俺を愛して欲しい ジークフリートさんが僕を腕の中に抱き込んで愛していると囁く。とても優しい声で、何度も。でもそれはジークフリートさんが僕を不安にさせない為に意識して云ってくれている事を僕は忘れちゃいけない。
言葉にするのが苦手なのを知っている。人付き合いも。僕の為にジークフリートさんは頑張ってくれている。無理しなくてもいいって思うけれど、じゃあこうして腕の中に居る事や愛していると伝えてくれる声がなくなったらと考えるとそれはとっても悲しい。
僕は自分がとてもわがままだと分かっている。分かっているけど、悲しいのや寂しいのが嫌なんだ。一番、嫌だから。
「……グラン?」
黙ったままじっとして居たら心配そうな声が耳元で聞こえる。すごく嬉しい。自分の事を考えてくれているのが。一緒に居られるのが本当に嬉しい。当たり前のように一緒に居られる。ここに居ればジークフリートさんは帰って来てくれる。
「あのね、ジークフリートさんの事、大好きだよ」
顔を上げれば嬉しそうに目を細めている。会ってすぐの頃はこんな表情をするなんて思いもよらなかった。病院ではいつも苦い野菜を食べた時のような顔ばかりしてたから。
「ジークフリートさんが僕に愛してるって伝えてくれるの、本当に嬉しいんだ。言葉にしなくてもちゃんと伝わってるんだけど……でも、言葉にしてくれると、すごく安心する。だから、僕もちゃんと伝えたくて。突然云い出してもびっくりしないでね?」
ジークフリートさんは頷いて、腕の力を込めて小さくあぁと息をもらした。
「グラン、俺を愛して欲しい。ずっと、この先も」
腕の中で身をよじって、顔を近づけて。キスをして。何度もキスをして。
「うん、ずっと。約束」
唇で約束を封じ込めるようにもう一度キスをした。