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    renri22

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    renri22

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    くるび100号のあれ

    「……いつまで経っても夕暮れのままですね」
    「ああ」
     眼下で膝枕に身を委ねた十郎が静かに答えてくださいます。夕暮れの朱に染まったその表情は、無防備でとても穏やかでした。この自分の前だけで見せてくださるものです。
    「十郎、これは夢です」
    「そうか」
    「……おかしいと思わないのですか」
    「夢なのだろう」
    「ですが」
    「君が夢だと言うのなら、きっとそうなのだろう」
     それに、と十郎は続けました。
    「夢でも現実でもどちらでもいい。君がそばにいてくれるのなら」
     つい笑い声を漏らしてしまいます。十郎の少し乱れた前髪をかき上げてさしあげました。
    「またそんなことを」
    「本心だ」
    「ですが、このままずっと朝にならなければお困りになるでしょう」
    「僕は困らない」
    「まあ」
     白く形の良い額に触れるだけの口づけを落とします。十郎は目を細めました。

     十郎。
     どうかもう少しだけ。
     あなたと終わらない黄昏れに身を委ねる夢を見させてください。
     このまま時が止まれば良いと願ってしまうことを許してください。
     あなたの平穏な日々を誰よりも望んでいるはずなのに。

     一日でも、一分でも。
     たとえ一秒でも長く。
     ずっと、ずっと一緒に。
     このまま。

    「夜美」

     あなたの優しい声に身を委ねていたいのです。

    「はい」

     お願いします。
     あと、もう少しだけ。

     終
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    renri22

    MEMOウウウルトラC夜十、思いつきで落書きみたいな短文です。
    自分が十郎の○○であることを伝えた夜美のおはなしです。
    本編ネタバレ。
    「十郎、これでは何も出来ないんですけど」
    「何もしなければいい」
     自分が血縁者であることを伝えてから十郎は自分を離さなくなってしまいました。朝からずっと一日自分を膝の上に乗せています。詩を書く時も食事の時も自分を腕に抱いているのです。可愛らしいことこの上ないのですが、少々困りました。
    「十郎、家事があります。今日はどこも掃除をしていませんよ」
    「掃除などしなくても死なない」
    「夕ご飯の支度もしないと」
    「夜は店屋物を取ろう。ちゃんと良い店を選ぶ」
    「……」
     昨夜、ボッコは自分の半身であり、遺伝的に十郎は自分の子どものようなものだと何気なく伝えた時のことを思い返します。この星に残ることを決めるまでは十郎の執着が更に増すのではと黙っていましたが、もうその心配もなくなりました。
    『……そうか』
     意外とあっさりした返事だったことに内心驚いていました。十郎が口下手なことは承知しています。ですが、もっと喜びを伝えてくれるのではと内心期待をしていなかったかと言えば嘘になります。自分は十郎の笑顔が見たかったのでしょう。
     異変は翌日起こりました。
    『夜美、こちらへ』
    『はい』
    『僕の膝の上に』
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