「……ッ、ん……ぁ」
静かな部屋にあえかな声がぽつりと落ちた。細い音に合わせるように、爪先が白むほどに握り締められたシーツがカサついた音を上げた。耳を澄ませば、熱の籠もった弾んだ呼気と、しっとりと触れる肌の音も重なって、どこか甘さを含んだ音色となっている。
きっとそんな音を奏でる彼は気付いていない。必死に声を噛み殺し、吐息を漏らさないようにしていても、仰け反った喉からは絶えず緩やかに溢れている。
ゆっくりと響くその音にうっそりと笑っていると、目の前の唇がはくと動く。音もなく呼ぶその声を聞くために、顔を近づけた。ふうふうと息を零すその中に、ふわりと優しい音が混じる。いつもよりも幾段か高くなった声。二人だけの時にだけ聞ける特別なもの。
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