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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
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    銀鳩堂

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    ヤンクロ11話「フィリップ王子、来(きた)る」TEXT版
    ローズが倒れるしばし前に話は戻る。ローズが走り去ったあと、三妖精は森の中へと彼女を探しに行ったのだが、そこで出会ったのは思いがけない人物だった。

    ※クロウリー学園長の過去話(捏造200%)連載中。このパートのインスパイア元は映画「マレフィセント」。映画ネタバレあり。捏造多め。今回は、大鴉のディアヴァルの出番なし!何でも許せる人向けです。

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー
    crowley.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第⑪話「フィリップ王子、来る」「ローズ! ローズ!? どこにいるの! 出てらっしゃい!」
     森に三人の妖精たちの声が響く。だが応える声はなく、呼びかけは虚しく木立に吸い込まれていくだけだった。
     どれほど探し歩いたろうか。三人は、まさかローズが城へ向かったとは思いつきもせず、見当違いの森の中を捜索していたのだ。
     そして彼女たちは、探していたのとはまったく別の人物と出会ったのだった。
     森の小道を、白馬にのった立派な身なりの青年がやってきたのだ。こんな辺鄙へんぴな森の中に、こんな貴公子が何をしに……? 三人はいぶかしんだが、青年は気に留める様子もなく馬から降りると丁寧にお辞儀をした。
    「こんにちは。私は人を探しております。この辺で見目麗しい乙女を見かけませんでしたか? 名前はローズ。柔らかな陽の光のような豊かな金髪とすみれ色の瞳の乙女です」
     三人は、その場で凍りついたように動きを止め、顔を見合わせた。
    「私達はローズの養い親です。あなた、ローズをご存知なの?」
     フォーナの言葉に青年の表情がぱっと明るくなる。
    「なんと運が良い! これは運命かもしれない。はじめまして。私は隣国の王子、フィリップと申します。私はローズに結婚を申込みに参りました。私とローズは愛し合っているのです。彼女に会わせては頂けませんか?」
     メリーウェザーが驚きのあまり口元に手を当ててのけぞった。
    「まあ! まあまあまあ!! なんてこと!」
     フォーナが胸元に両手を組んで、涙ぐむ。
     その驚き振りを見て、フィリップは少し顔を曇らせた。
    「突然の申し出で驚かせてしまいましたね。でも私は真剣です。どうか結婚をお許し下さい」
     ここで初めて、フローラが口を開いた。
    「フィリップ王子、改めてはじめまして。私はフローラ。こちらの二人はフォーナとメリーウェザーです。よろしくおねがいしますね」
     三人はスカートの裾をつまんで優雅にお辞儀をした。王子が会釈を返す。フローラは言葉を続けた。
    「一つ、気になることがございます。王子は幼い頃からの婚約者がおいでだと耳にしております。なんでもステファン王の娘、オーロラ姫だそうで。彼女のことはどうなさるのですか?」
     するとフィリップ王子は、屈託のない笑顔でこういった。
    「オーロラ姫には申し訳ないのですが、婚約は解消させていただきます。姫とはまだ一度もお会いしたことがありませんし、会ったこともない人と結婚など、考えられません。私にはローズしかいないのです」
    「お父上はそれをご存知なのかしら?」
     すると、フィリップ王子は少し眉をしかめた。
    「父には、まだ話していません。けれど、必ず説得してみせますよ! 真実の愛の力で!」
     三人の妖精たちは、再び顔を見合わせた。
    (この子、大丈夫なのかしら……?)
     フローラがフィリップ王子に聞こえないよう、小さい声で言った。
    (でも、この子しかいないんじゃないの?)
     フォーナが小声で応える。
    (ちょっと軽すぎる気がするけど……。でも、今から他の男を探して真実の愛を育てるって無理があるわ)
     と、メリーウェザーが言った。
     残る二人の目に同意が浮かぶ。こっそりと目配めくばせしあって、三人はフィリップ王子に向き直った。
    「わかりましたわ。それでは、ローズにあわせましょう。彼女が同意するなら、私達も二人の結婚を祝福します」
     フィリップ王子が破顔一笑した。誰にも好かれるであろう爽やかな笑顔だ。
     と、そこに、もうひとり、木陰から現れた者があった。
     すらりと伸びた高い背。頭に生えた大きな角。厳しい目。
     マレフィセントだった。同じく、ローズを探し森の中を彷徨さまよっていたのだ。
    「まあ。あなた達、何をたくらんでいるのかしら?」
     マレフィセントの口から、突き刺すように刺々とげとげしい声が放たれた。
    「そんな、企むだなんて……!」
     メリーウェザーが抗議の声を上げる。だが、マレフィセントは肩をそびやかし、顎を上げて皆を見下げるような目線を送りつつこういった。
    「私にすら解けなかった呪いを、人間ごときが解けると思うの?」
     そんな言葉にメリーウェザーが噛み付いた。
    「真実の愛のキスなら、呪いを解くことが出来るわ! ここに真実の愛の持ち主がいるのよ。これで呪いは打ち消せるじゃないの! 邪魔しないで、マレフィセント。これ以上悪に手を染めるのはやめて頂戴」
     横で聞いていたフローラが静かに口を開いた。
    「マレフィセント。今、貴女『私にすら解けなかった呪い』って言ったわね。もしかして貴女、ローズにかけた呪いを解こうとしたことがあるの?」
     マレフィセントの顔に動揺が走った。思わずさっと衣の袖で口元を覆う。メリーウェザーがあとを引き取って言葉を続ける。
    「……そうなのね。可哀相な人。自分が犯した過ちを償おうとして失敗したのね」
     その言葉を聞いたマレフィセントの表情は一変し、険しい顔で叫んだ。
    「お前たちに何がわかるというの? 呪いは解けない! あの子は永遠の眠りにつく!! だって、人間の男に真実の愛などないのだから!」
     そしてマレフィセントは、皆をそこに置き去りにして森の中へと飛び込んでいったのだった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
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