俺を愛して欲しい ジークフリートさんが僕を腕の中に抱き込んで愛していると囁く。とても優しい声で、何度も。でもそれはジークフリートさんが僕を不安にさせない為に意識して云ってくれている事を僕は忘れちゃいけない。
言葉にするのが苦手なのを知っている。人付き合いも。僕の為にジークフリートさんは頑張ってくれている。無理しなくてもいいって思うけれど、じゃあこうして腕の中に居る事や愛していると伝えてくれる声がなくなったらと考えるとそれはとっても悲しい。
僕は自分がとてもわがままだと分かっている。分かっているけど、悲しいのや寂しいのが嫌なんだ。一番、嫌だから。
「……グラン?」
黙ったままじっとして居たら心配そうな声が耳元で聞こえる。すごく嬉しい。自分の事を考えてくれているのが。一緒に居られるのが本当に嬉しい。当たり前のように一緒に居られる。ここに居ればジークフリートさんは帰って来てくれる。
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