タ莉はゲイツオブヘルで夜勤、リナや紅白が先に就寝した後、桂子が入浴している夜遅く。
ヘ"ヨネッタと了ンディは、鍛錬に使ういつもの屋上へ来ていた。
「プロポーズなら相手を間違ってるわ。予行演習だったら付き合ってあげてもいいけど?」
手すりに寄りかかってジョークを飛ばしたが、アンディは反論すらしなかった。
「この、招待状のことなんだが……」
手に持っていたのは、例のパーティの報せだ。
「……何も感じなかったか?」
「どういう意味?」
「この、支配人Hという主催……怪しいとは思わなかったか」
「怪しいわね。きちんと名乗りもしないなんて胡散くさい」
思いがけず即答され、アンディの目が見開く。
ベヨネッタは未だに不敵に笑っていたが、眼差しはどこか冷たい。
「逆に聞くけど、どうしてボウヤは怪しいと思ったの?」
「……見当違いかもしれないが」
改めて、文面を見直す。
「名乗り方に既視感があった。KOFの主催も、ある時期からイニシャルのみを添えて招待状を配っていたから」
「『キング・オブ・ファイターズを開催する、以上──』だったかしら?」
「KOFは、僕が知っている限りでは、最後まで平穏に終わった試しがない……主催が名乗らないのも、正体を隠すため、真の目的を悟られないためであることが多かった」
「これはパーティの招待状。格闘大会とはわけが違うでしょ」
「名前を伏せて多くの人間を集める動機は何だ?ウラが無いとは限らない。その考えは同じだろう?」
ベヨネッタは答えず、ふ、と一笑した。
「じゃあどうする?今からでも出席は取り止める?」
「……それは」
「堂々と言い出さないのは、単なる思い過ごしで、せっかくの楽しみを棒に振ったらいけないって分かってるからじゃない?」
「…………」
アンディも答えることはなく、屋上のフェンスに手を置いて嘆息した。
「やっぱり、深読みしすぎだろうか……」
「さあ?何も気付かないし怪しみもしない、鈍感な男よりずっとマシよ」
「……せめて、桂子には言っておくべきかな。リナや夕莉には伏せておくとして」
「その必要はないわ」
「──えっ?」
明らかな確信をもって、平然と言い放つベヨネッタに眉をひそめた。
「口に出さないだけで、不審を覚えてるのは桂子も同じってこと。そこまで能天気じゃないの」