ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第1話「茨の魔女の敗北」【初期版キャプション保存】
ヤンクロ第1話「茨の魔女の敗北」TEXT版
クロウリー学園長の過去話(捏造200%)を連載中。完走したら多分あちこち修正が入ると思います。(話が途中で矛盾したりするかもしれず…)
画像版だけ「第一章」って書いちゃったけど第一話ですね…。後々校正する都合でテキスト版もUPしました。今後はTwitterには文庫ページメーカー画像を投稿、こちらはテキストで行きます。
~*~*~ 本文(修正なし)~*~*~
轟音と共に鮮やかな黄緑の炎が吹き出し、橋の上を舐めるように走る。
その源には巨大なドラゴン。裂けよとばかりに開いた顎を閉じると、上体をそらし、振り上げた前足を力強く足下へと振り下ろす。筋肉の動きにつれて金属光沢を帯びた鱗がうねる。陽光を反射し輝くさざ波がドラゴンの体表を走る。
地響き。
鋭く爆ぜる音とともに業火にあぶられた石橋に罅が入る。
そして不気味な軋み音。城門や橋脚に絡み付く茨が炎を吹き上げ、チリチリとよじれて灰になってゆく。
ゆっくりと、やがて雪崩れるように橋が崩れはじめる。
その崩壊の波濤を蹴って、走り寄る影があった。
轟音と舞い上がる土埃が未だ鎮まり切らぬ中、ドラゴンの目前に凛として立つ青年の姿があった。
ドラゴンの黄緑の瞳が驚きに見開かれる。
頭を引き、顎を開いて炎を吐かんとしたその時、業火より一瞬早く、一筋の光が閃きドラゴンの喉元へと吸い込まれていった。
世界が静止した。
実際にはほんの一呼吸あるかないかの時間。
激闘を見守る「彼」にとっては永遠にも思えた瞬間。
頭を大きくそらしたドラゴンの喉元には輝く剣が深く深くのめり込み、柄を握った青年が全体重を乗せて貫き通せとばかりに押し込んでいる。
貫いた者と貫かれた者。その姿勢のまま、戦う両者は危うい均衡の中にいた。
永遠にも思えた刹那はゆっくりと崩れた。
ドラゴンの巨躯が静かに傾ぎはじめ、やがて加速して大地へ斃れた。
今一度の轟音と振動。そして耳の痛くなるような静寂。
驚きを浮かべたままの瞳からゆっくりと緑光が薄れ、薄く膜がはったような濁りに覆われてゆく。
戦いは終わった。
彼の主は死んだのだ。
呆然と見守る彼に気づくこともなく、青年は剣を引き抜き、灰となった茨を踏んで城門をくぐる。
愛しいオーロラの元へとゆくのだろう。
早くも城の中からは人々が目覚める気配が伝わってきた。
もうここにいる意味はない……。主は討ち果たされたのだ。
彼、大鴉のディアヴァルは深い悲しみと失意を胸に、翼を広げた。
どこへ行くあてもない旅の始まりだった。