かくしあじ お腹も満たされ暖かな陽だまりにまどろみたくなるような、そんなある日の昼下がり。昼食で使い終わった食器を片づけ終わったネロは、いつもより少し早めに夕食の準備に取りかかっていた。中央の市場で買ってきた新鮮なオスの宇宙鶏に、下味を揉みこんでいく。
そう、[[rb:誰かさん > ブラッドリー]]の大好きなフライドチキンを揚げるために。
ネロが夕食の準備をしている日から数日前のこと。ブラッドリーがまたもや忽然と姿を消した。どうやら北の魔法使い同士で小競り合い──魔法舎の被害は決して小さくはなかったが──をしていたところ、うっかりくしゃみをしてしまったらしい。
賢者とその魔法使いたちは皆またか、という顔をしつつも、心配そうな顔をする者、すぐに帰ってくるだろうと楽観している者、いつ帰ってくるか賭けをする者などと反応はそれぞれだった。ネロもくだらないことをするからだと呆れつつも、いつかの夏の思い出が蘇り、落ち着かないままブラッドリーの帰りを待っていた。
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