Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 55

    銀鳩堂

    ☆quiet follow

    ヤンクロ第二部17話
    姫の恋する相手は亡き王の仇の息子。姫の恋を許すことが出来ない女王はある行動に出た。(本文=約1800文字/豆知識=約800文字)

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑰話「姫と鏡」 女王グリムヒルデは城の自室にいた。
     目の前には、連れ戻されたスノーホワイト姫の姿があった。姫はきちんと風呂に入れられて、服装は王族としてふさわしいものに整えられていた。
    「スノーホワイトや。修行の日々、さぞ疲れたことでしょう。よく耐えましたね。これからは、また一緒に暮らしましょう」
     それを聞いた姫の顔は一瞬輝いたが、すぐにその輝きは曇ってしまった。それを女王は見逃さなかった。
    「姫や。お前は離宮で出会った青年のことが気になるのですね」
     それを聞いた姫が、驚いたように女王の顔を見返した。
    「これからお前に大切なことを教えなければなりません。お前にとって、とてもつらいお話になるでしょう。けれど、真実を知らねばなりません」
     女王の言葉を聞いた姫は、不安そうに問い返した。
    「おかあさま、つらいことって、どんなお話なのでしょうか?」
     女王は黙って姫の肩を抱くと、あの魔法の鏡の前へと導いた。
    「これは魔法の鏡。真実しか映しません。これから見せるのは、実際にあったことです。しっかりと目を開けて、よく見るのですよ」
     姫はいぶかしげな表情のまま、おとなしくうなづいた。
     女王は鏡に話しかけた。
    「鏡よ鏡、我が君が亡くなられたときのことを見せなさい」
     鏡の中に黄緑の炎が燃え上がり、それが消えるとそこには戦場の光景が映し出されていた。草原の至る所で武装した男たちが斬り合っている。その中に、一際ひときわ立派な軍馬にまたがった男の姿があった。
    「ごらん、あれが貴方の父上、国王陛下ですよ。これから起きることをしっかりとその目に焼き付けるのです」
     鏡の中の国王は馬上から戦場を見回し、剣を振り上げ号令をかけている様子だった。
     と、その背後から馬上槍ランスを構えた男が突進してくるのが見えた。馬のひづめの音に気づいたのか、王が振り返ったが遅かった。王の胸に槍が深々と突き刺さる。王の体はぐらりと大きくかしぎ、どっと馬から落ちると弱々しくもがき、すぐに動かなくなってしまった。
     ディアヴァルは姫の肩に置かれた女王の指が、強く握り締められていることに気がついた。その黄水晶トパーズ色の瞳には深い悲しみと憎しみが浮かんでいる。
     一方姫は、目を丸くして、ただただ圧倒されているように見えた。
     鏡の中で、馬上槍ランスの男が馬上に脚を踏ん張って立ち上がった。
    「見よ!汝らの王を討ち取ったぞ!!戦いを止めよ!勝負は付いた!!」
     彼は大音声で呼ばわると、あたりを威圧するように見回した。
     その声が聞こえた者たちは、驚いて振り向き、なかにはそのすきを突かれて、斬り結んだ相手にそのまま倒される者もいた。
     皆が、胸を血に染めて大地に倒れ伏す王の姿を見た。
     戦場いくさば喧騒けんそうが、倒れた王の周りから外へ向けて波紋が広がるように静まってゆく。
     馬上槍ランスの男は戦いが止んだ草原を見回すと、ゆっくりと馬を降り、倒れた王のヘルメットを剥ぎ取った。青ざめたその顔は間違いなく、姫の父王の顔だった。
     馬上槍ランスの男は、自分もヘルメットを脱ぐと王の顔を覗き込んだ。その顔は、スノーホワイト姫が知る誰かによく似ていた……。
     女王は、姫の肩をつかんだまま言った。
    「ごらん。あの顔を。あれが貴女の恋した男の父の顔です。貴女が出会ったのは、貴女のお父様を後ろから刺した卑怯者の息子。けっして恋して良い相手ではないのです」
     姫は両手で口元を覆った。その目にゆっくりと大粒の涙がふくれ上がり、ぽろり、ぽろりとこぼれ落ちた。大きな目からこぼれる涙をぬぐいもせずその場に立ち尽くす姫を、女王は優しく抱き寄せた。
    「貴女には、もっと早くかたきのことを教えておくべきでした。お父様の最期を見せるには、あの頃の貴女は幼すぎた。それでも、もっと早く教えておくべきだったのです。そうすれば、間違った相手に恋してしまうこともなかったでしょう。つらい思いをさせてしまった私を許しておくれ」
     姫は女王の胸に抱かれたまま、呆然とした表情でぽろぽろと涙を流し続けた。
    「さ、今日はもうお休みなさい。これからのことはまたゆっくり話しましょう」
     そういうと、女王は姫の背中を撫でてなだめてやり、涙を拭いてやると、自室へと送り出したのだった。


