肋骨服と肉肉しい晩餐 果たしてこんな凶悪な魔術があっても良いものかと、ネアは荒んだ目で世界を呪っていた。
ふう、と、吐いた溜め息は重々しく、いつものソファの三分の二を占拠しつつ前に組んだ手はひたすらに逞しい。肩あたりの筋肉がみしりと鳴るたびに、怯えた伴侶が慌てて肩を擦ってくるので、ネアはなんとも物悲しい気分になった。
いま現在、ネアはとある愚か者が用意した魔術により、普段の可憐で儚い姿とは程遠い、筋骨隆々の大男にされてしまっている。
とは言っても、ネアを巨人に変えてウィームの街を破壊させるべしと用意されたものでは、ない。
ことの発端はいつもの如くジュリアン王子であった。
傘祭りの準備を控えたリーエンベルクに、厄介な葉書が送られて来たのは今朝のこと。知る人ぞ知る不思議な貸本屋のお知らせを装ったその葉書に潜んでいたのは、特定の男女の性別を入れ替えるという、文字にすればシンプルな祝福だ。
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