オモイビト一日の公務を終え自室に戻ると、艶やかな黒髪の後ろ姿が目に入った。
「邪魔してるぞ、ジェフリー王子」
ソファに座ったまま、振り向く彼女の名前はスザンナ・ランドール。
最も信頼できる相棒であり、最大の協力者、そして俺の婚約者でもある。
「やあ、来てたんだね。何か新たな情報でも手に入れたのかい?」
「いや、そういう訳ではないんだけどな。お前が忙しくしていると聞いて、ちょっと顔を見に来てやった」
「それは嬉しいな」
俺はスザンナの向かい側ではなく隣に座り、抱きしめようと手を伸ばす。
「スザンナ、元気だったかい?」
「わっ、よせ。いきなり抱き着こうとするな、この変態。私はお前の可愛い弟達じゃないぞ」
スザンナはするりと身をかわし、俺の腕は無残にも空を舞った。
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