    【豆知識】
    今回の豆知識は、鎧の変遷についての記事紹介です。
    王の仇がヘルメットを脱ぐシーンですが、最初は面頬めんぼうを上げる、と書こうとしたのです。
    が、まてよ…時代考証的にそれはどうなんだ?と思って軽くですが調べてみました。
    このお話のインスパイア元はDのアニメ版白雪姫ですが、Evil Qeenの服装は概ね13世紀の物だと思われます。(これもいずれ豆知識を書きます。簡単に言うと13世紀前後の未亡人の服装とよく似ています)
    ならば、鎧の様式も時代を揃えなければ。
    というわけで、「ヨーロッパ 鎧 歴史」などで検索してみたのですが、14世紀以降の甲冑はたくさん引っかかるのですが、13世紀が見つからない(女王の服装について調べたときもそうでした)。
    ようやっと見つけた記事が以下のものでした。

    ⇨イメージとは異なる西洋甲冑のリアル!実戦・競技・パレードの3タイプを知らずしてデザインはできない?【CEDEC 2020】 https://www.gamebusiness.jp/article/2020/09/06/17576.html
    こちらの記事で、ヨーロッパの鎧の変遷の図解があって、それを見てこれは面頬は上げられないな、ヘルメットを脱ぐ形だな、と判断して本文の描写になりました。
    (この記事、画像引用元と思われる書籍がすごく良さそうなのですが版元切れで高騰してしまって、手が出せません。無念…!)

    ◆馬上槍(ランス/lance)の使用年代についての参考資料
    武器図書館:top>database>長柄>槍>ランス lance
    http://arms.cybrary.jp/db/longhandle/spear/lance.html
    使用された年代は6~20世紀ということで、13世紀前後なら実戦で使っても不自然ではなさそうと判断しました。

    戦闘方法の概略はWikipediaでいいかな…。
    ランス (槍) :https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9_(%E6%A7%8D)

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
    2646

    related works

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
    3128

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第3話
    後にクロウリーが学園長となるカラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第三話です。
    今回は王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の結婚式のシーンです。
    本文約1450文字+カラス豆知識約740文字のおまけ付き。今回の豆知識はカラスがお互いを確認する方法「コンタクトコール」についてです(資料リンクあり)。
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部三話「結婚式」 五月のよく晴れた朝、王城は晴ればれとした雰囲気に包まれていた。
     城のすべての尖塔に美しい三角旗がはためき、城門は春の花々を編み込んだ花綱で飾り立てられて開放されている。城門からは次々と来客が流れ込み、城はかつてない賑わいに沸き立っていた。
     今日は、この国の王が新たな王妃をめとる、その結婚の式典が催されるのだ。城の庭園は民草にも開放され、たくさんのご馳走と飲み物が振る舞われる。
     麗々しい式典のクライマックスは、正午の結婚の誓いだ。国の最も高位の聖職者がやってきて王と新たな王妃の誓いに立ち会い、この結婚に祝福を与えることになっている。
     その場には、もちろんディアヴァルも訪れていた。なにせ不吉とされてしまうカラスの身、あまりおおっぴらに姿を表すことはしなかったけれど、物陰から人々を観察し、ちらりとでもグリムヒルデの姿が見えないかと期待していたのだ。
    2210

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
    1634

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
    2445

    recommended works