雨
森の奥でキャンプ中の僕と弟。
テントに打ちつける雨音は木々でおさえられているものの、パタパタと叩いて、少し肌寒い。
弟とは歳が少し離れているも、身長は同じくらいまで伸びてきている。
自慢の弟、と言いたいけど勉強嫌いなのが少々難かな。
「寒くない?」
「ん?うん。」
そして、家族の中で一番弱い存在。
「雨、上がるといいね。」
「別に、兄ちゃんと一緒だから気にならないし、雨の中でもいざとなれば帰れるよ。」
「今日は、そういうことはなしでキャンプしているんだ。子供会のキャンプだってこんな感じになったらって。」
「パンちゃんなら大丈夫じゃないかな?兄ちゃんは考えすぎのところありすぎるよ。」
はあ、僕が昔から考えてしまうのは、家族じゃないキミだよ悟天。
「悟天、あのな。せっかく二人きりなんだから、言いたいこともあったりするんだ。」
「学校成績?兄ちゃんが優秀だから俺がダメでも大丈夫だよ。」
「それだけじゃない。」
「トランクスのこと?そりゃ優秀だよね。兄ちゃんはトランクスのところ未だに大好きだしさ。」
「それは違うかな。」
「ビーデルさんもパンちゃんもピッコロさんも、トランクスも、兄ちゃんのことばっかりだからさ、俺のところは気にしなくてもいいよ。」
そういうところなんだよ、悟天。
「彼女も取っかえひっかえって、聞いている。」
「なんか違うんだもん、地球の人じゃダメかもよ。」
「これは聞きたかった、その彼女たちとはしたのかしないのか?」
「ちゃんとゴムつけてるしさ同意のもとだよ。そうじゃないと犯罪になっちゃうもん。兄ちゃんが聞きたかったのって、これのこと?キャンプなんてしなくても、俺さ家でも話ならするよ。」
そうじゃないんだ。
「兄ちゃんはさ、このままキャンプしてたらいいよ。俺、先に帰るから。」
「悟天。」
テントから出ていく、
違うよ、そういうことを言いたいんじゃないんだ。
僕は、昔から悟天のことを。
僕の気持ちも知らずに、どうしてみんな僕のことを勝手に決めて、僕はいなくなったほうがよかったのかもしれない。
兄ちゃんは、俺の気持ちを知らない。
勝手に結婚して
子供もいて
女と寝て
俺は、酔っ払った兄ちゃんに幼い頃に襲われてから
何度も何度も女と寝ても
何も感じない
声をあげる姿をみても
つまらない
今日のキャンプ、兄ちゃんに誘われて嬉しいはずなのに、質問されることは何?
ああ、この人は俺のことなんて何も考えていないってことだ。
そう、俺なんか家族の中でも一番弱いんだから。
雨の中、家に帰りたくなかった。
空を飛んで、どこか遠くにいきたい、
帰っても、母さんと住んでいるだけだから••••
泣きたい、涙も雨で流される。
俺がいない世界、
生まれない世界だったら、
兄ちゃんは優しく声をかけてくれたんだろうか。