! 私の部屋には箱がある。

     貴方に言えずに呑み込んできたいろんな言葉を綴って折った、小さな紙がたくさん詰まった段ボール箱。
     時が経つほど嵩を増す中身は、ただのゴミでしかないはずなのに、捨てる気にはなれなくて。
     この箱が満ちるまで、貴方が私の心に気づかなければ、私は貴方とさよならするのだ。随分前に、そう決めた。

     貴方はきっと私のことなど大して好きではないのだろう。コイビトであるはずなのに、一番でも、唯一でも、特別でもないのだろう。それもそうだ。家族、友人、仲間たち……貴方の周りには私なんかよりずっと大切な人がいると、私はとっくに知っている。

     コイビトなんて肩書にはなんの意味はない。貴方が私に向ける言葉や仕草にだってなんの価値もない。貴方にとってはなんでもない言葉や仕草に、意味だの価値だのを見出して、宝物みたいに抱き締めて、小さな幸せに縋っているのは、私なのだ。何もかも私の勝手なのだ。期待しても裏切られるだけだと、飽きるほど繰り返したはずなのに、今度こそはと信じてしまうのも、悲しいくらい私なのだ。私を一番傷つけてくるのは貴方なのに、私を一番幸せにしてくれるのも貴方なのだと気づいた日の絶望を、貴方は理解できないだろう。
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    DONE
    ハートビートエンド 恋は「緩やかな自殺」なのだと、君は言った。

     だから、僕は今「緩やかな自殺」の真っ最中なのだろう。

     ◆◆◆◆◆◆◆

     僕が彼女に出逢ったのは、気が滅入るほど蒸し暑い夏の夜の雨の中だった。
     彼女は一本の樹の下に立っていた。なんの変哲もない、数えきれないほど並んでいる街路樹のうちの一つ。そこに、何時間も立っていた。風景と同化するように、無生物のように、「いる」より「ある」という表現のほうがしっくりくるように、ただ存在していた。

     何時間も、とは言ったが、僕は実際にずっと彼女がそこに立っていたのかを確認したわけではない。大学の授業が終わり、最近始めたバイト先に向かう途中で視界の片隅に映った彼女が、バイトからの帰り道でも同じ場所に同じ姿勢で佇んでいたから、そう思っただけだ。いくら夏で、夜でもそんなに気温が下がらないからといって、ずっと濡れていたら風邪を引くに決まっている。このまま通行人の一人として見て見ぬふりをすることもできたが、彼女を無視して家に帰ったら、すっきりしない気分のまま憂鬱な明日を迎えるような気がして、僕は彼女に声を掛け、彼女を雨から守るように傘を差し出した。
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