オムファタルの憂鬱 Side:H
友達が欲しかった。
たぶん、普通の人なら簡単にできるはずのそれがオレにはとても難しかった。
オレが笑えば、オレが話しかければ、オレが触れば、忽ち目の前の相手の瞳に星が灯ってしまうからだ。
その星は恋だったり、憧憬だったり、信仰だったりして、少なくともオレが欲しいものではなかった。
だからオレは凡人になりたかった。他人と普通に対等な友達になれる存在になりたかった。
この人間なら大丈夫じゃないかと、人を選んでみても、オレの期待は易々と打ち砕かれて、「ああ、また駄目だった」を繰り返す。なんてことないように、友達の話をする周りの人たちのことを、毎日酷く羨んだ。
求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。――マタイによる福音書 七章七節ー八節
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