偽善「ココ君、お金が欲しい」
「この何もない部屋じゃ稼げねぇな」
「じゃあ、殺し屋雇ってオレを殺すよう依頼して下さい」
「……タダでそれは出来ねぇし、第一マイキーがその殺し屋を殺して、依頼したオレも殺される未来しかないから無理だな」
「ココ君が殺されるのは嫌だ……」
「じゃあ、諦めろ」
膝に顔を埋めるようにして花垣は唸る。
オレはイヌピーの件もあるからなのか、梵天の他のメンバーの中でも比較的花垣の態度は柔らかいほうだった。花垣の言葉は冗談のような、冗談でないような微妙なところではあったが……。
ため息を吐くと武道は一瞬びくついたものの、不安気な顔をこちらに向ける。
「イヌピー君達は…………」
花垣が言葉を続けなくても、その後に続く言葉は知っていた。
「生きてる。それも元気にな」
イヌピー、ドラケンは花垣に救われた件があり、消息を絶っている花垣を探している。危うい橋を渡りそうになるたびに警告しているも彼らは聞き入れなかった。いつか、花垣の心配する未来が来るかもしれないが、彼に真実を言うつもりはなかった。
なぜなら、生きていると言った瞬間に、子供っぽい顔をするのだ。
「良かった」
元の花垣に戻ったような……それも、見せかけかもしれないが、彼のその顔が好きだった。そして、悪戯心がわく。
「情報料は?」
「今日はタダでくれたんじゃないんですか」
「タダな訳ないだろ」
膨れっ面をしながら、花垣は諦めるようにしてオレの頬にキスをした。柔らかく、暖かい感触……それがすぐに離れてしまうも身体は満足で火照っていく。
出来れば口同士でしたかったが、それはマイキーが許さず、まだ、死ぬわけにもいかなかった。
オレがイヌピーから離れたように、未来はどうなるか分からない。
少しでも花垣の未来が良いものに変わっていくのを願い、彼に嘘を付き続け優しく接するのだった。