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    渋谷デートするゆじゅ小説。冒頭だけ

    #悠順
    yushun

    渋谷デートするゆじゅ供養渋谷、センター街。

    雑踏、喧騒、人。様々な情報は嵐のように交差し、消えていく。
    時折、道路を横切るヴンとかき鳴らされる豪快なエンジン音に、壁際に立つ虎杖悠仁は肩をぴくりと跳ねさせた。

    「音デカすぎだろ……」

    少年が思わず零した愚痴は、すぐに都会の喧騒へと飲み込まれた。

    (やっぱめちゃくちゃ人いるよなあ、渋谷。)

    虎杖は今度こそ大きくため息をつく。
    待ち人はちゃんと自分を見つけられるのだろうか、と。

    穏やかな田舎から出てきた虎杖はこうした人の多い土地は未だに不慣れである。
    どこを歩いてもぶつかりそうになる上に、道も複雑で、位置情報アプリがなければ一瞬で迷子になると断言できた。
    待ち合わせ場所について数分、だんだんと華やかな土地に気圧されてきた頃、目の前に人影が2つ近づいてきたことに気がつく。

    「ねえ君高校生? ずーっと立ってるけどさ、ウチらと遊ぼない?」
    「いや、でも人待ってるんで。すんません……」

    クルクルと螺旋のように巻かれた派手な髪の女子2人が目の前に立っていた。
    年は、自分より少し上だろうか。華奢すぎる細腕に派手なバッグを抱えてニコニコと笑っている。

    「でもずっと立ってんじゃん。バックレ?ウケるわ」
    「えー!かわいそ! じゃあマジ暇でしょ?遊ぼうって」
    「い、いや……あの、」

    そもそもなぜ自分に?と疑問符を浮かばせる虎杖だったが、スラリと伸ばされた真っ直ぐな背と飴色の髪は、雑踏の中でも自然と人の目を引いていた。

    「ねー、なんでダメなワケ?」
    「いや、駄目っつーか……俺、待ち合わせで」
    「でも来ねーじゃん!いーからゲーセン行こーよ」

    ついに凶器みたいに伸ばされた爪がぎゅ、と腕に絡まって、さすがの虎杖も顔がひきつった。
    女性を雑に扱うのは祖父からやめろと強く言われていた事の1つだった。何とか優しく逃げ切ろうと会話をしてみるものの、鼻にかかるような猫なで声でぴえんだのぱおんだの、不思議な言葉を混じえてしゃべる女子はまったく聞く耳を持たないようで、ぐいぐいと強い力で喧騒の中に自分を引っ張っていく。

    「あ、あのさあ、だから俺待ち合わせでね?!」
    「アハハ!ウケるー!」
    「あ、アハハ~!マジで話聞いてくんないね、お姉さんたち~!!」

    「……楽しそうだね」

    ノイズだらけの雑踏の中に、凪のような声が落とされた。
    音こそ小さかったものの、その甘く澄んだ声には蒸し暑い東京の熱も氷点下にたたき落とすのではないかと言う程の冷たさが含まれていた。
    そのあまりの冷気に、3人が一斉に声の方を振り向く。

    白いシャツ、黒い髪。「どこにでも居そう」を体言したような少年がそこに立っていた。
    強いていえば顔の右側を隠すように伸ばされた髪が特徴的だったが、個性の街である渋谷ではそれすら平凡だった。
    髪で大半が隠されているものの、色の白い肌、長いまつ毛に縁どられた大きな黒い瞳といった中世的な顔立ちは、平均よりかなり整っている部類に入るだろう。
    無個性を繊細な額縁に閉じ込めたような少年。
    吉野順平こそ、虎杖の待ち人。そして恋人だった。

    「楽しそうだね、虎杖くん。友達?」
    「違う!違います!!」

    少年はスタスタと3人に近寄ると虎杖に真っ直ぐに問いかけた。表情は笑んでいたが、さらりと揺れた前髪から覗いた目があまりにも冷たくて、虎杖はすぐに絡みついていた女子の手を今度こそ振りほどいた。

    「あー君友達?ウチらさぁ、ゲーセン行くから一緒にくる?」
    「っつーかイタドリって名前なのちょー珍しくね?!ウケ「全然ウケないんで。僕ら行きますね、さよなら」

    シャットアウト。拒絶。
    吉野は冷たく吐き捨てるように別れを女子に告げると、虎杖の袖を掴む。そして言い終わるや否や競歩の如く雑踏へ向かって歩き出した。
    虎杖も急に手を引かれたものだから半ば転げそうになりながら吉野を追いかける。一瞬、置き去りのようにして別れた女の子が気になり、後ろを振り向きそうになったがすかさず吉野が握る手に力を込めたのでさすがにやめておくことにした。
    吉野は慣れた様子で群衆をかき分けるように歩いていく。自分一人では進むのだってやっとの喧騒の中を黒髪を揺らしてするすると進む吉野はまるで黒猫のようだった。

    「順平、怒ってんの?」
    「怒ってないよ」
    「いや、めちゃくちゃ怒ってんじゃん」

    否定してはいるものの、吉野が不機嫌なのは明らかだった。

    「引っ張んのはやめてよ。手、空いてんだけど」

    生死が隣り合わせの多忙な日々の中、ようやく取り付けた久方ぶりのデートがこんなスタートなのは嫌だった。手を繋ごうと声をかけると、ようやく前へ前へと歩き続けた吉野が足を緩めて振り向いた。
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