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    ほんの少しハロウィン的な現パロルシサン

    「ハロウィン……」
     思わずサンダルフォンはそう呟き、その表情を見たルシフェルは微苦笑を浮かべた。
    「そう、ハロウィン」
     この地域はハロウィンより翌日・翌々日の万聖節と万霊節を伝統的に祝う習慣が色濃く、ハロウィンはさほど賑やかに過ごすことはない。どうやら外出もままならない昨今、子供達にせめて楽しみを与えてやりたいと小さな街の小さなこの店にもお願い事が回ってきたらしい。
    「数人ずつ、子供が訪れるだろうからほんの少しもてなしてやって欲しいと。しかし私はコーヒーの事ばかりで子供の喜ぶものがさっぱり分からなくてね……君に助けを求めたんだ」
    「そういう事でしたか」
     サンダルフォンはそのコーヒーを味わい、頷いた。相談料として香り高いコーヒーが飲めて、目の前でめずらしい困り顔を見せてもらえたのだそれはもう頼まれるしかないのだ。
    「子供相手なら変に趣向を凝らさずにストレートに菓子の包みを渡せばいいと思います、いたずらされないようにね。俺がまとめて買ってきましょう。スーパーに行けば御誂え向きのものがきっとあるでしょうから」
     そうだった、ハロウィンはそういう楽しみ方だったねとルシフェルはようやく微笑みを浮かべる。子供が気軽に立ち寄れるような店ではない事を自覚しているのでそれならばと言葉を続けた。
    「サンダルフォン、君が迷惑でないのなら一緒に連れて行ってくれないだろうか。せめてドアの横くらいはハロウィンらしく飾り付けをしておかないと子供達もお菓子をねだりに入りにくいだろうから」
    「ふふ、そうですね。では今からでも?」
    「勿論。表で待っていてくれないか」
     車に乗り込みサンダルフォンは腕時計で時間を確認する。週末の今夜、できればこのまま買い物を済ませた後も一緒に過ごしたいのだがなにか上手い理由を考えなくては。勿論、ただ一緒に居たいと云えば済む話だ、ルシフェルは喜んで頷くだろう。
    「サンダルフォン!」
     ドアを開けて助手席に乗り込んで来たルシフェルに慌てた声で名を呼ばれ、どうしたのかと首をかしげる。
    「夜間は外出禁止令が出ているのを忘れていた。君には申し訳ないんだが今から朝まで私と過ごしてくれないか?」
     街は再びロックダウンになり、店の営業制限や閉鎖が相次いでいる。その中でこの街の市民には夜間の外出制限が設けられていたのだ。
    「は……ははは!」
     思わず笑い声を上げてしまったサンダルフォンに今度はルシフェルが首をかしげる番だ。
    「俺は貴方と朝まで過ごしたくて格好悪くない理由を探していたのに……それを真っ先に云えばよかった」
     サンダルフォンに一緒に過ごしたいのは自分もだと云われ、ルシフェルの微笑みが深くなる。ハロウィンを理由にサンダルフォンを繋ぎ止めておけるのなら。
    「それならば、サンダルフォン。もっとわがままを云ってしまってもいいかな……万霊節の朝まで一緒に居てくれないか?」
    「……えぇ。貴方のわがままならなんだって聞きますよ、俺も望むものならばね」
     幸せな週末が約束され、サンダルフォンは上機嫌で車を走らせた。万霊節の菓子も買おう。あの甘さはコーヒーによく合うからと。
     
     
     夕方近く、小さなかぼちゃのランタンに明かりが灯され子供達がその優しい灯りに惹かれておずおずとドアを開ける。カウンターの上にお菓子の包みを見つけて合言葉を云えば美しい店主の笑みと共にそれが手渡される。もう暗くなる、気をつけて帰るんだよ。寒くなるから暖かくしておやすみ。その囁きはまるで祈りの調べに聞こえ、子供達は祝福を受けたような心地で帰路についた。
    「おや、余りましたね」
     子供をもてなしている間、キッチンを借りて夕食を作っていたサンダルフォンはルシフェルの手の中を見た。
    「君にいたずらをしたいとか、君にいたずらをして欲しいとか考えていたんだが……私の恥ずかしい思いを見透かすように菓子が残ってしまって」
     正直に云うルシフェルに唇が軽く触れるだけのキスをしてサンダルフォンは菓子を取り上げる。
    「食事の前にベッドに誘いそうになるのでこの話は食事の後にしましょう?」
     自分の作った食事なら間違いなくベッドに誘うところだが。焦らされるという経験に胸を高鳴らせてルシフェルはサンダルフォンの作ってくれた美味しい夕食に感嘆の声を上げた。
     さて、いたずらはどちらが?
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    @mzr_sep

    MEMOほんの少しハロウィン的な現パロルシサン「ハロウィン……」
     思わずサンダルフォンはそう呟き、その表情を見たルシフェルは微苦笑を浮かべた。
    「そう、ハロウィン」
     この地域はハロウィンより翌日・翌々日の万聖節と万霊節を伝統的に祝う習慣が色濃く、ハロウィンはさほど賑やかに過ごすことはない。どうやら外出もままならない昨今、子供達にせめて楽しみを与えてやりたいと小さな街の小さなこの店にもお願い事が回ってきたらしい。
    「数人ずつ、子供が訪れるだろうからほんの少しもてなしてやって欲しいと。しかし私はコーヒーの事ばかりで子供の喜ぶものがさっぱり分からなくてね……君に助けを求めたんだ」
    「そういう事でしたか」
     サンダルフォンはそのコーヒーを味わい、頷いた。相談料として香り高いコーヒーが飲めて、目の前でめずらしい困り顔を見せてもらえたのだそれはもう頼まれるしかないのだ。
    「子供相手なら変に趣向を凝らさずにストレートに菓子の包みを渡せばいいと思います、いたずらされないようにね。俺がまとめて買ってきましょう。スーパーに行けば御誂え向きのものがきっとあるでしょうから」
     そうだった、ハロウィンはそういう楽しみ方だったねとルシフェルはようやく微笑 1789

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