そして再びワルツを 悪魔を、見たことがある。美しい人の姿をした、悪魔を。
「ボスは、どうかしています」
雪村が、仇のごとく伊藤をねめつける。日ごろのポーカーフェイスはなりを潜め、怒りが露わとなっていた。
「真経津晨のどこに、そこまでする価値があるんですか。どうしてまだ、奴を手に入れようとするんですか」
言葉が、呪詛のごとく紡がれていく。
「唯があんなことになったんですよ!?」
血を吐くような、雄叫びだった。長らく苦楽を共にした半身の、無残な末路。その姿が、雪村の脳裏に焼き付いて離れない。
「雪村、落ち着いて」
蔵木が、雪村をたしなめる。年下の同僚が激情に駆られた際、こうしてなだめるのが、年上の蔵木の役目だった。
蔵木の言葉に、雪村がもはやどうにもならない現実を思い出す。手をわななかせ、やがて爪が手のひらに食い込むほど強く握りしめた。そして、背筋を伸ばす。
「外の空気を、吸ってきます」
そう言った雪村の目には、やはり割り切れない感情が表れていた。
戸が閉まり、執務室に静寂が戻る。卓上の紅茶は、すっかり冷めきっていた。
「ボス、次は私が行きます」
低い声が、リノリウムの床に響く。
「今の雪村では、まともに御手洗と交渉できないでしょう。裏に、宇佐美主任もいます。下手をすれば、こちらが不利な条件をうっかり飲まされるかも」
年下の上司に、蔵木は続ける。
「しかし、雪村の言うことも分かります」
眼差しに批判はなく、ただ懸念だけがあった。
「ボスは、一体何をお考えなんです?」
伊藤は、答えない。
雪村が叫ぶ前から、眉一つ動かすことなく窓の外を見つめ続けている。外では、すべてを焼き尽くすがごとく太陽がぎらついていた。生と死が激しく交錯する、夏が始まる。
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平たく言うと、まふ←いと!(狂信者的な意味で)
捏造が多いので、アンハッピー・ホーリーグレイル決着前に書き終えねば…!