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    shido_yosha

    @shido_yosha
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    shido_yosha

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    保春の本堂町が妊娠したとき二人や周りはどう動くのか考えたかった
    あと富久田にあえて「世間的にありふれた幸福」を付与してみたかった

    「…マジで?」
    と富久田が驚きと困惑を混ぜた間抜けな声を漏らしたのは至極当然のことであった。
    「まじで」
    と頷いた本堂町の方も、喜びのなかに緊張を孕んだ面持ちをしている。
    富久田は、やはり信じられないという表情で本堂町の腹部を凝視する。
    「子供がいるの。そこに」
    「うん」
    「そっかぁ」
    ソファに腰掛ける富久田は、本堂町の手を引いて、自分の脚と脚の間に座らせる。小さな身体を後ろから抱きしめて、彼女の下腹部を両手で包む。彼の広くて白い手の甲に、本堂町も掌をかさねる。
    富久田は背広を着た小さな肩に顎をのせて、
    「聞いてはいたが、避妊してても100%じゃねぇんだな」
    「そうだね」
    「……ごめん」
    「どうして謝るの」
    「あんたに負担をかける」
    本堂町は、「馬鹿ね」と首を巡らせ、富久田の頭を撫でた。
    彼の方が遥かに体が大きくて、年齢も十歳上だというのに時々そんな気がしない。しょんぼりとうなだれる彼は、まるでペットの大型犬のようだ。本堂町は、
    「富久田は嬉しくない?」
    と尋ねた。すると、耳元にぼそりと、
    「嬉しいから困ってる」
    と返ってきた。
    本堂町は、こんなときに口にできる言葉を持っていなかったので、
    「お風呂入ろう、ふくだ」
    立ち上がり、彼の腕を引っ張る。
    「湯船につかって、あったかくして、ぐっすり眠る。私たちは明日も仕事があるんだよ」
    「えぇ。こんな時くらい休んでいいでしょ」
    「二人とも欠勤したらおかしいじゃない」
    「俺はともかく、あんたは身重なのに」
    「まだ身軽だよ」
    ぴょんぴょんとフローリングの上を飛び跳ねる本堂町。富久田はやれやれと腰を上げる。


    二人で話し合った結果、最初に相談したのは同じ名探偵を務める鳴瓢秋人だった。鳴瓢は始め彼らを問い詰める顔つきで、
    「ちゃんと避妊してたのか」
    と問うた。富久田と本堂町は、まるで親に叱られる子供みたいに頷いた。
    すると鳴瓢は目元を緩ませて、
    「なら、いいじゃないか。おめでとう」
    と言祝いだ。本堂町が、
    「いや、まだどうするか決めたわけでは」
    と慌てると、鳴瓢が驚いて、
    「堕ろすかもしれないのか」
    「それを含めてご相談を」
    「なんで俺に」
    鳴瓢はまた眉間を曇らせる。
    「んなのお前たちで決めることだろ。お前らは未成年でも被扶養者でもねえ。労働も納税もしてる、いい年齢の大人なんだ」
    「そうなんですけど…。いや、そうですね」
    「富久田は」
    と鳴瓢が同僚に水を向ける。
    「恋人を孕ませた男として、言うことは」
    「うん……」
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    shido_yosha

    DONE鳴+百。
    「同じ場所に辿り着いていたらいいですね」
     鳴瓢が目覚めたとき、視界に映ったのは、暗い足元と身体の前面を覆うチェスターコートだった。コートは鳴瓢の所有するものではなく、平素親しくする先輩の香水が香った。
     曖昧模糊とした意識で目線をあげる。どうやら誰かが運転する車の助手席で居眠りをしてしまっていたようだ。
     五人乗りの車両は現在夜の高速道路を走行しているらしく、右車線や前方を並走するのは普通車より運送会社のトラックのほうが多かった。
     隣の席へ首をまわす。短髪で端正な横顔が、テールランプに照らされて窓辺に頬杖をついていた。普段は皺がつくからと嫌がるのに、珍しく、ライトブルーのワイシャツの袖をまくっている。
    「……ももきさん?」
     鳴瓢が掠れた喉で呟くと、運転手はこちらを一瞥して、
    「起きたか」
    「あれ……俺なんでここに……」
    「はは、寝ぼけてるのか。湾岸警察署と合同捜査してやっと事件を解決した帰りだ。五日間不眠不休で走りまわって、犯人捕まえたとたん、お前、ばったりと倒れたんだぞ」
    「そうでしたっけ……でもこのまま直帰しないんですよね」
    「ああ。あそこへ向かわなきゃならないからな」
    「はい。あの場所に必ず行かなければならない」
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