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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第2部第2話
    今回はディアヴァルとグリムヒルデの間が近づいたいきさつについて書きました。
    ディアヴァルは第二部ではずっとカラスのままです。茨の魔女亡き今、魔法は使えず変身能力もない、グリムヒルデ(後の美しき女王)と会話もできない、ただ見守るしかできないカラスなのです。第二部の試みとして、徹底してディアヴァル視点で書いてみたいと思っています。(カラス小ネタあり。本文1644文字)

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部二話「ディアヴァルとグリムヒルデ」 ディアヴァルは、王を名乗る男が立ち去った後もグリムヒルデの家の回りにとどまって彼女を観察し続けた。
     うるわしい彼女の姿はいくらみても見飽きなかったし、留まったからと行って何か不都合があるわけでもなかった。そして何よりも、彼女を見ているだけで胸に湧き上がる喜びを感じていたかったのだ。
     彼は食べ物を探しに行く以外は彼女の家の庭にいて、彼女が出てきてくれないかな、と待ち続け、時々煙突にあがって中で声がしないか耳を澄ませてみたりもした。

     そんなある日、グリムヒルデが庭に出てきて井戸の水をんでいた。
     彼女はふと、手を止め井戸を覗き込むと、井戸端に咲いた花を一輪手に取ると、はらりと井戸の中に落とした。
     そして目を閉じ、祈りを捧げた。
    「あの方が迎えに来てくれますように…」
     その願いの言葉がディアヴァルの胸を波立たせた。
     彼は突然、抑えきれない衝動に駆られて舞い降りると、井戸の積石の縁に飛び降りた。
     グリムヒルデは、一瞬びくっとして身を引いたが、カラスが逃げないのを見て興味を持ったようだった。ディアヴァルは頭の羽毛をふわっと立て、小首をかしげて彼女の顔を見上げた。カラスなりの精一杯の親愛の情の表明だった。
     それが通じたのか、グリムヒルデは彼に話しかけてきた。
    「まあ! カラスさん、どうしたの? 人間の近くになんか来ちゃ駄目よ。優しい人ばかりじゃないのよ。捕まったら何をされるかわからないのよ?」
     ああ、なんて美しい声なんだ。ずっと話していて欲しい。
     ディアヴァルはうっとりと聞き惚れながら我知らず足を踏み出すと、彼女の側に近づいていった。
    「あらあら。人に慣れているのね。もしかして誰かに飼われていたの?」
     このときほど人の声で話せないことがもどかしかったことはなかった。
     貴女はとても綺麗です。貴女のことが気になります。貴女のことが……。
     いや、でも、そんなことを口にするなんて、果たして出来ただろうか?
     カラスのままので良かったのかも。こうしてすぐ側に来られたのだし。
     そんなことをぐるぐる考えていると、グリムヒルデが「もしかしてお腹が減っているの?」と聞いてきた。そうじゃないんです、そんなことじゃなくて……。
     だが、グリムヒルデは水桶を抱えて家の中へと入っていった。
     残念な気持ちでいっぱいになってその背中を見送っていると、扉が開いて、再び彼女が小屋から出てきた。その手には、パンを一切れ持っている。
    「ほら、お食べ。貴方、誰かに飼われていたのね。お腹が減って人間のところにきたのでしょう」
     ディアヴァルは、差し出されたパンを夢見心地で受け取って、ありがたく食べ始めた。味なんてわからないくらい気持ちが高ぶっていたけれど。でもそのパンはこれまでに食べた中でいちばん美味しいと、感じたのだった。
     その日から、ディアヴァルとグリムヒルデの距離は縮み始めた。
     翌日には、グリムヒルデはディアヴァルを手に乗せることが出来ると気づき、彼を家の中へと招いてくれた。
     さらに次の日には、グリムヒルデはおっかなびっくりディアヴァルの頭を撫でてくれた。
     もちろん、ディアヴァルは天にも昇る心地でうっとりと目を閉じ、なされるがまなになっていたのだった。
     急速に親しくなったグリムヒルデとディアヴァルだったが、あくまでもそれは、人間とカラスの間柄。ディアヴァルの想いはその小さな胸に秘められたままなのだった。

     だが、そんな日々も長くは続かなかった。
     ある日、約束通り王が現れて、グリムヒルデを王宮へとさらっていったのだ。
     ディアヴァルは彼らの後を追ったが、側近くに寄るチャンスはなかなかなかった。
     一般に、人間はカラスを嫌う。彼女の様に手を差し伸べてくれる人間はめったに居ないことを、彼は身を持って知っていた。
     だから彼は普通のカラスのふりをして、王宮の人間たちに見咎められないように彼らを観察することにしたのだった。



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    【本日のカラス小ネタ】
     野鳥たちは実は人間を良く観察しています。
     中でもカラスは、人間の行動を怪訝に思って観察することがあるようです。
     これは、他の(もっと賢くない)鳥たちには見られない行動かもしれません。他の鳥は、自分たちの安全や餌の確保の為に人間を観察することはありますが、人間の行為そのものに興味をもって観察してくることは無いように想います。
     以下に書く話しは体験者から直接聞いたのですが、なかなか面白い体験談でした。

     その人は農道のわきにバイクを止めて煙草を吸っていたのですが、そこにカラスが一羽やってきて、彼の吐き出す煙を目で追い始めたのだそうです。
     するとそこに、次々に他のカラスが集まってきて、何だ何だ?といった風情でみんなで紫煙を見物をはじめたそうです。そのカラスたちは彼が煙草を吸い終わるまで見物していたそうです。
     カラスたちが、彼が煙を吐き出す度にいっせいに煙を追って頭を動かしているのが面白かったという話を聞きました。

     私自身も、双眼鏡を覗きながら池に浮かんだカモを数えているときに、背後に視線を感じて振り向いたら十羽近いカラスにすぐ後ろから見物されていたことがあります。私が振り向くと、カラスたちは「見つかった!逃げろ~!!」と言わんばかりにわらわらと逃げていきました。

     リスク回避のために人間の挙動に気をつけているのは、野鳥のみなさん共通だろうと思うのですが、人間の行動をみて「なんだこりゃ?」という感じで寄ってくるのはカラス位かもしれません。やっぱりカラス、面白いです。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
    1634

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第3話
    後にクロウリーが学園長となるカラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第三話です。
    今回は王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の結婚式のシーンです。
    本文約1450文字+カラス豆知識約740文字のおまけ付き。今回の豆知識はカラスがお互いを確認する方法「コンタクトコール」についてです(資料リンクあり)。
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部三話「結婚式」 五月のよく晴れた朝、王城は晴ればれとした雰囲気に包まれていた。
     城のすべての尖塔に美しい三角旗がはためき、城門は春の花々を編み込んだ花綱で飾り立てられて開放されている。城門からは次々と来客が流れ込み、城はかつてない賑わいに沸き立っていた。
     今日は、この国の王が新たな王妃をめとる、その結婚の式典が催されるのだ。城の庭園は民草にも開放され、たくさんのご馳走と飲み物が振る舞われる。
     麗々しい式典のクライマックスは、正午の結婚の誓いだ。国の最も高位の聖職者がやってきて王と新たな王妃の誓いに立ち会い、この結婚に祝福を与えることになっている。
     その場には、もちろんディアヴァルも訪れていた。なにせ不吉とされてしまうカラスの身、あまりおおっぴらに姿を表すことはしなかったけれど、物陰から人々を観察し、ちらりとでもグリムヒルデの姿が見えないかと期待していたのだ。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
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