甘えたい姫と、ため息を吐く従者 「ねえ、淡雪。私って頑張ったよね?」
「ああ、よく頑張った。ここんとこ働きづめだったからな」
東五の家は忙しく、珍しくへろへろの雛菊。従者の淡雪はそれを褒めるが雛菊は納得言っていないようでむっと淡雪を睨む。
「姫…?」
「足りない」
「足りないって…すごいすごい、さすが姫。雛菊だ。」
そう言って淡雪は雛菊の頭を撫でるがそれでも雛菊の機嫌はなおらない。
「…淡雪、そこ座って」
そう言って雛菊が示したのはソファー。
「?」
不思議そうな顔をしたまま礼儀正しく座る淡雪。少し距離を開けて雛菊も隣に座るとそのままごろん、と横になり頭を淡雪の膝の上に。
「ひ、姫…?」
「もうもう!疲れた〜!もう一歩も動けない!淡雪が膝枕してヨシヨシしてくれないと疲れが取れない〜!」
逆に清々しいほどの駄々の捏ね方…、甘え方に困惑を含めつつ淡雪は苦笑する。
「男の膝枕なんて固いだけだろう…」
「違うの!男の人の膝枕がいいんじゃなくて、淡雪のがいいの!」
「………はぁ、」
破壊力のでかい雛菊の言葉に重く淡雪はため息を吐く。
(…教育を間違えただろうか)
そう思ってしまうほど男、淡雪としては動揺を隠せないような言葉で。それを従者、淡雪として淡雪は取り繕った。
「えっ、えっ…?どうしたの?淡雪」
「…分からない、分からないか、姫には…はぁ〜〜…」
「???」
きょとんとさせ本当に何が悪いのかわかっていない雛菊。それにまた淡雪のため息は増していく。
「…というか、こんな風に甘えなくても普段甘やかしてるだろう。…夜だって、」
「そ、そうだけど!そうじゃなくて!…ただ、甘やかして欲しいだけなの。それだけ疲れたってだけで…。」
そう言って口を萎ませ、顔を赤くさせる雛菊にふっと笑みを溢すと淡雪は手袋を外すと指を雛菊の髪に入れ、手で髪を梳いた。
「仕方がないな、」
梳き、髪を一房を手に取るとその髪先に淡雪は口付ける。
「時間が許す限り甘やかしてやる」
だって仕事は終わったんだろう?と甘く微笑みそれに雛菊は分かっていないように満面の笑みを返し、困ったように淡雪は肩をすくめたーー。
-Fin-